44. ループ編 ⑥ 正体――復讐の権利持ちし者――
「〝聖騎士〟とやらのお出ましか。まさか土壇場で帰って来るとはね。この国に全て奪われた馬鹿な男だと思っていたのに」
「サクラ様だけに、全てを押し付けるなんて出来ませんよ」
睨み合う両者。
「だが――頭は良くないようだ。まさか一人で俺と邪竜両方倒せるなんて考えていないだろう?」
「っアルバス、あやつの言う通りじゃ。そなただけでも此処は逃げ――」
「一人ではありません」
サクラの言葉を遮って、アルバスはハルバードの柄の部分で地面を打つ。
「聞け! この戦場に集いしプロスペリタース国が精鋭達よ!
〝聖女〟様が一人であらせられるぞ! 今一度国に、自分自身に誓った誇りを思い出せ! 命をかけ、国を護るのだ!」
アルバスの声が戦場に響く。しかしフードの男は嘲笑う。そんなものに何の意味があるとアルバスの言葉を馬鹿にする。
しかし、
「恐れることはない! 我等には――」
ニッと不敵にフードの男に笑い返す。同時にフードの男の表情が強張る。
「――〝勇者〟も、付いている!」
アルバスの言葉と共に、
「全てを貫け、デュランダル!」
旭光が、戦場に迸った。
◇ ◇ ◇
「ぁ……」
声が震えるサクラ。その目の前で、一人の男が歩いて来る。
「待たせて、すまない」
聖剣の使い手。誰からも頼りにされ、だからこそ全てに絶望し、その肩書を失くすことを選んだ男。
サクラの、初恋の相手。
「レイ……クリウス……」
聖剣を携え、銀の鎧姿で歩いて来る彼をサクラは両の眼で食い入るように見つめる。
「『〝勇者〟っていうのがどういうものかよく分かっていない』」
「ぁ……」
「『でも、出来ることをしていこうと思う。だから、サクラ、どうしていけばいいか、教えて行って欲しい』」
「レイ、クリウス……様」
歩きながら懐かしむように朗読するレイクリウス。
「最初会った時、こんな感じだったな。サクラ」
「は……い」
罰が悪そうに笑うレイクリウス。
「すまない。遅れに遅れたが‥‥今からでも、間に合うだろうか? 一度〝勇者〟から逃げた俺でも、君の隣に、立ってもいいだろうか?」
一度は役目から逃げたレイクリウス。しかし――サクラとアルバス。二人の想いを知り――そして以前の世界で勇者を止め幾年も平和を享受して出来たそれは――未練。
もしも、もしも自分が〝勇者〟とう役割から逃げなければ、という〝もしも〟の夢想。
もう、十分休んだ。だから――もう一度、〝勇者〟を再開してもいいと、そう思えた。
「はい」
気付けば、サクラはレイクリウスに歩み寄っていた。
「……ありがとう」
笑うレイクリウス。それを微笑ましく見るアルバス。
「では……戦うとしようか」
サクラを背に、前に出るレイクリウスとアルバス。〝勇者〟と〝聖騎士〟、そして〝聖女〟が戦場に揃う。
「く、くく……勇者までもか」
しかしフードの男はひるまない。旭光の一撃を受けながらも、土煙が舞う中何事も無かったかのように現れる。それどころか、皮肉気に嗤ってみせる。
「勇者……勇者……愚かな勇者。勇者なんて、馬鹿しかしないのにね」
「……随分とおしゃべりだな」
「そりゃあねえ?」
「……理由が知りたいのお。そなた、一体何者じゃ? 〝聖女〟と〝勇者〟……この二つに、特に何か思淹れがある様に見えるが?」
サクラの問いに「はははははは!」と薄く嗤う。
「そうだよ? だって……」
そして――男は、フードを取る。
「だって――僕は始まりの勇者。異世界召喚でこの世界呼ばれた初代聖女『サクラ』様と共に当時の邪竜を退けた勇者」
黒髪が広がり、紅の瞳が現れる。
「我が名はヴェルス=プロスペリタース。この卑怯者の国、プロスペリタース国の初代勇者にしてそこの聖女サクラの先祖なのだから」
薄い、三日月の笑みがヴェルスの口に昇った。
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