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素直になりたい白上さん  作者: 星乃ヨナ


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8/22

第八話 定期テスト

あれから何日か経った。


土曜日に木下くんと一緒に勉強してから。


学校でも少しだけ。


木下くんと話すことが増えた。


「白上さん」


「……?」


「これ、どうやるんだっけ?」


「……それは」


授業の休み時間。


木下くんがノートを持って、私のところへ来る。


「ここは、この公式を使えばいいよ」


「ああ」


木下くんがノートを見る。


「土曜日にやったやつだ」


「……うん」


「なるほど」


木下くんは頷く。


「ありがとう!」


「……どういたしまして」


前よりも。


こういう会話に慣れてきた気がする。


最初の頃は。


木下くんに話しかけられるだけで。


何を言えばいいのか分からなくなっていた。


でも、今は。


少しだけ、普通に話せる。


「…………」


それが、少し嬉しかった。


* * *


そして、テスト当日。


「…………」


朝から。


教室の空気がいつもと違う。


みんな、少し静かだった。


「今日テストだよなぁ、萎える……」


「やばい、全然覚えてない」


そんな声が聞こえてくる。


私は自分の机で。


最後の確認をしていた。


国語、数学、英語、理科、社会の5教科。


もう一度だけ見ておく。


「…………」


大丈夫。


いつも通りやればいい。


そう思っていると。


「白上さん」


「……?」


木下くんが話しかけてきた。


「今日の数学のテストさ」


「……うん」


「この前教えてもらったところ、出るかな」


「……出ると思うよ」


「ほんと?」


「……たぶん」


「じゃあ、そこは絶対取らないとな」


木下くんが笑う。


「……うん」


「俺、赤点だけは避けたいから」


「たしか、ゲーム没収されるんだよね」


「そうなんだよ」


木下くんが苦笑する。


「だから頑張らないと」


「……頑張ったから大丈夫だよ」


「うん」


木下くんが自分の席に戻っていく。


「…………」


私はその背中を見る。


ちゃんと勉強してくれていた。


土曜日に。


一緒に勉強したこと。


無駄じゃなかったんだ。


そう思うと。


少しだけ、嬉しくなった。


* * *


チャイムが鳴る。


そしてテストが始まる。


* * *


チャイムが鳴り、テストが終わった。


「…………疲れた」


教室のあちこちから声が聞こえる。


私は鉛筆を置いて。


小さく息を吐いた。


「白上さん」


「……?」


木下くんがこっちを見る。


「終わったね」


「……うん」


「数学さ」


「……うん」


「白上さんに教えてもらったところ、出たよ」


「おかげさまで自信ありあり!」


「……ほんと?」


「うん!」


木下くんが笑う。


「本当にありがとね」


「…………」


なんだか。


胸の奥が。


少しだけ温かくなった。


「……そう、よかったじゃん」


「うん」


それだけ。


それだけなのに。


嬉しかった。


* * *


放課後。


テストが終わったから。


教室にはいつもより少しだけ明るい空気が流れていた。


「定期テスト終わったぁ……」


木下くんが机に突っ伏す。


「…………」


私は少しだけ木下くんを見る。


「疲れた……」


「……木下くん、お疲れ様」


「ありがとう、白上さん」


木下くんが顔を上げる。


そして。


「白上さん」


「……?」


「今日さ、一緒に帰らない?」


「…………」


私は少し驚く。


「……別にいいよ」


「ほんと?」


「……うん」


「じゃあ、帰ろう」


「……うん」


二人で教室を出る。


* * *


学校を出て。


いつもの道を歩く。


「…………」


テストが終わったからか。


木下くんは少しだけ機嫌がよさそうだった。


「白上さん」


「……?」


「五教科の中で、どれが一番自信ある?」


「……自信?」


「うん」


「俺は……数学かな」


「……数学?」


「うん」


「……どうして?」


「この前教えてもらったし」


「…………」


「それに、今日白上さんのおかげでちゃんと解けたから」


「……そっか」


「だから数学は、けっこう自信ある!」


木下くんが笑う。


「白上さんは?」


「……私?」


「うん」


私は少し考える。


「…………」


どれだろう。


「……全部」


「え?」


「……全部、自信あるかな、苦手とかないし」


「…………」


木下くんが少し驚いた顔をする。


「やっぱり白上さんってすごいな」


「……普通だよ」


「それは普通じゃないって」


そう褒められて、少し照れる。


「……別に、勉強くらいしかすることないし」


そうして話しながらしばらく歩く。


いつもの帰り道。


「じゃあ、俺こっちだから」


木下くんが足を止める。


「……うん」


「また明日ね、白上さん」


「……また明日」


木下くんが手を振る。


私も小さく手を振る。


そして。


いつも通り。


別々の道へ歩いていく。


「…………」


テストが終わった。


少しだけ疲れたけど。


「…………」


今日はなんだか、悪くない一日だった。

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