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素直になりたい白上さん  作者: 星乃ヨナ


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15/22

第十五話 夏休み 海

あっという間に夏休みがきた。


今日は、みんなで海へ行く日。


いつもより早く目が覚めてしまった。


時計を見ると、まだ集合時間まではかなりある。


「…………」


もう一度寝ようとしたけど、なかなか眠れない。


楽しみでしょうがないからなのか。


私は準備していた荷物をもう一度確認した。


水着。


タオル。


着替え。


飲み物。


財布。


忘れ物がないことを確認して、家を出る。


駅前に着くと、まだ三人は来ていなかった。


少し早く来すぎたかな。


そう思いながら待っていると。


「白上さん!」


聞き慣れた声がした。


振り向く。


木下くんだった。


「……おはよう」


「おはよう!」


木下くんは、いつもより楽しそうに笑っている。


「早いね」


「……木下くんも」


「俺も楽しみで、早く起きちゃった」


「…………そうなんだ」


私も同じだった。


でも、それは言えなかった。


しばらくして。


「お待たせー!」


佐々木さんと田中くんがやってきた。


「おはよう!」


「おはよう」


四人が揃う。


「みんな集まったことだし、行きましょ!」


佐々木さんの声で、私たちは駅の中へ向かった。


電車に乗って、海へ向かう。


四人で並んで座りながら、今日何をするか話した。


「海についたら、まず泳ごうよ!」


「その前に荷物置く場所探さないと」


「じゃあ田中、場所お願いね」


「任せろ!」


「張り切ってるね」


木下くんが笑う。


そんな会話を聞きながら、私は窓の外を見る。


知らない景色が、少しずつ流れていく。


海が近づいている。


そう思うだけで、胸が少しだけ高鳴った。


しばらくして。


「着いた!」


駅を降りて、少し歩くと。


目の前に海が広がった。


「わぁ……」


思わず声が出た。


青い空。


広い海。


波の音。


「すごいな!」


木下くんも嬉しそうに海を見る。


「早く行こう!」


佐々木さんが走り出す。


「待てって、着替えてからだろ!」


田中くんが追いかける。


私たちは更衣室へ向かった。


それぞれ着替えを終えて、外で待ち合わせる。


先に出ていた佐々木さんと田中くんがこちらを見る。


「おー!」


佐々木さんが笑う。


「似合ってるじゃん!」


「……そ、そう?」


私は少し恥ずかしくなる。


すると、木下くんも出てきた。


「お待たせ」


木下くんが私の方を見た。


「…………」


目が合った。


木下くんが少しだけ目をそらす。


「……白上さん、似合ってると思う」


「…………え」


胸がどきっとした。


「……ありがとう」


顔が熱くなる。


「木下くんも、似合ってるよ」


小さな声で返す。


「……ありがと」


木下くんも照れたように笑った。


お互い、なんとなく目を合わせられなくなる。


それを見ていた佐々木さんが、にやっと笑った。


「ほーん?」


「……なに?」


「なんでもないよ」


佐々木さんは楽しそうだった。


「ほら、せっかくだから遊ぼう!」


私たちは砂浜へ向かった。


海に入る。


「冷たい!」


田中くんが叫ぶ。


「めっちゃはしゃぐじゃん!」


佐々木さんが笑う。


私も足を海につける。


「……冷たい」


「白上さん、大丈夫?」


木下くんが聞いてくる。


「……うん」


少しずつ水に慣れていく。


すると。


「えいっ!」


佐々木さんが田中くんに水をかけた。


「とりゃっ!」


「うわっ!」


「佐々木、やったな!」


田中くんも水をかけ返す。


二人の水が、私たちのところまで飛んでくる。


「わっ……!」


「やったなぁ!」


「……ふふ」


はしゃぐみんなを見て、思わず笑っていると。


「えい」


木下くんが、少しだけ私に水をかけた。


「……きゃ!」


「ご、ごめん」


木下くんが慌てる。


でも。


「……ふふ」


なんだか、おかしくなった。


私も手で水をすくって。


「えい」


木下くんにかける。


「うわっ!」


「おかえし」


思わず笑ってしまう。


「白上さん、やったな!」


木下くんも笑う。


それから、四人で水をかけ合った。


笑って。


逃げて。


また追いかけて。


気づけば、夢中になっていた。


その後は、持ってきたボールで遊んだ。


「木下、こっち!」


田中くんがボールを投げる。


「任せろ!」


木下くんが受け取る。


「白上さん!」


突然、ボールがこっちに飛んでくる。


「えっ……!」


慌てて受け取る。


「……取れた」


「ナイス!」


木下くんが笑う。


今度は私が木下くんにボールを投げる。


「いくよ」


「おう!」


ちゃんと受け取ってくれた。


「やった」


「白上さん、上手じゃん」


「……そうかな」


「うん」


みんなでボールを追いかけているうちに、時間はあっという間に過ぎていった。


たくさん遊んで。


たくさん笑った。


「そろそろ帰る時間だね」


佐々木さんが時計を見る。


「もう?」


田中くんが残念そうにする。


「まだ遊びたいけど、帰りの時間もあるからね」


「そうだな」


木下くんも頷く。


私たちは帰る準備を始めた。


更衣室で着替えて、荷物をまとめる。


外に出ると、少しだけ夕方の空になっていた。


「楽しかったね」


佐々木さんが言う。


「そうだな!」


田中くんも笑う。


「また来たいな」


木下くんが海を見る。


「……うん」


私も頷いた。


海を離れるのが、少しだけ寂しかった。


駅まで歩いて、電車に乗る。


帰りの電車は、行きより静かだった。


たくさん遊んだから。


田中くんと佐々木さんも、少し疲れているみたいだった。


私も窓の外を眺める。


今日のことを思い出す。


海で、みんなと遊んだ時間。


水をかけ合ったこと。


ボールで遊んだこと。


みんなで笑ったこと。


どれも楽しかった。


「…………」


隣を見る。


木下くんが、目を閉じていた。


眠っている。


きっと疲れたんだと思う。


電車が揺れる。


そのたびに、木下くんの体が少しずつこちらへ傾いてくる。


そして。


「…………」


肩に、重みを感じた。


木下くんが、私の肩に寄りかかっている。


「…………!」


驚いて、体が固まる。


起こしたほうがいいのかな。


そう思ったけど。


「…………」


寝ている木下くんを見る。


起こすのも、なんだかもったいない気がした。


私はそのまま動かずにいた。


電車の揺れる音。


窓の外を流れていく景色。


隣から伝わってくる、木下くんの小さな寝息。


不思議だった。


少し前まで。


私は、学校でもほとんど誰とも話さなかった。


放課後は一人で帰って。


休みの日も、家にいることが多かった。


でも今は。


友達と海に行って。


みんなで笑って。


こうして帰り道まで一緒にいる。


「…………」


この時間が。


なんだか、とても大切に思えた。


だから。


もう少しだけ。


このままでいたい。


私は窓の外を見ながら、静かに思った。


今日のこと。


みんなで過ごした時間。


木下くんと過ごした、この時間。


きっと。


忘れたくない。


そう思った。

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