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第十六章 地下に眠る真実

前書き


王立学院の地下で、カエルは自らの過去と「第五の王座」に隠された秘密に触れることになる。

しかし、その瞬間、学院を狙うクリムゾン・カヴナントの魔の手が迫っていた。

カエルの運命は、ここから大きく動き始める。

王立学院の地下深く。


カエルは暗闇の中に立っていた。


目の前には、巨大な古代の扉。


そして、その向こう側には――


自分と同じ顔をした、謎の人物が立っている。


カエルは息をすることさえ忘れていた。


「……僕と同じ顔?」


その人物は何も言わない。


ただ静かにカエルを見つめている。


やがて、ゆっくりと口を開いた。


「長い時間が経った。」


「ようやく……お前がここへ来たか。」


カエルは警戒しながら剣を構えた。


「あなたは誰なんですか?」


男は答えなかった。


代わりに、自分の胸に手を当てる。


すると、黒い光が身体を包み始めた。


カエルの右手に刻まれた紋章も、同時に強く輝く。


「その力……。」


男の表情がわずかに変わった。


「やはり、お前は本物だ。」


「何の話をしているんだ!」


カエルが叫ぶ。


しかし、その瞬間――


背後から激しい衝撃音が響いた。


ドォォォン!!


カエルが振り返る。


そこでは、守護者とルシウスの戦いが続いていた。


「カエル!」


ミラが叫ぶ。


「早くその部屋から出て!」


カエルは迷った。


目の前の謎の人物。


背後で戦う守護者。


そして、第五の玉座に関係する秘密。


すべてが一つに繋がっているように感じた。


謎の人物が静かに手を伸ばす。


「時間がない。」


「この世界は、再び四つの王座を巡る戦争へ向かおうとしている。」


カエルの表情が険しくなる。


「四つの王座……?」


男は頷いた。


「そして第五の王座は、その戦争を終わらせるために存在した。」


「だが、人々は恐れた。」


「だから第五の王座は歴史から消された。」


その言葉を聞いた瞬間――


カエルの頭の中に、突然大量の映像が流れ込んできた。


古代の王たち。


燃える大地。


巨大な魔物。


そして、五つの王座の前に立つ一人の少年。


その少年の顔は――


カエルと同じだった。


「これは……僕の記憶なのか?」


男は静かに答える。


「違う。」


「これは、お前が知るべき過去だ。」


次の瞬間、古代の扉が大きく揺れ始めた。


ゴゴゴゴゴ……。


男の表情が変わる。


「彼らが来た。」


カエルは剣を握り直した。


「誰が?」


男は暗闇の奥を見つめる。


「第五の王座を恐れる者たちだ。」


そして――


扉の向こうから、複数の足音が響き始めた。


一歩。


また一歩。


カエルは静かに構える。


新たな敵が、すぐそこまで迫っていた。


古代の扉の向こうから、ゆっくりと足音が近づいてくる。


カエルは剣を構えた。


ミラもすぐに隣へ並ぶ。


「何人いる?」


「……少なくとも五人。」


ミラは小さく答えた。


やがて暗闇から、黒いローブをまとった五人の戦士が姿を現した。


胸には、赤い紋章が刻まれている。


カエルはその紋章を見て眉をひそめた。


「赤い紋章……。」


ミラの表情が険しくなる。


「クリムゾン・カヴナント。」


先頭に立つ男がゆっくりと笑った。


「その通り。」


「我々は第五の王座を探している。」


カエルは一歩前へ出る。


「だったら、僕がここにいる理由も知っているんだな。」


男は頷いた。


「もちろんだ。」


「お前こそが、我々が千年間探し続けてきた継承者だ。」


カエルの目が細くなる。


「僕をどうするつもりだ?」


「連れて帰る。」


「抵抗するなら……力ずくでな。」


男が手を上げる。


五人の戦士が同時に武器を構えた。


その瞬間――


謎の男がカエルの前へ歩み出る。


「この子には触れるな。」


クリムゾン・カヴナントの男が笑った。


「お前が我々を止めるつもりか?」


「一人で?」


謎の男は静かに答えた。


「一人で十分だ。」


次の瞬間――


ドンッ!!


凄まじい魔力が地下室を覆った。


カエルは思わず目を見開く。


男の身体から放たれた魔力は、これまで感じたことのないほど強大だった。


黒いローブの戦士たちが一斉に後退する。


「この魔力……!」


男は一瞬で姿を消した。


次の瞬間、一人目の戦士が吹き飛ばされる。


ドォン!!


二人目が剣を振る。


しかし、男は簡単にかわした。


そして――


バキッ!!


戦士の武器が砕け散った。


戦いは一瞬だった。


残った三人も次々と倒されていく。


カエルは呆然とその光景を見つめていた。


「……強い。」


ミラも驚きを隠せない。


「こんな力……いったい何者なの?」


最後に残った男は震えながら後退した。


「ありえない……。」


「お前は……まさか……。」


謎の男は静かに振り返る。


「その名を口にする必要はない。」


男は手を伸ばした。


すると、床に巨大な魔法陣が現れる。


「今はまだ、その時ではない。」


カエルは慌てて尋ねる。


「待って!」


「僕の名前を知っているんだろう?」


「僕の過去を知っているんだろう?」


男は一瞬だけ振り返った。


「知りたいのなら……」


「第五の王座へ辿り着け。」


その言葉とともに、男の姿が光の中へ消えていく。


カエルは拳を握りしめた。


「第五の王座……。」


その時――


地下深くから再び大きな振動が起こった。


守護者の声が響く。


「継承者よ。」


「時間が来た。」


カエルは顔を上げる。


「何の時間?」


守護者は静かに答えた。


「お前が、自らの運命を選ぶ時だ。」


黒い結晶が強烈な光を放つ。


そして、カエルの右手に刻まれた紋章が完全に目を覚ました。


黒い結晶から放たれた光が、地下室全体を包み込んだ。


カエルは思わず腕で目を覆う。


「うっ……!」


強烈な魔力が身体の中へ流れ込んでくる。


痛みはない。


しかし、自分の身体の奥に眠っていた何かが、ゆっくりと目を覚ましていくのを感じた。


ドクン……。


心臓が大きく鼓動する。


右手の黒い紋章が、今までとは比べものにならないほど強く輝いた。


守護者は静かにカエルを見つめる。


「恐れる必要はない。」


「その力は、お前を傷つけるために存在するものではない。」


カエルは苦しそうに尋ねる。


「じゃあ……何のために?」


守護者はしばらく沈黙した。


そして、ゆっくりと答える。


「選択するためだ。」


「力を得る者には、必ず二つの道がある。」


「支配するか。」


「守るか。」


カエルは拳を握りしめる。


頭の中に、家族の姿が浮かんだ。


父。


母。


そして、故郷の村。


「僕は……守る。」


その瞬間――


黒い紋章から巨大な光が放たれた。


ドォォォン!!


地下室の壁に無数の古代文字が浮かび上がる。


ミラが驚いた声を上げる。


「文字が……!」


壁に刻まれていた四つの王座の紋章が、一つずつ輝き始める。


そして最後に――


第五の紋章が現れた。


カエルはそれを見つめる。


「これが……第五の王座。」


守護者が頷く。


「だが、まだ完成していない。」


「お前自身が、その王座を完成させなければならない。」


「どうすればいい?」


「王都へ行け。」


守護者はそう告げた。


「そこには、お前の血筋について知る者がいる。」


「そして、お前が持つ力を狙う者たちも集まっている。」


カエルは静かに頷く。


「だったら……行く。」


ミラがカエルを見る。


「怖くないの?」


カエルは少しだけ笑った。


「怖いよ。」


「でも、知らないまま逃げる方がもっと怖い。」


その言葉を聞いた守護者は、初めて微かに笑った。


「それでいい。」


「その意思こそが、継承者に必要なものだ。」


すると、地下室の奥に巨大な魔法陣が浮かび上がった。


「これは王都へ戻るための転移魔法陣だ。」


カエルは魔法陣を見つめる。


しかし、その瞬間――


遠くから大きな爆発音が響いた。


ドォォォン!!


ミラの表情が変わる。


「上で何か起きている!」


守護者も振り返る。


「クリムゾン・カヴナントが学院を襲撃した。」


カエルの目が鋭くなる。


「学院のみんなが危ない。」


彼は迷わず魔法陣へ歩き出した。


「行こう。」


ミラも頷く。


二人が魔法陣の中へ入る。


守護者は最後にカエルへ告げた。


「忘れるな。」


「第五の王座を求める者は、お前だけではない。」


「そしていつか――」


「お前は、四つの王国そのものを選択することになる。」


魔法陣が眩い光を放つ。


カエルは最後に地下室を振り返った。


「必ず戻ってくる。」


次の瞬間――


二人の姿が光の中へ消えた。


静寂が戻った地下室。


守護者は一人、古代の扉を見つめていた。


そして小さく呟く。


「運命の歯車が……動き始めた。」


その頃、王立学院の地上では――


黒い旗が夜空に掲げられていた。


クリムゾン・カヴナントの軍勢が、学院を完全に包囲していた。


そしてその中心には、一人の男が立っている。


「継承者を逃がすな。」


「第五の王座を、必ず我々の手に入れる。」


学院を揺るがす戦いが、今まさに始まろうとしていた。


(第十六章・完)

あとがき


第十六章を最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


今回は、カエルが「第五の王座」に関する大きな秘密へ近づき、物語が新たな段階へ進み始めました。


次の章では、王立学院を襲うクリムゾン・カヴナントとの戦いがさらに激しくなっていきます。


これからもカエルの成長と物語の続きを楽しんでいただければ嬉しいです。

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