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第十二章 旅立ちの決意

第十二話をご覧いただき、ありがとうございます。


カエルの運命は少しずつ動き始めています。

新たな力との出会い、そして避けられない旅立ちの時が近づいています。


今回も最後まで楽しんでいただければ幸いです。

朝日がレイヴン・ホロウの村を優しく照らしていた。

昨夜の出来事が嘘のように、村は静けさを取り戻していた。

しかし、その静けさとは裏腹に、ロイドの表情は険しかった。

彼は家の前で一人、青い結晶を見つめている。

王都から届けられた「蒼き導きの結晶」。

その光は昨夜よりも強く輝いていた。

「やはり……時間は残されていない。」

ロイドは小さく呟いた。

その頃、カエルは村の広場で木剣の素振りを続けていた。

一回。

二回。

三回。

額から汗が流れ落ちる。

誰に言われるでもなく、何百回も剣を振り続ける。

その姿を見た村人は感心した。

「まだ八歳なのに、本当によく努力する子だ。」

「ロイドの息子は将来きっと立派な剣士になる。」

しかしロイドだけは笑わなかった。

(努力だけでは守れない世界がある……。)

その時だった。

カエルの胸元のペンダントが突然青白く光り始める。

「えっ……?」

同時に、家の中に置かれていた蒼き導きの結晶も共鳴するように輝き出した。

ブゥゥン……

低い振動が村全体に響く。

村人たちは驚いて空を見上げた。

すると北の空に、一筋の青い光が現れる。

その光はまるで一本の道のように、遥か彼方の山脈へと伸びていた。

エレナは不安そうに呟く。

「あれは……何?」

ロイドは静かに答えた。

「導きだ。」

「運命が、カエルを呼んでいる。」

カエルは光る空を見つめながら、小さく拳を握った。

胸の奥が熱くなる。

理由は分からない。

それでも心のどこかで感じていた。

──自分は、いつまでもこの村にはいられない。

その瞬間、遠くの山々から巨大な咆哮が響き渡った。

グオオオオオオオッ!!

大地がわずかに震える。

鳥たちは一斉に空へ飛び立った。

ロイドはすぐに剣を握る。

「魔物か……?」

しかし、その咆哮には普通の魔物とは違う圧倒的な威圧感があった。

村人たちの顔から血の気が引いていく。

そして森の奥では、一対の黄金色の瞳が静かに村を見つめていた――。

黄金色の瞳は、森の奥で静かに光り続けていた。

次の瞬間――

巨大な影が木々の間から姿を現す。

それは体長五メートルを超える巨大な魔狼だった。

銀色の毛並み。

鋭い牙。

そして全身から溢れ出す圧倒的な魔力。

村人たちは恐怖で声を失う。

「ま、魔狼だ……!」

「しかも成体だ!」

子どもたちは泣きながら家の中へ逃げ込み、大人たちは武器を手に取る。

ロイドは剣を抜き、魔狼の前へ立った。

「誰も近づくな!」

その低い声だけで、村人たちは動きを止めた。

カエルも木剣を握りしめる。

「父さん、僕も戦う!」

ロイドは首を横に振った。

「まだ駄目だ。」

「これはお前が戦う相手ではない。」

しかし魔狼はロイドだけを見ていなかった。

その黄金の瞳は一直線にカエルを見つめていた。

まるで何かを確かめるように。

その瞬間、カエルの胸元にあるペンダントが再び青く輝く。

ブゥン……

魔狼の体からも淡い銀色の光が溢れ始めた。

「共鳴している……?」

ロイドは驚きを隠せなかった。

魔狼はゆっくりとカエルへ歩み寄る。

村人たちは悲鳴を上げた。

「逃げろ!」

「食われるぞ!」

だがカエルは、不思議と恐怖を感じなかった。

魔狼の瞳には敵意がなかったからだ。

ゆっくりと一歩前へ出る。

「カエル!」

エレナが叫ぶ。

しかしカエルは静かに右手を伸ばした。

魔狼もゆっくりと頭を下げる。

そして――

カエルの手が、その額に触れた。

眩い光が二人を包み込む。

村中が白い光に覆われ、誰も目を開けていられなかった。

数秒後。

光が消える。

そこには、静かに跪く魔狼の姿があった。

まるで王に忠誠を誓う騎士のように。

ロイドは息を呑む。

「まさか……。」

「伝説は本当だったのか……。」

カエルは困惑した表情で魔狼を見る。

「どうして……僕に従うの?」

その問いに答える者はいなかった。

だが森のさらに奥では、一人の黒いローブの人物が静かにその光景を見つめていた。

「ついに目覚めたか……。」

その人物は小さく笑う。

「これで運命の歯車は、もう止められない。」

風が吹き抜け、黒いローブが揺れる。

そして、その姿は闇の中へ静かに消えていった。

静寂が村を包み込む。

巨大な魔狼は、なおもカエルの前にひざまずいていた。

誰一人として言葉を発することができない。

ロイドはゆっくりと剣を鞘へ戻した。

「……敵ではないようだ。」

その言葉を聞き、村人たちはようやく胸をなで下ろした。

しかし、不安が消えたわけではない。

村長が震える声で尋ねる。

「ロイド……これは一体、どういうことなだ?」

ロイドはしばらく沈黙した後、静かに答えた。

「私にも分からない。」

「だが、この子が普通の人間ではないことだけは確かだ。」

カエルは魔狼の頭を優しく撫でた。

魔狼は目を細め、低く喉を鳴らす。

まるで長年主人を待ち続けていた忠実な獣のようだった。

「君にも名前があるの?」

カエルが微笑みながら尋ねる。

すると魔狼は空を見上げ、小さく遠吠えをした。

「ウォォォーン!」

その声は山々へ響き渡る。

ロイドはその姿を見て、小さく呟いた。

「……フェンリル。」

エレナが驚いて振り向く。

「フェンリル?」

「ああ。」

「古い伝承に登場する神獣の名だ。」

「もし本当にそうなら、この世界に存在していること自体が奇跡だ。」

その時、フェンリルはゆっくりと立ち上がり、森の奥へ向かって歩き始めた。

しかし数歩進んだところで立ち止まり、振り返る。

そしてカエルを見つめた。

まるで――

「ついて来い。」

そう伝えているかのようだった。

カエルは思わず一歩踏み出す。

だがロイドが肩に手を置く。

「今はまだ行くな。」

「お前には、まず守るべきものがある。」

カエルは静かに頷いた。

「うん。」

フェンリルはその答えを理解したかのように、静かに森の奥へ消えていった。

夕日が山の向こうへ沈み始める。

ロイドは空を見上げながら、小さく息をついた。

「……もう時間がない。」

「近いうちに、この村を出ることになる。」

その言葉に、エレナは悲しそうに目を伏せた。

カエルもまた、夕焼けに染まる故郷を見つめる。

この美しい村で過ごせる日々は、もう長くはない。

彼はまだ知らない。

王都への旅路には、想像を超える試練と仲間、そして世界の運命を変える真実が待ち受けていることを――。

(第十二章・完)

第十二話を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


神獣フェンリルとの出会いにより、カエルの特別な運命がさらに明らかになりました。

そして、故郷を離れる日も近づいています。


次回から物語は新たな展開へ進みますので、ぜひお楽しみに。


ブックマークやご感想、評価をいただけると、とても励みになります。

今後とも『Shadow of the Four Thrones』をよろしくお願いいたします。

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