第十二話 メール
野外活動が終わり、何日か日が経った。
学校は、いつもの毎日に戻っていた。
「白上さん、おはよう」
「……おはよう」
木下くんが、いつものように声をかけてくる。
「そういえばさ」
「……?」
「俺、携帯買ってもらったんだ」
「…………」
「携帯?」
「うん」
木下くんが嬉しそうに頷く。
「昨日買ってもらった」
「へえー!」
横から田中くんが話に入ってくる。
「マジかよ!」
「うん」
「じゃあ、連絡先交換しようぜ」
「いいよ」
田中くんと木下くんが、それぞれ携帯を出す。
少し操作して。
「よし、できた」
「俺も」
佐々木さんも、
「じゃあ、私も交換しよ」
と言って、二人と連絡先を交換する。
「…………」
私は、その様子を少し離れたところから見ていた。
携帯は私も持っている。
でも。
普段、家族と連絡を取るくらいしか使っていない。
「白上さんも交換しない?」
「…………!」
突然、木下くんに声をかけられた。
「私も……?」
「うん」
「四人で連絡先持ってたほうが、何かと便利じゃん」
「…………」
四人。
そう言われると。
断る理由なんてない。
「……うん」
私は携帯を出した。
木下くんが自分の画面を見せてくれる。
「ここ押して」
「……こう?」
「そうそう」
少し操作して。
画面に表示された名前。
「白上 澪」
「……できた」
「俺もできた」
「…………」
木下くんの携帯に。
私の名前が入っている。
それだけなのに。
なんだか不思議な感じがした。
「じゃあ、これで四人とも交換できたな」
田中くんが言う。
「うん」
佐々木さんも頷く。
「これなら、何かあったとき連絡できるね」
「…………」
私は自分の携帯を見る。
そこには。
「木下 大樹」
という名前が入っていた。
「…………」
なんだか。
少しだけ嬉しい。
* * *
家に帰って、宿題を終わらせ、夕食を食べる。
そしてお風呂にも入って、やること全て終わらせて自分の部屋に戻った。
「…………」
机の上に置いた携帯を見る。
今日、交換したばかりの連絡先。
「…………」
木下くんの名前。
何度見ても。
少しだけドキドキする。
「…………」
でも。
自分から連絡することなんてできない。
何を送ればいいのか分からないし。
そもそも、用事もない。
「…………」
携帯を置く。
少しして、また画面を見る。
「…………」
何も来ていない。
当たり前だけど。
少しだけ残念に思ってしまう。
「…………私、何してるんだろう」
そのとき。
「ピロン」
「…………!」
携帯が鳴った。
急いで画面を見る。
「…………」
木下くん。
「…………!」
心臓が。
少しだけ速くなる。
メールを開く。
『白上さん、今大丈夫?』
「…………」
何だろう。
少し緊張しながら、続きを読む。
『期末テスト近いし、今度四人でテスト勉強しない?』
「…………」
テスト。
そういえば。
もうすぐ期末テストだった。
『田中と佐々木にも聞いてみようと思ってる』
『みんなでやったほうが楽しそうだし』
「…………」
木下くんらしい。
私は少しだけ笑った。
そして。
返信画面を開く。
『うん。私でよければ』
送信。
「…………」
少しして。
「ピロン」
また返事が来る。
『よかった!』
『白上さんに教えてもらえると助かるし』
「…………」
また、頼ってくれた。
それが。
なんだか嬉しい。
『じゃあ、田中と佐々木にも聞いてみるね』
『また決まったら連絡する!』
「…………」
私は画面を見つめる。
学校ではいつでも話せる。
でも。
こうして学校の外でも。
木下くんと連絡が取れる。
それだけで。
なんだか。
少しだけ特別な気がした。
「…………」
野外活動が終わって、少し寂しいと思っていたけど。
これからは。
学校だけじゃない。
「…………」
木下くんと。
こうやって繋がっていられる。
そう思うと。
「……嬉しいな」
私は小さく呟いて。
携帯を胸元に抱えた。




