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〇〇日後に番になる泉先生(α)と神楽くん(Ω)  作者: 最上ふう。


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12/20

あと130日/ヒートのその後

「送ってってやるから教員用の駐車場で待ってろ」

「……うん……」


 泉が事後処理と支度を終えて駐車場に向かうと、泉の車の前で所在なさげに立っている神楽がいた。

 待たせたことを詫びてから車に乗り込む。


「お前んちどこだ」

「〇〇区の公民館の方。近くに公園あるから、そこに停めて」

「わかった」


 車は学校の敷地を出て、夕暮れの公道へ滑り出した。


「体調は大丈夫か」

「今んとこ……」

「そうか」


 薄暗くなり始めた風景に、前を走る車のテールランプが眩しい。


「お前んとこの担任には、明日欠席するって伝えておくからな」

「……先生、俺の担任知ってんの?」

「……あー? 誰だっけ?」

「3-A。霧島センセ」

「そう。知ってた」

「嘘じゃん」


「……」


 沈黙が落ちた。

 隣で小さくなっている神楽が、何度も口を開きかけては閉じるのを繰り返している。


「言いたいことあんなら我慢すんな」


 水を向けると、小さな神楽がごにょごにょと言い出した。


「……事情とか、立場とか、いろいろあんのは分かってて。……ほんとはちゃんとお礼を言うべきっていうのも分かってんのに……、納得できなくて……」

「もっとシンプルに十文字以内で言え」


 いつも以上に短気なのは、自らも余裕がないからだと自覚している。


「──先生、好きだ」


 なのに、随分年下の相手は、素直で、誤魔化したりしない。

 肩の力が抜ける。

 本当に素直になるべきなのは、己なのだと。


 泉は「正解だ」と笑ってから、改めて口を開いた。


「……お前、俺に噛んでほしいんだろ?」

「うん……」

「じゃあ、他の誰にも噛ませるんじゃねぇぞ」


「──は?」


「『は?』じゃねぇよ」

「だって」

「『だって』でもねぇんだよ」

「……」

「おい、黙るな」


 ちらりと横を見る。

 そこには、顔を真っ赤にして泣きそうになっている神楽がいた。


「……」


 そうこうしているうちに、カーナビは目的地の公園に到着したと告げて案内を終了させた。

 小さな街灯しかない、薄暗い公園。

 ハザードランプを焚いて、静かにブレーキをかけた。


 隣では、神楽が黙って涙を零していた。


「なんで泣いてんだよ」

「ほ、ほんとに、いいのかと、思って……」

「お前こそいいのか? 卒業したら専学行くんだろ? 専学行ったら、可愛い女の子もいい男もうじゃうじゃいるぞ」

「……先生がいい」

「ま、俺ぐらいいい男はいねぇだろうけど」

「……」

「おい、ツッコめよ」

「……自惚れてんじゃねぇよ」

「言えんじゃねーか」


 甘い匂いが鼻腔を擽る。


「……」


 収まったと思った衝動に突き動かされて。

 神楽の肩を引き寄せ。

 触れるだけの口吻けを。


「……絶対に守れよ」

「……」


 静かに頷く神楽から手を放すのは、思った以上に堪えた。


(この罪は一生モンだな)




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