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素直になりたい白上さん  作者: 星乃ヨナ


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第十八話 文化祭あと

文化祭が終わって、数日が経った。


教室は、すっかりいつもの雰囲気に戻っていた。


壁に貼っていた飾りもなくなって。


机も、いつもの場所に戻っている。


「なんか、寂しいなぁ」


田中くんが教室を見回しながら言った。


「田中、そんなに文化祭楽しかった?」


佐々木さんが聞く。


「もちろん!」


「ずっと食べてたもんね」


「それも文化祭の楽しみだろ!」


「……ふふ」


二人のやり取りを聞いて、私は笑った。


「白上さんも楽しかった?」


木下くんが聞いてくる。


「……うん」


少し考えてから答える。


「すごく楽しかった」


「俺も!」


木下くんが笑う。


その笑顔を見ていると。


文化祭の日のことを思い出す。


メイド服を着たこと。


みんなと一緒に文化祭を回ったこと。


そして。


木下くんに「可愛い」と言われたこと。


「…………」


思い出すだけで、少し恥ずかしくなる。


「白上さん?」


「……え?」


「どうかした?」


「……なんでもない」


慌てて目をそらす。


すると。


「おーい、二人とも!」


田中くんが声をかけてきた。


「おはよう!」


「おはよう、田中くん」


「文化祭、終わっちゃったなぁ」


「そうだね」


「もっとやりたかった……」


田中くんが机に突っ伏す。


「田中はずっと文化祭やってそう」


「佐々木、それはひどくない?」


「だって、楽しそうだったじゃん」


「楽しかったからな!」


二人のやり取りに、また笑ってしまう。


その日の放課後。


「じゃあ、俺たち先に帰るね!」


田中くんが鞄を肩にかける。


「うん。また明日ね」


佐々木さんも手を振る。


「木下、白上さん、また明日!」


「またな!」


「……また明日」


二人が教室を出ていく。


気づけば。


教室には私と木下くんだけが残っていた。


「……俺たちも帰ろうか」


「……うん」


二人で教室を出る。


廊下を歩きながら、文化祭の話をする。


「文化祭、思ってたより楽しかったな」


「……うん」


「最初は、喫茶店ってどうなるんだろうって思ってたけど」


「私も」


「でも、みんなで準備するのも楽しかったよね」


「……うん。準備も楽しかった」


少しだけ沈黙が続く。


でも。


前みたいに、気まずいとは思わなかった。


木下くんと二人で歩くことにも。


少しずつ慣れてきたのかもしれない。


「そういえば」


木下くんがスマホを取り出した。


「文化祭の日、写真撮ったんだけど、見る?」


「……写真?」


「うん」


木下くんが画面を見せてくれる。


そこには。


教室で撮った写真や、文化祭を回っているときの写真が並んでいた。


「これ、田中めっちゃ楽しそう」


「……ふふ」


「これ、佐々木が撮ってくれたやつ」


四人で並んで写っている写真だった。


「…………」


「どうした?」


「……これ」


私は写真を指さした。


そこには。


笑っている私が写っていた。


「私、こんな顔してたんだ……」


「うん」


木下くんが笑う。


「楽しそうだよね」


「……うん」


自分でも少し驚いた。


昔の私は。


写真を撮られるのが苦手だった。


笑うことも。


人と一緒にいることも。


できるだけ避けていた。


でも。


今は違う。


こうして、みんなと一緒に笑っている。


「……なんか、不思議」


「何が?」


「私が、こんなふうに笑ってるの」


「そう?」


「……うん」


木下くんは少し考えてから言った。


「俺は、今の白上さんのほうがいいと思う」


「…………」


胸が跳ねた。


「……どうして?」


「だって、楽しそうだから」


木下くんは、当たり前みたいに言った。


「白上さんが笑ってると、俺も嬉しいし」


「…………」


また。


胸が熱くなる。


「……そっか」


それしか言えなかった。


しばらく歩く。


校門を出ると、少し冷たい風が吹いていた。


夏の頃とは違う空気。


もう、秋なんだ。


「最近、ちょっと涼しくなったな」


木下くんが言う。


「……うん」


「夏、あっという間だったな」


「……そうだね」


海。


夏祭り。


花火。


そして文化祭。


今年は、本当にいろんなことがあった。


「これからも、みんなでいろいろやりたいな」


木下くんが言った。


「……うん」


「またどっか行ったりとか」


「……楽しそう」


「だろ?」


木下くんが笑う。


その笑顔を見ながら。


私は小さく頷いた。


もっと。


みんなと一緒にいたい。


そして。


木下くんとも。


「…………」


夏祭りの日に、言えなかった言葉。


まだ、胸の中に残っている。


でも。


今すぐ伝えなくてもいい。


こうして少しずつ。


木下くんと話して。


一緒に笑って。


もっと、いろんな時間を過ごしたい。


そう思った。


「じゃあ、また明日」


いつもの分かれ道に着く。


「……うん。また明日」


木下くんが手を振る。


私も小さく手を振り返した。


一人になってから。


私は、今日見た写真を思い出す。


笑っている自分。


みんなと一緒にいる自分。


そして。


木下くんが言ってくれた言葉。


「…………」


少しだけ、嬉しくなった。


明日も。


学校に行くのが楽しみだな。


そんなことを思いながら。


私は家へ向かって歩き出した。

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