38. ループ編 ① 確認、報告、そして――再会
「なん、で……これ……」
呆然と鏡の前で狼狽えるレイクリウス。年老いてなくなったはずなのに、今の自分はユミルと出会ったくらいになっていた。いや、というよりも……
(これって……)
部屋の中にあるチケット、その日付を見て困惑する。ついで自分の部屋のカレンダーを見て……察する。
「まさか……本当に、過去……なのか?」
そんなまさか。呆然とするレイクリウス。そこに、
「っレイ!」
扉が開かれてそこから見知った顔の女性が飛び出してくる。
「ユ、ミル……」
自分の知る彼女よりもどう考えても若い彼女を見、ついで様子の可笑しい彼女を見て察する。
「あの、私、亡くなって……! でも、でもなんか目が覚めたら王都のレイの屋敷で、それで飛び起きたら……!」
「ユミル、まず落ち着いて。それでこれを見て」
レイクリウスの差し出すチケットを見て、
「これって……!」
「多分……だけど。確かめよう」
カレンダーとチケットの日付を見る。
――それは、ユミルが王都に来て二日目。『邪竜』討伐祝賀会に着て行くドレスを選び、王都で評判の劇を見た日のことだった。
◇ ◇ ◇
「どうやら……過去に戻っておるな」
「なんでそんな冷静なんですか、サクラ様」
王宮の自室でサクラは挙動不審のアルバスを見て察し、部屋へと招き入れて確認。そして上記の台詞を述べたのだが……今度はアルバスがおいおいとツッコミを繰り出す。
「いや冷静に見えて結構驚いておる。なんか普通に亡くなったはずの旦那が生きておるしの」
「そんな、フランクな感じでしたっけ……?」
あれ、サクラ様ってもっと威厳あったはずなんだけど……と困惑するアルバス。
「ま、冗談は兎も角情報を整理するかの」
こほんと咳払いしてサクラは紙を取り出す。
「現状、死に戻り……というのか。ループしたのは少なくとも王宮内では私とアルバスの二人のみ。他は以前の世界(?)の記憶を有している様子はない。ついでに今記憶と書類とを確認しているが、前の世界と異なる点は確認出来ておらん」
「つまり……僕とサクラ様が過去に戻っている。現状はそういう状況な訳ですね?」
「うむ。そういうことになる」
腕を組みうーんと困惑し合う二人。
(なんで過去に戻っているの???)
「っと、すいません。今日って確か……ユミルが王都に来て二日目……レイクリウス様とドレスを選んで劇を見に行った日ですよね? 僕ちょっと二人の様子を見てきます」
「む。そうか。ついでに街の様子も見て来てくれ。他に誰か同じようにループしているものが居るかもしれん」
「分かりました」
了承するとアルバスはローブを身に纏い部屋を後にする。
「……さて」
サクラはアルバスが出て行ったのを確認すると執事と給仕を呼び出し、あることを頼む。
(どうして過去に戻ったのか、誰が戻したのか分からぬが……せっかくだ。この状況、前の世界のやり残し、やらせてもらうかの)
サクラはすでに、覚悟を決めていた。
◇ ◇ ◇
王都二日目。それはユミルがレイクリウスとドレスを選び、そして二人の仲が深まればいいなという下心と純粋に婚約破棄して申し訳ないからせめて劇とか見て楽しんで貰えればな、という申し訳なさとで用意した劇のペアチケットを使い劇を見に来るはずの日。
ユミル暗殺計画があった為自分もこっそりと二人の後を追い無事を確認した、のだが……。
(警戒している……)
レイクリウスの屋敷に行ったアルバスが見たのは、そこから慌てて馬車に乗って出かけようとしているユミルとレイクリウスの姿。急ぎ先回りして取り合えず服屋に行けばやはり二人は予想通り以前も利用した服屋に来た、のだが……。
(様子がおかしい。ドレス選びもすごい早い……)
強張った表情で服屋に行き、そのまま速攻でドレスを選ぶと馬車に飛び乗る二人。もしやと思い劇場に先回りすると、案の定劇に馬車で乗り付けた二人が周りを見回しながら劇場へと入っていくのが見えた。
(これ……やっぱりユミルとレイクリウス様も……)
不審者のごとく顔を右に左に向けて記憶と確認している様子。
(ダメだ。下手に近付いたら尾行がばれる……)
二人もループしているのは確実、とそれを確認しながら身を隠す。
(……前と同じく、ユミルを付き合わせるつもりはないからね)
二人は色々とスタッフに聞き込みし……そのまま劇を見ずに馬車へと戻って行く。
(……前回と違う行動。間違いなく二人もループしてるな。サクラ様に報告っと)
ふと売店を見て……そういえばと思い前回同様劇の原作の小説を買い、その場で速読する。
(……やっぱり、大筋を読んでいるだけだけど……内容は勿論小説の文字も覚えている限り一緒だ)
愛読書となったこの劇の小説。まさかそれが役に立つ日が来ようとは。
(とにかく、サクラ様に報告だな)
急ぎアルバスはサクラの下へと戻るっていく。
そして――数日後。
「アルバス……」
「ユミル……」
アルバスとユミルは対面した。
いよいよ佳境です。
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