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43. ループ編 ⑤ 彼にとって、弱さは強さ

 兵士達が逃げ惑う。我先にと押し合いへし合いして逃げていく。

 それを追いかけるのは狼の姿をした魔物。するどい牙に爪で、逃げる兵士達を襲い掛かる。


「う、うわああああああああ⁉」


 一人の若い兵士が魔物にとびかかられて転倒する。そのまま魔物は兵士の首に牙を突き立てようとし――

 

「……あ、れ?」


 ――逆に魔物の首が空を舞う。同時に、


「体勢を立て直して。落ち着いたら、サクラ様の下に戻って」


 優しい青年の声が鼓膜を打つ。


「ぁ……あなた、は」

「先に行くね」


 そういうと馬に跨った青年はハルバードを手に駆けていく。





「おとなしく、死んでもらうとしようか」

「……お前が、私達四人を過去に飛ばした……のか?」


 サクラの強張った声で問いかける。しかし、


「? 何? 何のこと? 気でも狂った?」

(その口ぶりでは……違うということか)


 睨みつけるサクラ。では誰が過去に戻したのか? 疑問が出て来るが……それを気にすることももう出来そうに無い。


「じゃあ――罪人には相応しい、死を」


 トンとフードの男が跳ぶ。サクラには反応も出来ない速度。翻る白刃。


(ここまで、か)


 覚悟を決めるサクラ。しょうがない。やはりアルバス無しでは、自分一人では――どうにもならなかった。


(だが、それでいい)


 そう。だってそれこそ――


(アルバスが、それだけ優秀だったという証明なのだから)


 嗤い、白刃が迫るのを瞳に焼き付け――




「痴れ者が!」




 突如ローブの男が弾き飛ばされる。


「――え?」


 驚くサクラの目の前で、トンと馬が着地する。そして、


「遅れて申し訳ありません、〝聖女〟サクラ様」


 幾度も聞いた声。誰よりも信頼する声。共に戦場を駆けた相手。


「――そなた」


 馬から降りた彼は此方を振り返り、ニッコリと笑顔を向ける。


「〝聖騎士〟アルバス、ただいま参上仕りました」


 どうして……。


「どうして、来たのじゃ……」


 貴方を救いたかったのに。一度は私のせいで全てを差し出す羽目になった貴方を、今度こそ救いたかったのに。


「どうして……また、戦場に……」


 サクラの言葉にアルバスは笑って返す。


「サクラ様を置いていくほど、僕は強くないからです」


 告げられた言葉に涙が零れた。

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