表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇〇日後に番になる泉先生(α)と神楽くん(Ω)  作者: 最上ふう。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/18

あと191日/進路相談室

「失礼しまー……」


 カラリと扉が開く。そこには、目を丸くした神楽が立っていた。


「あれ? 先生?」

「なんだ、神楽か」

「なんでいんの? 進路相談してくれんの?」

「こんなのただの持ち回りだ。俺に相談すんなよ。ちゃんとした先生にしろ」

「あんたはちゃんとした先生じゃねぇのかよ……」

「教師が全員ちゃんとしてたらニュースになんかなんねぇんだよ」

「仮にも先生がそういうこと言うな」


 軽口を叩きながら、神楽は泉の向かいの椅子に座る。

 泉は引き出しを開けて、『進路相談シート』とプリントされた紙を一枚取り出した。


「おらよ」

「えー、めんどくさ」

「決まりだ。書け」


 少し強く言うと、神楽は渋々ペンを取った。


「『神楽悠斗』、『3-A』、『18歳』。……あ? お前、誕生日終わってたのか」

「うん、そう。俺の誕生日って夏休みなんだよね」

「成人じゃん。おめでとう」

「祝ってくれんならモノをくれ。点数でもいい」

(かね)って言わねぇだけマシか」


 頬杖をついて、筆圧の高い丸めの文字が書き込まれていくのを見守る。

 神楽はやりにくそうにしながら、『相談内容』の項目に『専門学校の資料がほしい』と書き込んだ。


「神楽は専門学校志望か」

「だって、俺Ωだからさ。頭も良くないし、手に職付けた方がいいと思って」

「……お前、意外にちゃんと考えてんのな」

「意外って言うな」

「専門学校って一口に言っても多種多様あるぞ。どういう系統がいいんだ?」


 人差し指で『相談内容』の部分をトントン、と叩くと、その指を捉える手がある。

 泉は指先に落とした視線を、ゆっくりと上げた。


「先生は」


 俯いていて表情は見えないが、項まで赤くなっているのは分かる。


「なんで、バレーボール辞めた?」


 ピクリ、と泉の指が反応した。

 誤魔化すように神楽の指を握り返して。


「……んなの聞いてどうすんだ」

「いや、参考までにさ」


 困っている素振りではあるが、神楽は手を引っ込めようとはしない。


「向いてねぇからだよ」

「え、嘘。あんなに上手いのに」

「おう。俺は上手いぞ」

「自分で言うな」

「俺が上手いだけじゃ成り立たねぇんだよ。団体競技ってやつは」

「……あー、先生、協調性なさそう」


 視線を伏せたまま笑う神楽。

 動きに合わせて震える睫毛は、思ったよりも長かった。


「図星を突いてくんじゃねぇ。特にバレーボールは、チームワークと雰囲気がものを言う種目だからな」


 触れ合った手のひらに、じわりと熱が滲む。


「じゃあ、先生になったのって……」

「コートの外からなら言いたいこと言えんだろ」


 手を緩めて「参考になったか」と問えば、頷きと同時にするりと熱い指が逃げていった。


(お前の弱点を補う方法は、俺が持ってんだけどな)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ