33. サクラ編 完 誰よりも優しい彼と歩む未来
ガラガラと装飾された馬車が王都を駆けていく。
それに歓声を上げて王都に住まう住民達が馬車に乗る二人を祝福する。
即ち――〝聖女〟サクラと〝聖騎士〟アルバスの結婚式。
聖女として絶対の地位を有するサクラ。その婚約者ともなれば絶大な権力を手に出来る。それを阻止するべくサクラは『王位十戒』を王に認め、婚約者の親族の政治的影響力を削ぎ落しに行ったが……それでもやはり権力の為に是非自分又は子供を婚約者にと婚約を申し込む者は複数いる。
それを阻止し、尚且つ国民の信頼を堅固にする為の格好の相手となれば――平民産まれで政治的に利用する親族のいない〝聖騎士〟アルバスがもっとも適任である。
その為の婚約。国民を一つに纏める為の結婚式。
二人は馬車に乗りながら左右の民衆にそれぞれ片手を挙げて笑顔を向ける。
――それが二人の義務だから。
サクラが信仰する夢見神ソーニョの教会で新郎新婦の姿をした二人が神官の問いに誓いの言葉を述べる。
「――では、新郎新婦は夢見神ソーニョ様の下誓いのキスを」
神官に促されそっとアルバスはサクラの纏う白のウエディングベールを脱がし、
「「………………」」
二人は暫し見つめ合った後……そっと唇を交わした。
◇ ◇ ◇
式の前、サクラはアルバスに問いかけた。
『そなたこれでいいのか?』
本当の気持ちに蓋をして、その為だけに生き残ったはずの彼女を遠ざけて、徴兵によって別れさせた国に仕えるという選択。
傍から見れば馬鹿馬鹿しいと言わざるを得ない選択。
だけども。
『はい。僕はこの道を選びます』
淡く……アルバスは笑う。
『僕は、サクラ様のように強くはないんです』
『?』
どういうことかと首を傾げるサクラにアルバスは笑って説明する。
『弱いから――だからサクラ様を放っては置けないんです』
『っ私……を……?』
自分を指差すサクラ。
『貴女は……きっと誰も助けが無くても、独りになっても、それでも誰かの為に在ろうとするんでしょう。もう誰犠牲にしないように。誰かが犠牲になる前に、自分が犠牲になってでもそれを止める……それがサクラ様なのでしょう』
『っ!』
息を飲む。そんな風に自分を評価してくれていたなんて……思いもしなかった。
『僕は弱いから……サクラ様を犠牲にして、自分の幸福だけを追求するなんて出来ない。誰かを犠牲にするのを当たり前だと思えない』
『アル、バス……そなた……』
『だから』
そっとサクラの手を取るアルバス。
『一緒に、歩かせて下さい、サクラ様。貴女の隣で、例え僕独りだけだとしても、誰かの為に在ろうとする貴女を守りたい』
――ずっと、独りだと思っていた。聖剣に選ばれたレイクリウスも〝勇者〟という肩書が重荷となって自由を選び、変わらず民や貴族は自分では何かをしようとせずに助けを求めるばかり。
そんな彼等を放って置けなくて、自分は独りでも歩いて行くのだと思っていた。
だけど――彼は傍に居てくれるという。自分の本当の望みを押し隠し、自由ではなく不自由を選び、私に付いて来てくれるという。
それが、どんなに嬉しいことか。
『すまない――ありがとう』
サクラはアルバスを抱きしめた。
『一緒に、いきましょう』
アルバスもまた……サクラを抱きしめた。
………………
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そうして幾年もの月日は流れていった。
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