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〇〇日後に番になる泉先生(α)と神楽くん(Ω)  作者: 最上ふう。


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13/20

あと107日/事故

 ガヤガヤと騒がしい昼休みの教室に、背の高い教師が頭を屈めて入って来た。


「おい、篠原の荷物はどれだ?」

「あー、泉先生だー」

「先生、どったの?」

「篠原の荷物、頼まれて取りに来たんだよ」

「えー、なんで?」

「篠原の席ここ!」

「ロッカーはこっちね」

「おー」


 わらわら寄っていく生徒を上手く使いながら、泉は目的の生徒の荷物を手早く纏めていく。

 神楽はパック牛乳を飲みながら、その様子をただ眺めていた。


「篠原くんどうしたの?」

「早退だ」

「えー、体調悪かったのかな?」

「気づかなかったねー」


 年が明ければ、本番を迎える受験生たち。

 体調の話には少しナーバスにもなる。


 そのうち、一人の男子生徒が泉の傍で声を潜めて言った。


「なーなー、先生。しのっちさ、事故ったってほんと?」

「……担任から報告あんだろうから、俺は言わねぇぞ」

「あー、否定しないんだ」

「お前も言いふらすな」


「えー、なになに? 気になる」

「篠原がなんだって?」


「──うるせぇ。お前らは黙って待て」


 泉の口が悪いのはいつもと同じだが、少しピリついているように見える。


「これで全部か。サンキュ」


 泉は纏められた篠原の荷物を持って、教室を出て行く。


 カタン。

 神楽は立ち上がってその背を追った。


 篠原は、Ωだったはずだ。

 もしそれが理由なら。


「……先生!」


 賑わう廊下ではなく、少し静かな階段で呼び止める。


「……」


 振り向いた泉は、何の感情もない表情で。

 ただ、口の前で人差し指を立てて。


 踵を返し、階段を下りていく。


「……なに、今の」


 静かな拒絶を感じて、神楽は、ただ呆然とその背を見送った。


 その後、泉の言う通り、クラス担任から報告があった。

 『篠原は、ヒート事故でαに噛まれて病院に行った』と。

 そして『αとΩの生徒は充分気を付けるように』と、耳にタコができるほど聞かされた注意を受けた。


(『誰にも言うな』、か……)




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