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31. サクラ編 ④ 聖女の決意・聖騎士の誓い

「そんな、そんなことって……!」


 漸く振り絞った言葉。しかし父は淡々と述べる。


「この国は、そういう国なのだ。自分達の利益の為なら平気で他人を嘘を吐いてでも貶め、利用する。誰かに依存し、やってもらうのを当たり前とし、自分達の手は決して汚さない。

 異世界より一人の少女を召喚し、邪竜を討伐させ、利用し尽くした挙句最後はこちら側の都合で切り捨てる。

 それが……この国がしてきたこと。そして我が王家が隠して来た事実だ」


 溜息を吐く父。


「そして、同じことが今レイクリウスにも起きている」

「っまさか⁉」

「そのまさかだ。嘗ての聖女様と同じように、誰からも求められ、戦場にひっきりなしに呼ばれる。挙句、救ってくれるのが当たり前と思い込み助けが遅れればどうして助けてくれなかったと勇者を責める。

 それが……今の、いや今なお続くこの国の病なのだよ」

「そんな……」


 ガラガラと足元が崩れるかのような感覚。どうして、彼を責められるの? 彼が勇者だから? 勇者なら、皆を救って当然なの?


「だから、サクラ。お前は異世界から呼ばれた聖女ではなく、この国の聖女として、正しくありなさい」

「お父、様……」

「誰かを犠牲にしないいけない国。誰かを犠牲にせずにはいられない国。そんなこの国を、お前と私が、変えていくのだ。いや、変えなくてはいけない。

 伝説にある聖女『サクラ』様のような犠牲を、二度と出してはいけない。それが現勇者レイクリウス君を守ることにもつながるはずだ」

「レイクリウス様を……」


 思い出す。先ほど再会した疲れ切ったレイクリウス様の姿を。最初に出会った頃の、瞳を輝かせていた彼と今との雲泥の差を。

 ぎゅっと拳を握りしめる。

 この国が彼を苦しめているというのなら。〝勇者〟の肩書が重荷であるというのなら。


「――します」

「うん?」

「私が、します。〝聖女〟も、〝勇者〟も。助けが必要というのなら、私が助けます。救って欲しいというのなら、私が救います」


 決心する。


「誰もレイクリウス様を、〝勇者〟様を助けないというのなら。私が彼を――救ってみせます」


 そう――私は、宣言したのだった。

 誰かを犠牲にする世界。誰かを犠牲にしなければ生きていけない世界。

 そんな世界だというのなら――〝聖女〟である私が犠牲になろう。

 もう、誰も悲しませない。犠牲にさせない。

 一人でも多く人を救ってみせる。

 そして……そして……。




   ◇   ◇   ◇




「犠牲ありきのこの国を、人を、国民を変える。それが私の願いにして生きる目標よ」

「サクラ、様……」


 サクラの語る話に、アルバスは知らず涙を零す。

 カチカチといやに大きく時計の針の音が木霊する。

 そして、




「なら――僕もまたサクラ様の助けとなりましょう。もう誰も、犠牲にならないように。これ以上犠牲者を増やさない為に。誰かを犠牲にしなければいけない世界を替え歌目に」

「――すまない。アルバス」


 サクラは感謝を述べ、首を一介の兵士に垂れたのだった。

 こうして〝聖女〟と〝聖騎士〟は結ばれた。

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