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49. ループ編 ⑩ 断罪、そして初の平民の女官吏の誕生 ※ざまあ展開注意

※所謂「ざまぁ」のお話になります。苦手な方はご注意ください。

 王都に帰って来た三人はそのまま着の身着のまま謁見の間へと入っていき、


「……へ?」

(ナニコレ?)


 サクラは目が点になる。その視線の先には――


「は、放せ! 放さんか! わ、私を誰だと思てっいる⁉」


 でっぷりと太った貴族で、幾度も社交界で出会った悪名高い貴族、デップル伯爵が縄で縛られて謁見の間に引っ立てられていた。


(なんで?)

「おお、よくぞ戻った。サクラにアルバス、それにレイクリウスよ」


 玉座に腰かける国王。それに跪くアルバスとレイクリウスにサクラ。そして、


「陛下。出しておいた先触れ、お読み頂けたでしょうか?」

「うむ。目を通した。入らせるが良い」

「はは!」


 レイクリウスの言葉に頷き、国王の命に応えて兵士が一人の少女を謁見の間へと連れて来る。


(え――?)


 見知った顔。当然だ。つい先日あったばかりなのだから。


「ユミル、嬢……?」

「……お目にかかれ、光栄で御座います。陛下、サクラ様」


 社交界のドレス姿ではなく普通の村できているような装いのユミル。しかしサクラ以外に驚いた様子はない。


「さてデップルよ。そなたには反逆や横領、敵前逃亡の容疑がかけられておる。申し開きはあるか?」

「な! ななななななな、何をおっしゃいます陛下! わ、私はこの国に忠誠を誓って……!」

「先の邪竜復活騒動。その首謀者が持ってた書類だ」


 話している最中、レイクリウスがつかつかとデップル伯の前まで歩いて行き、ヴェルスが消えた後に残っていた書類の一つを見せる。


「そ、そそそそそそそ、それは……⁉」

「デップル伯。貴方が今回の邪竜復活を企てた首謀者と結託した証拠だ」

「結託?」


 騒めく謁見の間。すっとアルバスが前に出て声を張り上げる。


「邪竜復活によって国内を混乱。同時に討伐に来たサクラ様を殺害。その後遅れてやってきた貴方率いる軍が邪竜を討伐……したように見せかける」


 騒めきが高まる。


「復活した邪竜を討伐をしてみせ、先の討伐は失敗だったと吹聴して自らの功績に変えて王家を追放して玉座を乗っ取る……まあ随分と安っぽい陰謀ですね」

「そ、そそそそそんな……私は……!」


 否定しても遅い。だらだらと汗を垂れ流して青ざめた表情のデップル伯を見て、何が真実かは一目瞭然。

 

「尤も、邪竜復活騒動の首謀者はデップル伯との密約を守るつもりは端からなかったようだが」

「え……え?」

 目を白黒させるデップルにレイクリウスはゾッとする程冷たい視線で見下ろし、真実を告げる。


「まだ分からないか? デップル伯。貴方は今回の首謀者に利用されたんだよ」


 ぎょっと顔色を変えるデップルにレイクリウスは続ける。


「首謀者はこの国を潰したかった。その為には〝聖女〟サクラが邪魔だった。

 〝聖騎士〟も〝勇者〟も消え失せた今彼女さえどうにかすればこの国は潰える。サクラを亡き者にすべく邪竜を復活させた……が、邪竜の復活は不完全な状態だった。そんな状態では如何に邪竜と言えど〝聖女〟とその軍勢相手では心もとない。

 だから、首謀者はデップル伯。貴方に玉座簒奪(さんだつ)の話を持ち掛けた」


 ざわざわ……と、ざわつく謁見の間。


「大方『サクラを殺す代わりに玉座に着かせてやる。その為に軍の合流を遅らせろ』みたいなことを吹き込まれたんだろ? 

 首謀者は玉座とか全く興味なく、ただ単に軍の集結を遅らせて各個撃破したかっただけ。

 適当に餌を撒いてそれに引っかかった奴を利用し尽くした上で共倒れさせつもりだったんだよ。

 なんせ、首謀者の目的はこの国全てを破壊し尽くすことだからな」


 レイクリウスの説明に聞いていた謁見の間全員が息を飲む。


「ついでに此方が、貴方が今までして来た犯罪の証拠です」


 どさりとユミルが隣の兵士に持ってきてもらっていた書類を受け取り、どさりとデップル伯の前にたたきつける。


「支援物資の横領に、魔物襲撃の際自分だけ領地から逃走、更には徴兵した兵士への不当な扱いに禁止されている奴隷商人との闇取引……一体どれだけ罪を重ねるおつもりですか?」


 絶対零度の表情で笑みを浮かべるユミル。


「因みに、邪竜関係以外の犯罪の立証と証拠は此方に居るユミル嬢が行ったものだ」


 レイクリウスの補足説明に驚く謁見の間の官吏達。


「最早そなたが罪を犯したことに疑いの余地はない。引っ立てい!」


 国王の命で謁見の間を後にするデップル伯。ごほんと咳払いする国王。


「さて、レイクリウス。そしてサクラにアルバス。此度の邪竜復活及びその討伐、見事であった」

「お褒め頂き光栄です」

「うむ。さて、レイクリウスよ。そなたから何か頼みがあるとか」

「はい、陛下」


 すっと跪くレイクリウス。


「嘗て私は〝勇者〟であることに耐えられず、自由を邪竜討伐の際に求めました」

「うむ。そうだな」

「しかし、その褒美を撤回し、今一度私をこの国で働かせて頂きたいのです」


 どよめく謁見の間。サクラもまた目が点になる。


(な、なんで⁉)

「良いのか? そなたが戻れば、再び勇者を求めて各戦場から救援要請がひっきりなしに出るだろう」

「覚悟の上です。代わりに――」


 ちらりと横にいるユミルに視線を移す。


「此方にいるユミル嬢。彼女を官吏として国で雇って頂きたいのです」

「なんと!」


 いきなりの発言に謁見の間が再びどよめく。そこに大臣の一人が声を上げる。


「お待ちください。確かにデップルの犯罪を見つけ出したことから能力はあるようですが……しかし平民産まれで、尚且つ女性の何処の馬の骨とも知らない輩を王宮に官吏として取り立てるのは……」

「自分が彼女の身を保障します」


 そこに声を上げたのは、アルバス。


「彼女は私の……幼馴染です。幼い頃より勉学に通じ、また平民で女性だからと諦めていましたが……官吏になりたいと常日ごろから申しておりました。

 どうか彼女を取り立てて下さいますよう私からも伏してお願い申し上げます」


 誠実なアルバスの頼み。それに国王はじっとアルバスを見つめ……ふっと笑う。


「可愛い娘にして国の聖女を護った〝聖騎士〟と〝勇者〟の頼みだ。無碍には出来んな」

「では!」

「ユミル嬢を取り合えず暫定的な処置としてサクラ付きの従者兼官吏とする。働き次第で他の部署に異動も出来よう」

「……ありがとう、ございます」

「では、これにて謁見を終了とする!」


 


   ◇   ◇   ◇




「何が起きているのじゃ……」


 謁見の間を後にした四人。サクラの自室に取り合えず集まったが当のサクラは目を白黒するのみ。

 そこに、


「皆、折角のもう一度の人生が送れるというのなら、未練や後悔したことをやり尽くそうって話になったんだよ」


 レイクリウスが紅茶の入ったカップをサクラに私ながらそう説明する。

 即ち、レイクリウスは『今度は勇者として歩む人生』、アルバスは『ユミルを突き放すのではなく一緒に歩む人生』、ユミルは『アルバスを信じて一緒に生きる人生』を送ろうと決めた。


「そんな、私は……!」

「前にも言ったはずです。僕は弱いから、サクラ様から目を離して、無かったことにして歩いて行けないと」


 笑いかけるアルバス。


「それでユミルとレイクリウス様に話したら……なら今度は皆一緒に頑張ってみようという話になりまして」

「皆、一緒に……」

「はい。それで取り合えずユミルを官吏にするには手っ取り早く手柄がいるということになり……悪名高いデップル伯の証拠を確保しに行ってたんです。ちょっと時間がかかった上に邪竜や初代勇者が来たのは驚きましたけども」

「まあ、の……」

(恐らく、邪竜復活……というか初代勇者ヴェルスが動いたのは、アルバスが居なくなったせいじゃな……〝聖女〟だけなら勝てるが、〝聖騎士〟という英雄によって軍を動かされては勝てないと踏んで、それで前の世界では動かなかったのじゃな) 


 そんな風に推測するサクラ。


「サクラ様」

「ユミル、殿」


 スッと跪くユミル。それに驚くサクラ。


「サクラ様に感謝します。私は……前の世界では、アルバスの日記を見るまで何も知らないままでした。そのままでいたら、きっと後悔すら出来なかったでしょう」

「ユミル……殿……」

「アルバスと話して、どれだサクラ様とアルバスが、私達の為に動いてくれていたのか分かりました。だから……」


 そっとサクラのを握るユミル。


「今度は、私も一緒にいます。どれだけ役に立てるか分からないけど、それでも〝聖女〟や〝勇者〟〝聖騎士〟なんて英雄が必要なくなるように、誰しもが自分で独り立ち出来るように、します。だから……」


 ニコリと笑顔を向ける。


「私にも、手伝わせてください!」


 満面の笑みを浮かべるユミルに、サクラは……ゆっくりと微笑み、首を縦に振った。

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