あと287日/文化祭
写真部の友達にせがまれて、視聴覚室にいる神楽。
暗幕で覆われた部屋は暗く、大きなスクリーンには、学校の風景を収めた写真がストーリー仕立てで映し出されていた。
「ねっむ……」
秒で眠くなった神楽が、最後列でうとうとしていると。
隣に背の高い誰かが座った。
ベルガモットのような香り。
「せ……」
しー、と唇の前で人差し指を立てられて、神楽は口を噤んで俯いた。
視聴覚室の机には模造紙が貼られていて、そこに自由に感想を書けるようになっている。
薄暗くて見づらいが、上映内容とは全く違った書き込みも多々あるようで。
神楽は意味もなく、その文字の羅列を目で追った。
「……」
触れているわけでもないのに、体の左側だけがすごく熱い。
耐えきれなくなり、ペンを取って何かを書き込むと、机に伏せて寝たふりをした。
「っ……」
不意に、髪を弄られる感触。
でも、寝たふりで。
数分後、上映が終わり電気が点けられた視聴覚室には、もう隣の人の姿はなかった。
机に視線を落とす。
『好きでいていい?』
神楽の書いたメッセージの下に。
『いいよ』
と、もの凄く綺麗な字の返信が残されていて。
その場に突っ伏した神楽は、しばらく動くことができなかった。
(急に優しくなるの、何なん……)




