第十四話 夏休みに向けて
あれから日が経ち、テスト当日。
教室には、いつもより少しだけ緊張した空気が流れていた。
「大丈夫かな、俺」
木下くんが、小さな声でつぶやく。
「……木下くんなら大丈夫」
そう言うと、木下くんは少し驚いたように私を見る。
「ほんと?」
「……うん」
「そっか。それなら、なんか安心した」
そう言って笑う木下くんを見て、私も少しだけ笑った。
そして、テストが始まった。
一時間目、二時間目……。
問題用紙をめくる音と、鉛筆を走らせる音だけが教室に響く。
私はいつも通り、落ち着いて問題を解いていった。
そして。
最後のテストが終わった。
「終わったー!」
田中くんが、机に突っ伏す。
「疲れた……」
佐々木さんも大きく息を吐いた。
「俺も疲れた……」
木下くんも苦笑する。
すると田中くんが顔を上げた。
「でもさ、もう少しで夏休みだし!」
「そういえばそうだね」
佐々木さんが笑う。
「夏休み、どっか行こうよ!」
「どこ?」
「海!」
佐々木さんが即答した。
「海かぁ……」
田中くんが考える。
「いいんじゃない?」
木下くんも賛成する。
そして、三人の視線が私に向いた。
「白上さんは?」
「……別に、いいけど」
「じゃあ決まり!」
佐々木さんが嬉しそうに笑った。
「海行こう!」
こうして、夏休みにみんなで海へ行くことになった。
その後、必要なものを買いに行くため、次の休みの日にみんなでショッピングモールへ行くことになった。
そして当日。
「まずは女子から見ようよ!」
佐々木さんが言う。
「男子はちょっと待ってて!」
「分かった」
木下くんと田中くんが近くで待つ。
水着売り場を見ながら、佐々木さんが楽しそうに話している。
「これ可愛い!」
「……そうだね」
私はいくつかの水着を見比べる。
どれがいいのか、よく分からない。
すると佐々木さんが、ふと思いついたように言った。
「ねえ、男子にもどっちがいいか聞いてみようよ」
「……え?」
「どっちが似合うか、意見聞いてみたいじゃん」
そう言って、佐々木さんは田中くんのところへ向かった。
「田中、ちょっと来て!」
「え、俺?」
二人が少し離れたところへ行く。
そして佐々木さんが木下くんに声をかけた。
「木下は白上さん見てあげて」
「えっ?」
木下くんが驚く。
「どっちがいいか、意見聞いてあげてよ」
「……う、うん」
気づけば、私と木下くんだけが残っていた。
「……お願いします」
「……う、うん」
私はいくつか選んだ水着を手に取り、順番に見てもらう。
「これ……どうかな」
「似合うと思う」
「……こっちは?」
「それもいいと思う」
どちらも悪くないと言われて、余計に迷ってしまう。
「白上さんは、どっちが好き?」
「……私は」
少し考えてから、一つを選ぶ。
「……こっちかな」
「じゃあ、それがいいんじゃない?」
「……うん」
木下くんにそう言ってもらえると、なんとなく安心した。
その後、佐々木さんと田中くんも水着を選び、みんなで必要なものを買った。
「よかったね」
帰り際、佐々木さんが私に小さく笑いかける。
「……何が?」
木下くんが聞く。
「なんでもない」
佐々木さんは、楽しそうに笑った。
買い物を終える頃には、外はもう夕方になっていた。
「もうすぐ夏休みだな」
田中くんが言う。
「海、楽しみ!」
佐々木さんも嬉しそうだ。
「俺も楽しみだな」
木下くんが笑う。
「……楽しみだなぁ」
私も小さく笑った。
夏休み。
みんなで海へ行く。
今までなら、そんな予定なんてなかった。
でも今は。
一緒に行きたいと思える人たちがいる。
そんなことが、少しだけ嬉しかった。
私たちは、そのまま一緒に歩いて帰った。




