あと272日/青春が終わる日
這い蹲った床から見上げる、眩しいライト。
追い続けたボールは、コートの外で無惨にも転がっている。
もう、誰の手も届かない。
ピ・ピー、というホイッスルの音と共に、神楽たちの夏が終わった。
コートと相手選手に礼をして、握手を交わす。
間もなく次の試合が始まる。
次のチームに場所を明け渡すために、すぐに撤収しなくてはならない。
試合後の余韻もないまま、慌ただしくベンチに向かうと。
帰って来た選手たちを迎える、長身の男がいる。
「お疲れ」
いつになく優しい目で笑う泉と目が合った途端。
堪えていたものが決壊した。
「──まさか第一号がお前か、神楽」
俯いてタオルに顔を埋めれば、頭をぐしゃっと撫でられる。
続いて、別の温もりが背中に触れた。
「ちょ、泣くなよ、神楽!」
「神楽、よせ! こっちも堪えてんだよ!」
「それもやめろ、貰い泣く!」
「いやいや、結構頑張ったじゃん、俺ら」
「そういうこと言うなや!」
「みんな、3年間ありがとうな」
「やめろやめろー!」
部員たちが次々と神楽の背中を叩き、肩を組んで、どやどやと騒ぎながら、団子になってフロアを後にしていく。
ず……、と鼻を啜って、真っ赤になった目で振り返れば。
顧問と話し終わった泉が、ちょうどこちらに視線を向けたところで。
「……」
またひとしずく。
涙が零れ落ちた。
(ああ、もう、先生に指導してもらうことねぇんだな……)




