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39. ループ編 ② 「僕何にも知らされていないのですが⁉」とアルバスは頭を抱えた

 国主催の夜に行われる『邪竜』討伐祝賀会。以前と同じ建物、同じドレス、同じ人、同じパーティー。

 違うのは、四人に以前の世界の記憶があるかどうか。


「アルバス……」

「ユミル……」


 互いに名を呼び。見つめ合う。


「「………………」」


 その横で、サクラとレイクリウス。二人が強張った表情で二人を見、ついでサクラはレイクリウスを、レイクリウスはサクラに視線を移す。


(ユミル嬢はレイクリウスにも話したとみるべきか。好都合じゃの)

「レイクリウス様、ユミル様。本日はこの祝賀会に参加して頂き、感謝申し上げ……」

「アルバス、話があるの」


 サクラの型通りの挨拶を遮って、ユミルの声が響く。


「ぁ……ゆ、ミル。今は……その、サクラ様が……」


 口が引きつりながらも取り合えずフォローする。


「ぁ……ご、ごめんなさい。私……私っ……!」


 ぎゅっとドレスの裾を握り締める。その指には鈍く輝く決して効果と言えない指輪。


(あ……)

「いやすまない。ユミル嬢はこのようなパーティーには初めてでいらっしゃったな。人に酔ってしまったのだろう。どれ、一つ休ませてあげようかの。すまんな客人方。来て早々だが少々失礼する。何、私はすぐに戻るのでな?」

「っサクラさ、ま⁉」


 早口でいきなりまくしたてるサクラ。驚くアルバスだがそのサクラに腕を捕まれぐんぐんと早歩きで連れて行かれる。


「あ、あの、サクラ様……!」


 もう片方の手は同じくユミルの手を握りしめ、その後をレイクリウスが続く。周りの貴族達も驚き反応する前に四人が扉から出て行くのをぽかんと見送る。

 部屋から出るとサクラは気にする必要がなくなったので早歩きを本気の走りに変える。 


「ちょちょちょちょ、サクラさ、ぶ⁉」

 

 扉を開けて人気のない部屋に入ると何か言おうとしたアルバスに向かってばさりと布を放り投げる。


「急いでそれに着替えよ。ユミル嬢もレイクリウスもじゃ」

「え、ええ?」

「俺、も?」

「い・い・か・ら!」


 驚く三人を目力で脅し着替えさせる。


「着替えました、けど……」

「よし。アルバス、レイクリウス。裏口は開けておいたし馬車も用意した。馬車の中に武器と鎧に当座の金と着替え、キャンプ道具に水と食料もある。三人で馬車に乗って暫く身を隠せ」

「え、ええ!?」


 サクラの言葉に驚く三人。アルバスは自分が何故レイクリウスとユミルと一緒に着替えさせられたのかを理解し、次いで告げられた言葉に驚いた。


「身を隠せって……サクラ様⁉」

「此処は、この国は私に任せ、アルバスは今度こそ真実をユミル嬢に自分の口で伝えよ。後のことは私が一人でやる」

「そん、な……ってか真実って⁉」

「っアルバス、私知ったの! 前の世界で! 貴方が私の為に婚約破棄したって!」

「はああああああああああああああああ⁉」


 驚き百面相するアルバス。興奮した様子のユミル。それに困惑した様子のレイクリウス。


「サクラ、お前……」

「二人を頼みます、レイクリウス様」


 そう言ってサクラは扉を開けて外を伺う。


「よし。見張りはおらん。行け、三人とも。馬車まで走って、ほとぼりが冷めるまで身を隠すのじゃ」

「っサク……」

「良いからいけ! レイクリウス!」

「分かった」


 ガシっとアルバスとユミルの身体が抱きしめられる。


(え?)


 見るとレイクリウスに両脇に抱えられていた。


「走るぞ」

「え、いや、ま、あああああああああああああああ⁉」


 レイクリウスの宣言通り、ユミルとアルバス、二人を両脇に抱えたまま猛ダッシュ。そのまま階段を降り裏口を出て用意されている馬車に飛び乗る。


「っレイクリウス様!」

「行くぞ! サクラの命令だ!」

「っサクラ様……!」


 馬車が駆け出す。四角い箱の馬車の客室の窓から上層階のバルコニーにいるサクラが笑顔で手を振る。


(僕、は……!)

「アル、バス……」

「ユミル……」


 名を呼ばれ振り返れば幼馴染で元婚約者のユミルの強張った表情。

 馬車はそのまま駆けて行き……王都から去って行った。

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