15. レイクリウス編 ② 勇者でなくなった自分
飽きることなく戦い続け、尽きることのない魔物の命を奪い続ける。そんな毎日。
そんなある日、王都で武術大会が行われていた最中に、事件は起こった。
王都に向けて魔物の大群が押し寄せているとの一報が入った。すぐさま武術大会は中止、挙句武術大会に集まった腕自慢達は軒並み徴兵されて王都に向かって来る魔物の群れとの戦いに駆り出された。
そんな戦いの中で、ある報告が入った。即ち、魔物の群れの長『邪竜』の発見である。
『邪竜』。魔物の中でも取り分け強力な能力を有するドラゴン。その中でも強力な力を有する『邪竜』の確認。これに国は大騒動となり、収拾をつけるべく国王陛下はあるお触れを出した。
曰く、『邪竜討伐に貢献した者には国王の力を以て可能な限りの恩賞を与える』というもの。
これだと、思った。千載一遇のチャンス。全てを終わらせる最後の機会。
『退くな、行くぞぉおおおおおおおお!』
兵士達を鼓舞し、空飛ぶ黒き竜『邪竜』と刃を交える。炎は吹き荒れ、人は虫けらのように弾き飛ばされ、無数の悲鳴が交差する。
だけど、退くことは出来なかった。これしか俺の道はなかった。
『進めぇえええええええええええ!』
そして――俺は、俺達は……。
『ガァアアアアアアアアアアアアアアアア⁉』
邪竜を、討伐した。
◇ ◇ ◇
そして、謁見の間にて。
『俺が求める恩賞は〝自由〟です』
ざわつき、色めき立つ謁見の間に集った貴族達。その中に俺の両親も居たように思うが……特に気にはしない。
『自由……というと……?』
困惑した様子の陛下に俺は言葉を重ねる。
『自分は〝勇者〟として十分にこの国に、国民に尽くしたと思います。だから……もう勇者を安易に戦場に呼ばないで欲しい。助けに来るのが遅いと恨んで欲しくない。勇者だからと全てが出来ると思わないで欲しい。そして、』
一拍置き、言葉を絞り出す。
『もう……〝勇者〟を必要として欲しくない。それだけです』
そう言い放つ。
ざわめきが濃くなり陛下が片手を挙げて制止する。
『……取り合えず、今日のところはレイクリウスは下がるが良い』
『御意』
一礼し、謁見の間を足早に去る。
『ぁ……』
『………………』
途中、確か徴兵された中でも出来るとサクラが言っていた〝聖騎士〟と評されるアルバスとかいう奴と、その〝聖女〟サクラと目が合った。アルバスはぎょっと顔色を他の面々同様変えていたが、サクラはただ無表情。
『………………』
同じく俺も無表情のまま、謁見の間を去った。
後日、俺の恩賞は認められ、〝勇者〟は必要とされなくなった。
◇ ◇ ◇
全て解放された俺。だけども、それは同時にあることを痛感させられることとなった。
『俺は……〝勇者〟としてしか、見てもらえなかったんだな』
両親は〝勇者〟でなくなれば金はどうなると騒ぎ、軍部は俺の発言で未だ魔物との戦いが続く戦場がさらに混迷を極めることとなりその対応に追われる。一般市民にも俺の発言が漏れて不安から暴動が起きた所もあると聞く。
それでも。
『それでも……俺は……俺なんだ』
ベッドの上で仰向けになりながら、ポツリと呟かれた言葉は虚空へと溶け消えた。
そんなある日。サクラから『頼み事』の手紙をもらった。
『? 仕事? それも……要人警護?』
ある村に居る女性を、王都に連れてきて欲しいというものだった。
『なんで、サクラは俺を……』
そんな疑問を感じながらも、いかに〝自由〟をお陛下にねだった身だとしても王女の指令を無下にする訳にも行かず、馬車で迎えに行くことになった。
(どういうつもりなんだ、サクラの奴……)
そんな風に思いながら、久しぶりに馬車を駆った。
そして……
◇ ◇ ◇
「そして、君に出会ったんだ」
レイクリウスの言葉にユミルは目を丸くした。
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