表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/75

第一部   第三章    Chi

 解き放たれた力、それが作り出したものは、ただの人形であった。そして、下部や多くの信者がゆっくりと動き始め、人形は闇に踊る。

 少年達は邪声を伴った魔法を掛けられたのだった。下の洞窟で一度は耐えることのできたソイソーも、目の前の大きな悪魔(ビル)だけに集中していたので防ぐ術がなかった。自分が魔法を放ったばかりのテリーは、受けるのはこれが初めてであった。魔法を使える者は、少なからず、使えない者よりも魔法に対する耐性を持っているものなのだが、今のテリーに魔法をどうこうする力はほとんど残されていなかった。


 ふと、広間に不気味な明かりが現れた。それは、少年達からも二匹の悪魔(ビル)からも離れた所で、一転してまた不気味な沈黙を守り始めた骸骨顔の悪魔(ビル)に近い場所にある、壁に掛けられた四つの魔銀の内の一つ、それが放ち始めたものだった。紫色の霞んだ光は徐々に大きくなっていき、そこから黒くて非常に小さな石のようなものが見え出すと、その塊は泥団子が砕けたような音を立ててあっという間に黒い粉塵を発生させた。この現象が一つの魔銀だけでなく、二つ目、三つ目でも起こり、そして、四つ目の近くでも黒い粉塵が舞い上がった。やがて、それらの粉塵が薄れてきて、代わりに四匹の悪魔(ビル)がそこに現れた。更に、光はまだ消えず、何処からともなく新たな悪魔(ビル)がその姿を見せ始めた。いずれもその光に紛れて、密かに、地面や壁から、路の奥から、多くの悪魔(ビル)が現れた。広間の四分の一ほどが埋め尽くされた形だった。


 ソイソー達の目にした悪魔は、地図であるパペルが「邪を封じた魔」と記した洞窟の一番大きな広間の左側にある通路の近くに居た。通路から現れた悪魔(ビル)は左の通路がほとんどで、下の、外に繋がる路からは一匹も出てこなかった。少年達は中央よりやや右下に居た。骸骨顔の悪魔(ビル)は二人の上の方に居て、その辺りだけ粉塵が残っていて、ポコ…ボコ…、と泡が立つような音がしていた。


 ソイソーとテリーは今、暗闇の中にあった。二人の居る場所はどちらも周囲には薄い霧が所々に穴が開いてる壁のように存在していて、足元と頭上の一面はただ黒かった。しかし、二人にはそのようなことが分かっていなかった。それぞれは浮いている状態なのかもしれないが、そうではないことだけを唯一、両者は認識していた。ソイソーの中だけには、小悪魔(しょうビル)たちの作った隙を利用して、そよ風のような意識が入り込んでいたが、受け入れる力が出せないのではどうしようもなかった。そして、暗闇に置かれたソイソーは、一つの連続した苦しみを見せられていた。足元には、体の一部を赤く滲ませてうつ伏せで倒れているショー=サナエが居て、その先には、二本の刃が折られていて、今にも黒い刃が体に届こうとしている一人の剣士の後ろ姿がある、といった映像が幾度も頭の中を走っていた。テリーもまた、似て非なる一つの暗闇にあって、一つの苦しみを味わっていた。体中が今まで見たことのない量の血に塗りたくられていて、耳元ではソイソーの悲鳴が何度も響き渡っている、というものだった。暗闇の外の少年達は立ったままではあったが、足に微かな震えが見え始めていた。


 「ミョウフクヨワイヤー」という小さな、だが何とも後味の悪い声が、二人の耳に聞こえてきた。テリーは首が下がり始め、ソイソーは刀を持つ手が緩み始めた。しかし、その直後、


 「二人の少年達よ、目を覚ませ!」


 広間中を力強い魔法の炎が駆け巡った。ソイソーはその炎の熱さを逸早く感じ取って暗闇を脱することができた。徐に頭を上げると、すぐに一旦、しっかりとした茶色の地面を踏んでいる感覚を確認して、再び目の前の有様を凝視した。テリーもソイソーの後に、同じ熱と違和感を感じ取ることができた。しかし、テリーは最初、この炎が自分達を襲う者のかと思って暗闇の中で意識を取り戻しただけだったが、すぐに、この未知の声から温かな光が放たれているのを感じ取ることができて、元の世界に帰って来ることができた。


 「…ありがとう…。」ソイソーは俯き加減になって小声で言った。


 因みに、共通して持った違和感の正体は物体の消失だった。広間中央の魔銀だけが消え去っていたのだった。だが、二人がそのことに気付いたのはだいぶ後のことだった。


 これからも、どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ