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20. アルバス編 ③ 取り合えず、土下座しておいた

「……あ、れ?」


 瞼を開けたら見知らぬ天井が飛び込んできた。


「何処……此処?」


 恐る恐る起き上がると、病室らしき場所でベッドに寝かされていたと分かる。ちらりと視線を移せば他にも大量のベッドが用意され無数の負傷者が寝かされ手当てを受けていた。

 そこに、


「起きたか」

「っ貴女、は……」


 意識が途切れる前に現れた、あの白い服を着た恐らくは神官であろう女性が現れる。


「楽にして欲しい。今そなたは怪我人故な」

「あ、えっと……はい」


 ベッドに腰かけ僕。その前に笑みを浮かべて立つ長い銀髪の女性。


(多分、偉いさんなんだろうな……神官服で軍を率いているであろう人物……かなりの身分、恐らくは貴族出身……かな)

「あの、申し訳ありません」

「うん?」


 僕の謝罪に首を傾げる女性。しかし僕はそれを気にせず続ける。


「砦の放棄を決めたのは、僕の一存です。勝手な判断で敵前逃亡を促してしまいました。処分を下すなら、どうか僕一人に……」

「そなたを処分するつもりは毛頭ない」


 ばっさりと、女性は言ってのける。


「え……」

「むしろあの場面では砦の放棄は順当じゃな。壊れた砦なんぞ少数で守っても仕方あるまい。むしろ、よくぞ我等が駆けつけるまで皆を鼓舞して回った。礼を言わせて欲しい」


 そう言って頭を下げる女性。


「あ、いや、えっと……その……」

「デップル伯の領土での不始末、申し訳なかった。アルバス=ソレイグ殿」

「僕の、名前……」

「調べて、知っておる。そなたが武術大会に参加し、そのままだましうち同然に徴兵され連れて来られたのも。そなたの留守中……母君が亡くなられたことも」

「っ」


 息を飲む。そこまで知られていることに驚く。


「すまなかった。謝罪させて欲しい。むろん、謝罪して受け入れてもらえるとは思っておらん。そなたには、我等を恨む権利がある」

「それは……誰が悪い、という訳ではありませんから……」


 そっと目を伏せる。そう、誰が悪いという訳でもない。巡り合わせが悪かったのだ。武術大会の最中に魔物の群れが侵攻し、王都に迫る等普通は考えもつかない。

 それに、


「悪いと思うなら……せめて死んでいった者達の供養と家族への恩賞、それと負傷した徴兵された兵士達の可能な限りの支援をお願いしたいです」

「ほお……そなたは自分だけでなく他人のことを思えるのだな」

「そんな……僕は……」


 感心する女性に自嘲し皮肉な笑みを浮かべてしまう。


「僕は……弱いから……強くさえあれば、死んでいった者達も救えると……そんな風に考えてしまうだけですよ……」


 そう。どうしてもそんな風に考えてしまう。

 倒れて行った仲間達。泣き叫び、親しい者の名を叫び散っていった戦友達を思うと……自分一人だけが、とは考えられない。ただそれだけのこと。


「他の生き残った兵士達からも事情を聴いておる。そなた、なかなかに役立ちそうな男よな。徴兵された身ではあるが、少しの間私達に力を貸してはくれぬか?」

「? それは……はい。徴兵された身ですので、力はお貸ししますが……」

「では、そのようにとり図ろう。今よりそなたは私の直々の配下とし、そのように手配しよう」

「は、はあ……それは構いませんが……貴女は、一体……?」

「? 私、か? ああ成程、知らなかったのか。何とも新鮮な気分じゃ。いいじゃろ、私は……」


 いったん区切り、クスッと悪戯っ子のような笑みを浮かべ、女性は名乗りを上げた。




「我が名はサクラ。サクラ=プロスペリタース。この国の第一王女にして〝聖女〟の称号を授かった者よ」




「……へ?」


 思わず、間の抜けた声を出してしまった。

 それが僕アルバスと〝聖女〟サクラ様との出会いだった。

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