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第一部   第三章    Wa

 古の悪魔(ビル)を前にして、少年達は窮地に立たされる。

 「ソイソー、立つぞ。」

 「えっ? ……うん。」


 絨毯はすでに消えていた。二人はすっくと立ち上がった。そして、骸骨顔の悪魔(ビル)がその(こうべ)を上に向けるのを見ると、また背後から何かの音が聞こえてきた。だが、少年達はその音に反応こそすれ、悪魔(ビル)から視線を外すことはしなかった。近づいてくる音が一瞬小さくなったかと思うと、すぐにまた大きくなり始めた。ヒュ……、ヒュン……ヒュン……、と軽やかに空気を切り裂く音が視界の上からやって来て、両者の前に二本の刀が姿を見せた。二刀は各所に突き刺さり、背の高い方がソイソーの、低い方がテリーの下であった。


 「何故俺に剣を使わせない。」刀に手を伸ばそうとしているソイソーの横で、テリーは抑えた口調でそう言った。


 「それを取れ。」 「聞こえないのか!」


 本人はまだ抑えているつもりであったが、僅かに唾が飛び出るのを、テリーは感じた。それらはいずれも刃の横ぎりぎりの所を通過していった。ソイソーが手にしようとしている刀は間違いなく本人の刀だった。柄に「ソイソー」が左右反転して彫られていた。そして、もう一刀の、刀身が切っ先分だけ短い刀は、決して地面に深く突き刺さった訳ではなかった。その部分が砕け落ちていたテリーの刀であった。声に今まで耐えてきた力が込められてる一方で、傷を負った少年よりも幼いその身は静かにその場に立ち尽くしていた。


 この場でもっとも冷静になっている奴がおぞましい色の口を開いた。

 「私からのせめてもの情けのつもりであったが、それを受けるつもりはないのだな?」


 「何が情けだ。」


 「その刃だ。」 「意味分かんねえよ!」


 飛び出す唾は大きくなっていくばかりだったが、やはり、刃に触れることはなかった。


 「お前の刃は一度、私の刃に負けたのだ。おっと、それ以上は喋るな。『俺はこの刀でお前の一撃を受け返し、それだけではなく、炎による攻撃を食らわせてやったんだぞ。』とでも言いたいのだろうが、あの刃が語る事実はそれとは違うものだろう。」


 「ち……」違う、に加えて幾つか言いたい言葉があったのだが、テリーの口を防ぐように古の悪魔(ビル)が、浮遊状態を静かに解きながら続けて口を動かした。


 「お前が同じ刃でその少年を助けた時に、私が今からわざわざ言わなければならない事実がそこにはっきりと示されていたはずだ。私の力が回復し強大化した、というものだ。そして、その結果が今のその姿ではないか。違うのか? まったく、お前はあれを同じ目にあわせるつもりらしいな。」古の悪魔(ビル)の言葉が止もうかという時に、この日何度も聞く羽目になった不協和音が、一瞬、少年達の耳に入ってきた。そして、古の悪魔(ビル)の前に小さな光が現れてそこから鏡が現れた。巨体の胴部分の縦横半分くらいの大きさで、以外に高価そうな鏡であった。テリーから見ると少し斜めを向いていたが、やや遠くにあるその鏡を、彼は目を細めて見た。


 「……、あんな所に!」ソイソーは目を細めずに見ていたが、鏡は少年達の右斜め後ろを映していた。それは、一匹の小悪魔(しょうビル)がテリーの剣を、刃を下にして両手で大事そうに抱えている、というものだった。テリーは、お前は俺の太刀持ちでも何でもないだろう、そんな汚れた手で人の剣に触れるんじゃねえ、という怒りを覚えた。加えて、その剣は一度あの時、あれこそ悪魔(ビル)の力が掛けられたものに違いない、黒々と濁った水溜りに落ちて汚されているので、今のテリーの心中は凄まじい色をなしたものが支配しかけていた。


 「余計なことでお前に変な怒りをもって欲しくはなかったが、」突然、鏡が一つの煙の中へと消え去っていき、悪魔(ビル)が口を開いた。その時、刀を持ったばかりのソイソーの手は小刻みに激しく震えた。「目の前の刀に手を掛ける意志がないのなら、お前を剣士とは認めん。私の刃に触れることなくこいつらの餌になるがいい。」武器を持った悪魔(ビル)の右手が手前に引かれていって、そこで指の一つが宙に何かを書くような動きをし始めた。其奴の足がまた僅かに地から離れていった。それと共に、短い言葉と邪声が肉の見えない口から漏れるように出て行くと、それらは瞬時に、小さな霧の塊と化して一気に指の向く先へと迫っていった。目先の怒りの為に視界にかげりがあったテリーはこの急襲を防ぐ術がなく、ただ目を瞑るだけであった。そして、少しして目を開けたその時の変化は、テリーの予想したものではなかった。


 「おい、何してんだ!」

これからも、どうぞよろしくお願い致します。

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