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第十一章 別れの朝

第十一話をご覧いただき、ありがとうございます。


少しずつカエルの運命が動き始めています。

新たな出会いと隠された真実が、これからの旅を大きく変えていくでしょう。


最後まで楽しんでいただければ幸いです。

夜明けとともに、レイヴン・ホロウには静かな風が吹いていた。


昨夜の激しい戦いの跡は、村のあちこちに残っている。


倒れた木々。


壊れた柵。


地面に刻まれた深い剣の跡。


村人たちは朝早くから復旧作業を始めていた。


カエルも小さな木片を運びながら手伝っている。


「これでいい?」


老人は優しく微笑んだ。


「ああ、ありがとう。」


「助かるよ。」


カエルは少しだけ笑顔を見せた。


しかし、その心は重かった。


昨夜見た光景が何度も頭に浮かぶ。


父ロイドの戦い。


白い鹿。


そして、あの不思議な老人。


(あれは夢だったのかな……。)


胸元のペンダントに手を当てる。


不思議なことに、昨夜まで輝いていた光は完全に消えていた。


まるで何事もなかったかのように。


その時、ロイドがゆっくりと近づいてきた。


「カエル。」


「少し話がある。」


その真剣な表情を見て、カエルは静かに頷いた。


二人は村の外れにある小さな丘へ向かう。


そこからは村全体が見渡せた。


しばらく沈黙が続く。


やがてロイドが口を開いた。


「昨日、お前は何を見た?」


突然の質問だった。


カエルは少し迷ったが、隠さずに答えた。


「白い鹿を見た。」


「それから……白い服を着たおじいさん。」


ロイドの表情がわずかに変わる。


「その老人は何と言っていた?」


「『運命の時が近づいている』って……。」


「それと、『自分の心を見失うな』って。」


ロイドは静かに空を見上げた。


「……やはり始まったか。」


カエルは父を見つめる。


「お父さん。」


「僕に何が起きているの?」


ロイドはすぐには答えなかった。


握った拳がわずかに震えている。


「まだ話せない。」


「だが、約束する。」


「すべてを話す日が必ず来る。」


その言葉を聞き、カエルは少しだけ寂しそうに笑った。


「うん。」


「信じるよ。」


その瞬間――


遠くの森から、一羽の白い鳥が空へ飛び立った。


それは真っ直ぐ北の空へ向かって飛び去っていく。


ロイドはその姿を見つめながら、小さく呟いた。


「もう時間がない……。」

ロイドとの話を終えたカエルは、ゆっくりと家へ戻った。

しかし、その心には父の言葉が強く残っていた。

「もう時間がない……。」

その意味を考えても答えは見つからない。

家へ入ると、エレナが昼食の準備をしていた。

焼きたてのパンと温かいスープ。

いつもと変わらない光景だった。

「おかえり。」

エレナは優しく微笑む。

「お父さんと何を話していたの?」

カエルは少し考えてから答えた。

「秘密だって言われた。」

エレナの笑顔が一瞬だけ曇る。

だが、すぐにいつもの優しい表情へ戻った。

「そう。」

「いつか全部分かる日が来るわ。」

食事を終えると、ロイドは倉庫から一本の木剣を持ってきた。

それは古びていたが、大切に手入れされていることが分かる。

「カエル。」

「今日から本格的に剣を教える。」

カエルの目が輝いた。

「本当に?」

ロイドは静かに頷く。

「昨日の出来事で分かった。」

「もう、お前を普通の子供として守り続けることはできない。」

「だから、自分の身は自分で守れるようになれ。」

カエルは力強く返事をした。

「はい!」

二人は村の広場へ向かった。

村人たちも興味深そうに集まってくる。

ロイドは木剣を構えた。

「剣で一番大切なのは力ではない。」

「相手を見ること。」

「そして、自分の心を乱さないことだ。」

そう言うと、ゆっくりと基本の構えを見せる。

「まずは真似をしてみろ。」

カエルはぎこちなく木剣を構えた。

足の位置も腕の角度も少しずつ違う。

ロイドは何度も丁寧に直していく。

「焦る必要はない。」

「基本を身につける者だけが、本当に強くなれる。」

何度も繰り返すうちに、カエルの動きは少しずつ安定していった。

それを見ていた村人たちは驚く。

「覚えるのが早いな。」

「あの歳とは思えない。」

ロイドも内心では驚いていた。

(やはり、この子の才能は想像以上だ……。)

その時だった。

村の入口から、一台の馬車がゆっくりと近づいてきた。

豪華な紋章が刻まれた黒い馬車。

村人たちはざわめき始める。

「あれは……。」

「王都の紋章じゃないか?」

ロイドの表情が一変する。

彼は無意識にカエルの前へ立った。

馬車が止まる。

扉が静かに開き、一人の長い青い髪を持つ女性が姿を現した。

その美しい瞳は、真っ直ぐカエルだけを見つめていた。

彼女は静かに口を開く。

「ようやく見つけました。」

「運命の子――カエル・ドレイヴン。」

村中が静まり返った。

ロイドはゆっくりと剣の柄に手を添える。

新たな運命が、再び動き始めようとしていた。


青い髪の女性が馬車からゆっくりと降り立つ。


その一歩ごとに、周囲の空気が張り詰めていく。


村人たちは息を呑み、誰一人として声を上げることができなかった。


ロイドは静かにカエルの前へ立つ。


「そこで止まれ。」


女性は足を止め、穏やかな笑みを浮かべた。


「安心してください。」


「私は敵ではありません。」


ロイドは剣から手を離さない。


「その言葉だけでは信用できない。」


女性は小さく頷くと、胸元から一枚の銀色の紋章を取り出した。


そこには、翼を広げた白い獅子が刻まれている。


村長はその紋章を見るなり驚きの声を上げた。


「まさか……王国魔導師団の紋章!」


村人たちがざわめく。


「王都の魔導師だって?」


「どうしてこんな村に……?」


女性は静かに頭を下げた。


「私の名は、セレナ・アルフォード。」


「王都直属魔導師団・第三部隊隊長です。」


カエルはその名前を小さく繰り返した。


「セレナさん……。」


セレナは優しい目でカエルを見る。


「あなたに会うために来ました。」


ロイドは低い声で尋ねる。


「目的は何だ。」


セレナは少しだけ表情を曇らせた。


「王都で、一つの予言が下されました。」


「『運命の子が目覚め始めた』と。」


その言葉に、ロイドの瞳が鋭く光る。


「やはり……。」


セレナは続けた。


「予言を知ったのは私たちだけではありません。」


「闇の組織も、すでに動き始めています。」


カエルは思わず息を呑む。


「黒い服の人たち……。」


セレナは静かに頷いた。


「あの者たちは、これから何度でもあなたを狙うでしょう。」


エレナは不安そうにカエルの肩を抱く。


「そんな……。」


「この子はまだ子どもなのに。」


セレナは優しく答えた。


「だからこそ、守らなければならないのです。」


その時、ロイドが一歩前へ出た。


「王都へ連れて行くつもりか。」


セレナは首を横に振る。


「今ではありません。」


「まだ、その時ではありません。」


「ですが、近いうちに必ず迎えが来ます。」


そう言うと、彼女は小さな木箱を取り出した。


「これは王都からの預かり物です。」


ロイドが箱を受け取る。


箱を開けると、中には深い青色に輝く小さな宝石が入っていた。


その宝石を見た瞬間、カエルの胸元のペンダントが淡く光り始める。


二つの光は互いに共鳴するように輝きを増していく。


セレナは静かに微笑んだ。


「やはり間違いありません。」


「その宝石は、あなたに反応しています。」


カエルは不思議そうに宝石を見つめた。


「これは何なの?」


セレナはゆっくりと答える。


「それは『蒼き導きの結晶』。」


「あなたの旅が始まる時、本当の力を示してくれるでしょう。」


そう言い残すと、セレナは馬車へ戻った。


「また会いましょう、カエル。」


「その日まで、どうか無事で。」


馬車はゆっくりと村を後にする。


夕日に照らされながら遠ざかるその姿を、カエルはいつまでも見つめ続けていた。


彼はまだ知らない。


この小さな出会いが――


やがて世界の運命を大きく動かす第一歩になることを。


(第十一章・完)

第十一話を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


王都からの使者との出会いによって、カエルの未来は大きく動き始めました。

次回はさらに物語が進み、新たな試練と冒険が待っています。


ブックマークやご感想、評価をいただけると、とても励みになります。

これからも応援よろしくお願いいたします。

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