あと312日/テーピング
バレーボール選手は、突き指とは切っても切れない縁がある。
今日も、その洗礼を受けた部員が一人。
少し腫れて熱を持つ神楽の指にコールドスプレーを吹き付け、よく冷えたところでテーピングを使って固定していく。
「先生……」
「ん? 痛むか?」
「ジンジンする」
「だろうな。派手にやってるし、もし痛みと腫れが収まらねぇようなら、ちゃんと病院行って見てもらえよ」
「うん」
いつになく素直なのは、本当に痛むからだろう。
ビ、ビ、と音を立てながらテープを剥がし、動かせないように指に巻き付ける。
「先生、いい匂いする……」
すん、と鼻を鳴らす神楽。
「嗅ぐな忘れろ」
「ムリ」
「だよなぁ」
泉の手よりも小さくて、節々がごつごつと目立つ指。
「終わったぞ」と手を解放しても、手のひらに乗ったままで。
「俺もなんか匂いしてんの?」
「してんな」
「もしかして汗臭い?」
急にそわそわとTシャツの中を嗅いでみたりするのを見て、ふ、と笑いが零れた。
「心配しなくてもちゃんといい匂いだよ」
「……そうなんだ」
「つーかお前、匂いのこと言うのハラスメントになるからな。俺以外には言うなよ」
「大丈夫、俺、先生の匂いしかわかんないから」
(俺も、お前の匂いしかわかんねぇんだよなぁ……)




