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第一部   第一章    Ri

 小学校の時、一クラス平均三十五、六人は居た気がします。だから、自分で設定しておいておかしな話ですが、二十一人って少ないなあ、と感じてしまいます。

さて、本文は授業の様子からです。その本文にも書かれていることですが、ここの子供達は七、八歳の集まりです。日本では小学二年生に当たる彼・彼女達は、中々の高度な授業を受けているところです。

 「……なのだが、このキィーバという地域は、海抜三千メートルの高地にありながら北の山を降りた先にある首都・『セントシールド』の温暖気候のように、四季それぞれのめりはりある気候がある為、世界的に見て非常に独特の風土や文化が生まれるのである。」


 カーン…カーン…カーン…。


 「よし、今日はここまでだ。次回は、今のところをもう少し突っ込んでやるからなあ。」


 ガタガタ…ガチャガチャ…、椅子を動かす音や筆記用具を片付ける音が室内に響き渡る。同時に、大小色々な声も聞こえだした。

 「今日はお前家で遊ぼうぜ。」 「ミーナ、一緒に帰ろー。」

 「帰ったらいつものところに集合な。」どの時代でもどこの国でも、一日の授業が終わった時の子供たちの声は変わらないのである。フォーダースで小学院の三年生は七~八歳の集まりであるから、これからの時間を遊びに費やす子供達は多いのであった。もちろん、それ以外の者もいる。


 「おーい、何でコソコソ泥棒みたいな真似してんだよ。」 「バカッ、大きな声出すなよ。」


 「無駄だぞ、ソイソー。」リムートはそう言いながら、右腕を上げてその手首を廻していた。少年はわざとらしく肩をすくめてから、眼を少しだけ大きく開けて先生のほうを向いた。すると、ソイソーは、ピンク色の小さい何かが宙を走り抜けて自分の方に向かってくるのを見た。それは服に当たった。ソイソーは服に付く前にそれがチョークだと分かった。お腹の辺りに音もなく付いたそれはほんの小さなものであった。再び、ソイソーは前の方を向いた。黒板の文字を消したリムートが少年のほうに近づいてきていた。それと同時に、ソイソーの所に来ていた二人の友達は後退りしていった。


 「ソイソー、…頑張れよ。」 「また…明日な。」


 友達は飛ぶようにして帰っていった。


 「ハァー…。」 「場所、変えるか?」


 教室にはまだ生徒が何人か残っていた。特に仲の良い友達は今の二人を含めてもう教室を後にしていた。残っているのは、もちろん、みんな顔は分かっているが、集団で遊ぶ時 -鬼ごっこ等- くらいにしか話さない人達の内の二人と、三人の女子であった -生徒の数は計二十一人- 。後者の視線がちょくちょくソイソーに向けられていた。


 「職員室に行くか。」 「…もっとやりづらいですよ。」


 「冗談だよ。一階の小会議室が空いてるから、そこにするか?」


 「…はい…。」繰り返して言おうと思ったが少年は自重した。鼻から軽く息が抜けていった。


 リムートは先にノートや教科書等をまとめて教室を出て行った。それを途中まで見てから、ソイソーもまず、机の上の物から片付けていった。そして、次に、中の物を黒の肩掛け鞄に入れていって、片付け終わると、その鞄を帯ごと抱えてそのまま扉の方へと向かっていった。


 「頑張ってぇ、ソイソーくーん。」廊下に足を踏み出そうとした時に、応援四分の一、冷やかし残り全部といった感じの女子二人の声が聞こえてきた。立ち上がって手まで振っていた。もう一人の子は座ったまま、ほんの少しだけ口を開けて、膝に置いていた手の片方 -左- を僅かに浮かせた状態で、彼の方を見ているだけだった。


 少年は気付いていなかった。そのチョークは金属に張り付いた磁石宜しく、先に命中した場所から落ちもせずにくっ付いたままになっていた。そして、少年にすれ違う誰もがその事を少しも気にすることはなかった。ソイソーは空いてる左手で頭を少し掻いた。階段はすぐ近くだった。踊り場でくるりと半回転して残り半分の階段を下りてから、廊下を真っ直ぐに進んで左側にある最初の部屋が小会議室だった。その途中、右側には昇降口があった。昇降口の前に来ると、少年は体の向きを変えず、軽く覗くように首を伸ばして外を見た。そこからは校庭のほんの端しか見えないのだが、体育系の部活をやっている感じの男の子数人とただ遊んでいるだけの一年生くらいの生徒何人かが居た。ソイソーはそこで少しだけ立ちすくんでいた。ソイソーの体の向きには今、誰も居なかった。少年はほんの一瞬だけ、どうしようか、と考えた。しかし、ソイソーはすぐに歩き出した。歩き出した時は、ほとんど何も考えていない状態であった。こういう時のソイソーは、少年独自の鋭い直感が働いたことによる動きというのが定番なのであったが、今は、ただ、自分の足が動いている、という感覚だけしかもてなかった。静かな廊下をゆっくりと進んでいって、ソイソーは自分が扉に手を掛けているのを見た。


 ガラガラガラ…。「よーく分かってるじゃないか、ソイソー。」先生の声は何となくわざとらしく聞こえた。


 「いくら僕が魔法音痴だとしても、こんな不思議なチョークを堂々と付けられたら、先生が何を言いたいのかは分かりますよ。」


 「便利だろ、魔法っていうのは。今回は、少し余計に使っちゃったんだよな。何たって、その目印、普通ならその辺の物でいいんだもん。」そう言われて、ソイソーは自分の服に付いているそのチョークを見た。それは間違いなくピンク色のチョークと見て取れた。かなり小さいものであったが、小石とかを細工したものには見えなかった。少年はゆっくりとそれを触ろうとした。


 「・・・!?」ソイソーの右手はしばらく同じ動きを取った。少年より二十七上の男はそれを、にやにやしながら見ていた。


 「あーっ…。」 「遅い、やっぱり魔法音痴だな。」


 一分間格闘してソイソーはそのチョークに触ることができなかった。チョークに触ることができないような魔法が掛けられていた訳ではなかった。指先をそこに持っていくことはできた。しかし、感触はなかった。


 「目印がただの物だと、相手が領域(テリトリー)の外に出ちゃった所で印が効力を失うのを察知できるから、そこに『瞬間移動』みたいなことをして追っかけられるんだけど、魔法じゃそうはいかないんだ。何でだと思う?」少年は戸惑いながら首を振った。手も動かそうかと思ったが、それは止めにしたようだった。


 「答えはね、魔法の目印だと領域(テリトリー)外に出た瞬間にそれが消滅しちゃうからだよ。消滅した後じゃ移動できないからね。別に移動の機会を常に計算しておく必要が出てくるから、そんなことは普通しないんだよ。まっ、でもね…。残念でした。ソイソー君。」


 その後、小会議室では一対一での説教を含めた補習が、一時間と少し行われた。ソイソーは外を見る度に、夕焼けがあかくなっていくー、という思いをしていた。そして、その余所見をしている一・二分毎に、少年はお叱りを受けていたのであった。



 次回は、「彼」の登場です。ソイソーの、とかいう意味ではないですよ、もちろん。

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