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46. ループ編 ⑦ 〝聖女〟〝勇者〟は言葉を持たず――しかし〝聖騎士〟だけは否定する

「初代……勇、者……⁉」


 ぎょっと顔色を変えるサクラ。


「そうだよ? 聖剣の力を使い、肉体の時を止め‥‥ずっと研究していたからね。『サクラ』様を救う手段を。彼女を元の世界に帰す手段を。ずっと……」

 

 暗い笑みを浮かべるヴェルス。


「夢見神ソーニョの力を使い、神官共が異世界より呼び出した〝聖女〟『サクラ』様。彼女を護り、元居た世界に帰そうと俺は奮闘した」


 ぼそりと呟くヴェルス。


「なのに」


 ダン!


「なのになのになのになのに! この国の連中は何も変わりやしなかった!」


 地団太を踏む。その度に音が鳴りサクラ達を威嚇する。


「誰かに頼ってばかりの連中! 足を引っ張ってばかりの連中! 英雄を求め、その英雄に依存し、決して自分の手を汚さない愚か者達とその子孫!」


 ぐっと押し黙るサクラとレイクリウス。


「お前達は俺だ! 同じなんだ! 頼ってばかりの連中だから、だから嫌になったろう⁉ そんな人生に友を巻き込みたくなかったろう⁉ こんな国なんて、いっそ滅びればいいと思ったろう⁉」


 ヴェルスの叫びに、サクラとレイクリウスは返す言葉はない。

 そう――ヴェルスの言う通りなのだ。前の世界で、レイクリウスは頼られ、頼られ過ぎて、嫌になり〝勇者〟を辞めた。サクラもまた、頼り過ぎる国民達を変える為に自身だけでなくアルバスの人生も犠牲にする羽目になった。そんな二人は、初代勇者の叫びを前にして何も言い返す言葉を持てなかった。




 もしも。

 もしも初代勇者を前に何か言えるとすれば――一人しかいなかった。

 〝勇者〟〝聖女〟と並び立つ最後の英雄。何の特別な力も持たず、その産まれも平民でしかないながらも、〝聖女〟の傍に最期まで寄り添った者。


「くだらないこと、言うんですね」


 〝聖騎士〟だけは、否定した。


「同じじゃない。貴方はこの国を壊したい。僕等はこの国を変えたい」


 一歩、踏み出すアルバス。


「貴方のようにこの国を壊そうとしても、また何処かで初代聖女様のように英雄召喚が繰り返されるだけ。

 それが分からないはずがない」


 ゾクリとする程、無表情で鋭い目つきとなるアルバス。


「貴方は、ただの感情論で、この国に、いや……何も出来なかった自分に復讐しているだけだ‼」


 アルバスの怒気。しかしヴェルスも引き下がらない。


「だから?」

「僕は知っている。名も知らない、助けを求める人を無視出来ない人を知っている。自分ではない誰かの為に、傷付いた身でそれでもと立ち上がる人を知っている」

(ぁ……)


 ハッと目を見開き、サクラは思わずアルバスに顔を向けた。


「僕もそう在りたい。だから――貴方を倒します!」


 ハルバードを構えるアルバス。


「っ屑の人間風情が! 〝勇者〟でも〝聖女〟でもない奴に倒せると思うなよ!」

「元より承知の上。この身に〝勇者〟のように聖剣はなく、神官達みたく神の声も聞けず、ましてや〝聖女〟のような力も無い。

 だけど、だからと言って何もしない理由にはならない!」


 アルバスの叫びを皮切りに、レイクリウスもまた剣を構え、サクラもまた魔術の準備に移る。


「ならば――口先だけではないと証明してみせろ、〝聖騎士〟よ!」


 ヴェルスの雄叫びと共に――アルバスとレイクリウスの二人が堕ちた勇者へと、駆けて行った。

 アルバスの言う「無視出来ない人」は、当然サクラのことです。

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