48. ループ編 ⑨ 堕ちた勇者、その最期
聖剣の一撃でもうもうと粉塵が舞う。
「ガ、ア……」
次第に晴れて行き……邪竜がその大半の肉を抉られ血に伏すのがまず見えた。
『おお!』
歓声に沸き立つ兵士達。
「「………………」」
しかしレイクリウスとサクラはもう一方に注視する。即ち、
「………………」
「……ふん」
粉塵が収まった時、そこには睨み合うアルバスとヴェルスの姿。
「………………」
「……嗚呼、憎たらしい男だ」
アルバスの目と鼻の先にはヴェルスの持つ魔剣の切っ先。そして、
「悔しいが――俺の、負けか」
ヴェルスの腹に突き刺さる、アルバスのハルバードの槍部分。
「まさか、堕ちたとは言え勇者の俺が……聖剣も持たない〝聖女〟でもない兵士にやられるとはな」
「そのおごりが、貴方を敗北に導いた」
淡々とアルバスは語る。
「勇者、聖女。そんな特別な人だからこそ人は頼る。それが貴方の持論。
だけど、何時の間にかあなた自身が変わってしまった。
勇者、聖女。そんな特別な人でなければ、取るに足りない存在と侮った。何時の間にか、貴方が嫌悪する相手と、貴方自身が同じ思考に陥っていた。
僕や兵士達を侮り見落とした結果。それが貴方の敗因に繋がった」
「……そういう……こと、か……」
クッと皮肉気に、しかし満足げに笑うと……ヴェルスはゆっくりと地面へと倒れる。
「あ……」
どさりと倒れるヴェルス。同時に身体が黒い霞となって消えていく。
「身体、が……」
「……元々、聖剣の力を利用して、無理矢理繋ぎ止めていたからな……まあ、こうなるか……」
淡々と呟くヴェルス。
「………………」
そこにサクラが近付き……ヴェルスの身体を抱き寄せ、そっと頭を膝に乗せて膝枕する。
「……なんの、つもりだ?」
「……きっと、初代聖女の『サクラ』様なら……そなたをこんな風にしてあげると、思ったからじゃ」
「ふん……知った風な口を……」
苦々し気に嗤うヴェルス。
「……まさか、俺があの方と同じ『サクラ』の名を冠する子孫の女に、膝枕されて見送られるとはな……」
「……そんな巡り合わせも、あろう」
穏やかに、そしてどこか寂しげに告げるサクラ。そして、
「ぁ……」
ゆっくりと、ヴェルスの身体は塵となって……虚空へと溶け消えて行った。
パサリ、とヴェルスの身体が消えると同時に紙の束が残される。
「これは……」
レイクリウスが手に取りその中身を確認する。
「っこれ……!」
「使えそうですね」
横から覗き込んでいたアルバスの鋭い声。と、
ひょい。
「んな⁉」
「皆! 済まない! 俺達は一足早く陛下に報告することがあって、先に王都へ行く!」
そう宣言するとレイクリウスはサクラを近くに居た馬に乗せて自分もその馬に跨る。
「行くぞ、アルバス!」
「はい!」
アルバスもまた馬に跨り――同時に駆けていく。
「っちょ⁉」
「黙っていろ。舌を噛むぞ」
レイクリウスの声がサクラの鼓膜を打つ。そのまま三人は猛スピードで王都へと帰っていった。
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