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あと324日/国語研究室で2
甘くていい匂いがする。
泉は、傍らの神楽の首元がいつもと違うことに気づいた。
「……お前、ネックガードは?」
「あー。暑くて」
神楽は面倒そうに言って、晒されている項を掻く。
「危ねぇだろうが。ネックガードはしとけ」
泉は自分のカバンからまだ未使用のタオルを取り出し、項が隠れるよう神楽の肩にかけた。
「あーつーいー」
「我慢しろ」
すん、と神楽の鼻がひくついた。
「……っ、こんなの不便すぎる!」
神楽はタオルを払いのけて、泉に背を向ける。
そして少しだけ振り向いて。
「先生が噛んでくれたら、暑い思いしなくてすむんだけど!」
危うい冗談だ。
言った本人が、晒した項まで赤くなっている。
「──馬ぁ鹿。俺を失職させる気か」
泉はぺしっと神楽の後頭部を叩き、改めてタオルを巻いた。
内心の動揺を押し殺して。
(……危ねぇっつーんだよ)




