表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔の島 ―選ばれし20人、生存率0%  作者: 虫松
直人・慎吾編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/33

第4話 直人・慎吾編、狂気の影

悪魔の島の森の奥。

風が、止まっている。


音がない。


生き物の気配すらない。


慎吾たちは、ゆっくりと歩いていた。


足元には。

動物の骨。

乾いた血。


彩花が低く言う。


「……ここ、異常」


直人が短く返す。


「気にするな。進め」


だが美和が立ち止まる。


「……いる」


空気が変わる。


慎吾が周囲を見る。


「……何がだ?」


その時。


――カサ……


何かが動いた。


全員が振り向く。


そこにいたのは。


“人間”だが人間ではない。


ボロボロの服。

泥と血にまみれた体。


そして

笑っている。


マルコだった。

目が、壊れている。

焦点が合っていない。


口元だけが、歪んでいる。


「…………」


何かを呟いている。

スペイン語で早い。


途切れない。

意味が分からない。


「……」


「……」


「¡No… no… yo mando… yo… yo…!」

(いや…いや…私が指揮官だ…私…私…)


手が震えている。


空を掴むように動く。


「¡Obedece…! ¡OBEDECE! ¡Todos muertos… no es mi culpa…!」

(命令だ!隊列を維持しろ!!)


突然、笑う。


「……ハハ……ハハハハ……」


彩花が一歩下がる。


「……危険人物」


直人も構える。


「近づくな」


だが。


マルコは気づいていない。


いや。


“認識していない”。


目の前にいるのに。


違うものを見ている。


「¡Formación… formación…! ¡No rompan la línea!」

(訓練…訓練…!列を乱すな!)


何もない空間に向かって命令する。


「¡Tú! ¡Levántate! ¡No te detengas!」

(おまえ!立ち上がれ!止まるな!)


誰かを見ている。


だが、そこには、誰もいない。


慎吾が低く言う。


「……完全に壊れてる」


美和が、震える。


「……違う」


全員が彼女を見る。


「……この人……」


「聞いてる……」


「“声”を……」


空気が、歪む。


マルコが突然、こちらを向く。


ピタリと止まる。


目が合う。


その瞬間。


ゾッとする。


理解している目ではない。

“覗かれている”感覚。


マルコがゆっくり口を開く。


「……¿Torre…?」

(塔?)


その単語だけが、はっきりと聞こえた。


慎吾が息を呑む。


「……塔を知ってるのか」


マルコは笑う。


壊れたまま。


「¡La torre… la torre llama…!」

(塔が…塔が呼んでいる…!)


指を、震えながら上に向ける。


「¡No vayan… no… no…!」

(行かないで…いや…いや…!)


だが次の瞬間。


叫ぶ。


「¡OBEDECEEEEE!!」

(従えー!!)


地面を叩く。


狂気。


完全な崩壊。


彩花が言う。


「……情報はある。でも」


「会話不能」


直人が判断する。


「使えない」


慎吾は、迷う。


「……でも」


美和が、静かに言う。


「……この人、知ってる」


「塔のこと」


沈黙。


マルコはまだ何かを叫んでいる。


誰もいない戦場で。


終わらない命令を。


慎吾が目を閉じる。


そして開く。


「……行こう」


「関わったら、終わる」


直人が頷く。


「正解だ」


美和だけが振り返る。

マルコを見つめる。


「……ごめんね」


マルコの声が、遠ざかる。


「Están todos muertos...」(みんな死んだ……)


「No es mi culpa..」(俺は悪くない……)


「Son unos fracasados...」

(あいつらは出来損ないだ…)


足元には動物の骨。

乾いた血。


彩花が低く言う。


「……ここ、異常」


直人が短く返す。


「気にするな。進め」


だが美和が立ち止まる。


「……いる」


空気が変わる。


慎吾が周囲を見る。


「……何がだ?」


その時。


――カサ……


何かが動いた。


全員が振り向く。


そこにいたのは。


“人間”だが人間ではない。


ボロボロの服。

泥と血にまみれた体。


そして

笑っている。


マルコだった。

目が、壊れている。

焦点が合っていない。


口元だけが、歪んでいる。


「…………」


何かを呟いている。

スペイン語で早い。


途切れない。

意味が分からない。


「……」


「……」


「¡No… no… yo mando… yo… yo…!」

(いや…いや…私が指揮官だ…私…私…)


手が震えている。


空を掴むように動く。


「¡Obedece…! ¡OBEDECE! ¡Todos muertos… no es mi culpa…!」

(命令だ!隊列を維持しろ!!)


突然、笑う。


「……ハハ……ハハハハ……」


彩花が一歩下がる。


「……危険人物」


直人も構える。


「近づくな」


だが。


マルコは気づいていない。


いや。


“認識していない”。


目の前にいるのに。


違うものを見ている。


「¡Formación… formación…! ¡No rompan la línea!」

(訓練…訓練…!列を乱すな!)


何もない空間に向かって命令する。


「¡Tú! ¡Levántate! ¡No te detengas!」

(おまえ!立ち上がれ!止まるな!)


誰かを見ている。


だが、そこには、誰もいない。


慎吾が低く言う。


「……完全に壊れてる」


美和が、震える。


「……違う」


全員が彼女を見る。


「……この人……」


「聞いてる……」


「“声”を……」


空気が、歪む。


マルコが突然、こちらを向く。


ピタリと止まる。


目が合う。


その瞬間。


ゾッとする。


理解している目ではない。

“覗かれている”感覚。


マルコがゆっくり口を開く。


「……¿Torre…?」

(塔?)


その単語だけが、はっきりと聞こえた。


慎吾が息を呑む。


「……塔を知ってるのか」


マルコは笑う。


壊れたまま。


「¡La torre… la torre llama…!」

(塔が…塔が呼んでいる…!)


指を、震えながら上に向ける。


「¡No vayan… no… no…!」

(行かないで…いや…いや…!)


だが次の瞬間。


叫ぶ。


「¡OBEDECEEEEE!!」

(従えー!!)


地面を叩く。


狂気。


完全な崩壊。


彩花が言う。


「……情報はある。でも」


「会話不能」


直人が判断する。


「使えない」


慎吾は、迷う。


「……でも」


美和が、静かに言う。


「……この人、知ってる」


「塔のこと」


沈黙。


マルコはまだ何かを叫んでいる。


誰もいない戦場で。


終わらない命令を。


慎吾が目を閉じる。


そして開く。


「……行こう」


「関わったら、終わる」


直人が頷く。


「正解だ」


美和だけが振り返る。

マルコを見つめる。


「……ごめんね」


マルコの声が、遠ざかる。


「Están todos muertos...」(みんな死んだ……)


「No es mi culpa..」(俺は悪くない……)


「Son unos fracasados...」(あいつらは出来損ないだ……)


森に響く。

壊れた英雄の声。


かつて。最も“正しかった男”。

今は最も“壊れた存在”。


正しさは、人を救わない。

時にそれは人を壊す。


そして4人は歩き出す。

塔へ、その先は希望か絶望かその答えへ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ