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24. アルバス編 ⑦ 例え人でなしと蔑まれても、彼女だけは守ってみせる

「どういう……ことなでんすか? なんでユミルが……」


 分からない。その一言に尽きる。


「なんで……なんで、ユミルが……⁉」

「理由は〝勇者〟と……そなたじゃ」


 言いにくそうに言葉を濁すサクラ様。


「ぼ、く……? それに、〝勇者〟って……」

「〝勇者〟がこの国を見捨てた。少なくとも、ユミル嬢を暗殺しようと思った馬鹿貴族連中はそう信じておるようだの」


 硬い表情でサクラ様が言葉を紡ぐ。


「〝勇者〟が国を見捨てる……それがどれほどの不安をもたらすか、分かるじゃろ?」

「そ、れは分かりますが……だからって……」


 なんでユミル? 全く話が繋がらなくない?

 全く理解出来ない僕にサクラ様がこめかみを指で抑える。


「彼奴らの狙いはお主じゃ」

「ぼ、く……?」


 言われても全く理解出来ない僕にサクラ様は苛立ちもせず淡々と説明する。


「お主は徴兵されたとはいえ今や〝聖騎士〟と言われ、〝勇者〟〝聖女〟に次ぐ知名度を有する。だがお主はずっと前から婚約者がいると言って見合いだのなんだのをさけておったろう?」

「そ、れは……」

(ま、さか……⁉)

 

 言いたいことの察しがつき知らず血の気が引く。だって、でもそんなこと、あるのか⁉


「〝勇者〟が陛下に褒美として自由をねだった。それはおそらく覆しようがない。力づくで止められる訳もない。じゃが、〝聖騎士〟なら別じゃ」

「僕、を……この国に繋ぎ止める為に……彼女が狙われたって……そう言うんですか……? 」

「そういう連中だし、そういう国なのじゃ」


 溜息を吐くサクラ様。


「この国は、そういう連中が多いのじゃ。英雄に縋り、それに頼り切る。誰かに依存し、誰かに任せきる。〝勇者〟と呼ばれたレイクリウスが嫌になって陛下に自由を褒美としてもらうのも、理解出来よう?」

「でも! だからって……⁉」


 誰に対する怒りなのかも分からない。ぐちゃぐちゃの情緒、感情、激情が渦巻く。


「安心せよ。首謀者及び暗殺に関わった連中は根こそぎ私の配下のものが一掃した。ユミル嬢に危害は加えられていない」

「それは……ありがとう、ございます………………で、も………………」


 でも、それは………………それ、は………………。




「それは………………〝今のところは〟ですよね?」


 


 僕の言葉にサクラ様は一瞬言葉に詰まり、


「………………そうじゃ」


 肯定した。




   ◇   ◇   ◇




 国は、人は、英雄を求める。

 この人なら安心だ。この人ならばより良い世界を作ってくれる。この人が言うなら間違いない。

 自分の為に全てをしてくれる人。そんな都合の良い〝英雄〟を人は求める。

 その為ならば――邪魔な人を殺してでも、作ろうとする。

 ならば……そうであるならば……




「さて、アルバス=ソレイグ。貴殿はどのような褒美を求める?」


 陛下の言葉が謁見の間に響く。それを跪いたまま僕は答える。


「はい、陛下。僕が求めるのは爵位とそれに見合った騎士団での地位です」

(せめて、ユミル……君だけは、守ってみせる)


 それが――僕の答え。

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