↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
素直になりたい白上さん  作者: 星乃ヨナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/22

第六話 約束

次の日の朝。


私は、いつも通り学校へ向かっていた。


昨日の帰り道のことを思い出す。


木下くんと一緒に歩いて。


ジュースを飲んで。


いろんな話をして。


最後に。


『何かあったら、いつでも頼ってね』


そう言ってくれた。


「…………」


思い出すと、胸の奥が少しだけ温かくなる。


友達。


木下くんは、私のことを友達だと思ってくれている。


「…………」


そう考えると。


なんだか、少し嬉しい。


……でも。


「…………別に」


小さく呟く。


別に。


ただ友達になっただけ。


それだけ。


だから、嬉しいとか。


楽しみとか。


そういうのじゃない。


……たぶん。


* * *


教室に入る。


まだ来ている人は少なかった。


私はいつものように席について、鞄を机の横に掛ける。


そして。


窓の外を見る。


「おはよう、白上さん」


「…………!」


突然、隣から声がした。


振り向くと、木下くんが立っていた。


「……おはよう」


「今日早いね」


「……いつもこれくらい」


「そっか」


木下くんは自分の席に座った。


鞄を置いて。


少ししてから。


「あ、そうだ」


「……?」


「昨日の宿題やった?」


「……うん」


「やっぱり?」


木下くんは少し困ったような顔をする。


「俺、数学の最後の問題が分かんなくてさ」


「……どれ?」


「これ」


木下くんが教科書を開いて、問題を指差す。


私は少しだけ覗き込む。


「……ここは」


問題を見ながら、解き方を説明する。


「まず、こっちを先に計算して……」


「……あー」


木下くんが頷く。


「なるほど」


「……ここを間違えやすいから」


「ほんとだ」


木下くんはもう一度問題を見る。


「白上さんって、やっぱ頭いいね」


「…………」


「教えるのも上手いし」


「……普通だよ」


「普通じゃないって」


木下くんは笑った。


「俺、説明されても分かんないこと多いし」


「…………」


なんとなく。


嬉しい。


頼られている。


そう思うと。


少しだけ、胸がくすぐったくなる。


でも。


「……これくらいなら、誰でも分かるよ」


「そう?」


「……うん」


私は目を逸らした。


本当は。


もっと頼ってほしい。


そう思ったけど。


そんなこと、言えるわけがなかった。


* * *


昼休み。


私はいつものように、屋上へ続く階段でお昼を食べていた。


静かで。


誰にも邪魔されなくて。


私はここが好きだった。


「…………」


お弁当を食べていると。


階段の下から足音が聞こえてきた。


「……?」


顔を上げる。


すると。


「やっぱりここにいた」


「…………木下くん?」


木下くんが階段を上ってきた。


「何してるの?」


「……こっちのセリフだよ」


木下くんが笑う。


「俺もここで食べていい?」


「…………」


私は少しだけ木下くんを見る。


「……別に」


「じゃあ、ここ座るね」


木下くんが少し離れたところに座った。


「実はさ」


「……?」


「今日、いつも一緒に食べてる友達が休みなんだよね」


「……そうなんだ」


「だから、一人で教室で食べるのも暇だし」


「白上さんと食べようかなって」


「…………」


私と。


「…………」


胸が少しだけ、どきっとする。


「……別に、気を使わなくていいよ」


「うん」


「……だから、わざわざ来なくても」


「でも、俺が一緒に食べたいから」


「…………」


また。


そういうことを。


さらっと言う。


「…………」


私は何も言えなくなって、お弁当のおかずを見つめた。


「白上さん?」


「……何でもない」


「そっか」


木下くんは、それ以上聞かなかった。


しばらく二人でお弁当を食べる。


「白上さんって卵焼き好き?」


「……うん」


「毎日入ってる?」


「……たぶん」


「へぇ」


そんな他愛のない話。


それだけなのに。


いつも一人だった昼休みが。


今日は少しだけ違っていた。


* * *


昼休みが終わる少し前。


木下くんが、ふと思い出したように言った。


「そういえばさ」


「……?」


「もうすぐテストだよね」


「……うん」


五月の定期テスト。


もう少しで始まる。


「俺、ちょっとやばいんだよね」


「……勉強?」


「うん」


木下くんが困ったように笑う。


「赤点取ったら、親にゲーム没収されるんだ」


「…………」


「それだけは避けないと!」


「……ゲーム」


「うん。俺にとっては大事だから」


「…………」


私は少しだけ笑いそうになる。


「……じゃあ、勉強すればいいんじゃない?」


「それはそうなんだけどさ」


木下くんは少しだけ考えて。


「白上さんって、かなり勉強できるでしょ?」


「……普通」


「いや、絶対頭いいでしょ。教え方も上手いしさ」


「…………」


「だからお願いがあるんだけど」


木下くんがこちらを見る。


「今度の土曜日休み、一緒にテスト勉強しない?」


「…………」


私は固まった。


一緒に。


テスト勉強。


「……私と?」


「うん」


「…………」


どうして。


そう思ったけど。


たぶん。


勉強を教えてほしいだけ。


それなら。


別に。


「……いいよ」


「ほんと?」


「……私なんかでよければ」


「やった!」


木下くんが嬉しそうに笑う。


「じゃあ約束ね」


「…………」


「絶対だからね」


「……うん」


私は小さく頷いた。


約束。


今度の土曜日休み。


木下くんと一緒に、テスト勉強をする。


「…………」


それだけなのに。


なぜか。


少しだけ、その日が楽しみになった。


でも。


それを木下くんに言うのは。


なんとなく恥ずかしくて。


「……別に」


私は小さく呟いた。


「……楽しみじゃないけど」


「ん? 白上さん何か言った?」


「……何も言ってない」


私は顔を逸らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。