11. ユミル編 ⑩ 幼馴染 兼 聖騎士 兼 元婚約者との再会(激重)
「此度、邪竜を討伐を無事終えれたことを嬉しく思う」
そっとアーチ状の階段の途中の踊り場で一度立ち止まり、すっと片手を挙げると言葉を述べる〝聖女〟サクラ。
「邪竜討伐は我が国の平穏を守る為には避けては通れぬ道。その道を見事渡り切れたことを祝うべく、此度の祝賀会を開いた」
誰も彼もが直立し、サクラの言葉に耳を傾ける。
「既に邪竜討伐の方は知れ渡り、それを祝う社交界も幾度も開かれてはいるが……此度が初めてという者も居る筈。どうか皆楽しんでいってもらえると嬉しい」
ふっと微笑みかける桜。しかしその笑みにすらも何処か凄みを感じさせ……見ている者全てを魅了する。
(これが、〝聖女〟サクラ様……)
すっと何時の間にか近付いていた執事らしき人がお盆の載せて持ってきたグラスをそっと手に取るサクラ。同時に何時の間にか傍に居たウェイターからグラスを渡され慌てて受け取るユミル。見れば他の貴族達も配られていくグラスを粛々と受け取っていく。
「それでは……我が国、プロスペリタース国の更なる繁栄を願って――乾杯!」
「「「乾杯‼」」」
高々と掲げられるグラス。ユミルも見様見真似で掲げ、一応グラスに口をつける。
(あ、良かった。ジュースだ)
渡された中身がアルコールなのか分かっていなかったのでほっと一安心するユミル。飲み干したグラスをウェイターに渡す。と、
「では、皆この祝賀会を楽しんで貰いたい」
サクラの言葉と共に音楽が奏でられ、本格的にパーティーが始まる。同時に人が雪崩を打ってサクラの下へと集まって我先にと挨拶を交わす。
(……私も、行かなきゃ)
そっと重たい足を二人へと向ける。と、
「おや。かわいらしいお嬢さんだ」
「っ!」
突如ねっとりとした声をかけられると共に前に立ち塞がる人影。
「おやおや、奇麗なお嬢様。一体どちらの方かな? んん?」
にやりとどこか下品な笑みを浮かべた小太りの貴族らしき男性。どう考えてもユミルの二倍どこから下手すれば三倍は年を取っているであろう男は、いやにキラキラとした宝飾品を身体に身に纏ってユミルに近付いてきた。
(な、何⁉ というかどちら様⁉)
「え、えっと……」
「おやおや。怖がらせましたかな? ふむう、いやいや私怪しいものではありません。おおっと、自己紹介がまだでしたかな。私、デップルと申します。こう見えて伯爵位を預からせて頂いておりましてな」
「は、伯爵様であらせられるんですね……」
ふふんと自信満々な男性にたじたじになるユミル。
「ええ、奇麗なお嬢さん。どうですかな? このような退屈なパーティーよりも、私と未来を見通したおしゃべりでも……」
「失礼ながら」
どう断ったものかと固まるユミルの身体が急に引き寄せられた。
「彼女は私の連れでしてね。今からサクラに挨拶しないといけない為失礼させて頂きます」
そう言ってそっとユミルの腰を掴むのは、
「レイクリウス、さん……」
「やあユミル。すまなかったね。急いで挨拶に行こう。では、デップル伯。失礼致します」
「こ、これは、勇者さ……いや、う……む……」
突然の勇者の登場に動揺するユミルと貴族。それを見逃さず素早くユミルと共にサクラの方へと歩いて行くレイクリウス。
「す、すいませんレイクリウスさん……」
「いや、御待たせて俺の方こそ申し訳なかった。あのデップルとかいうのは俺でも聞いたことがあるダメ貴族でな。能力がないわりに権力を欲して、それで邪竜討伐で活躍して勢いのある俺やサクラが疎ましいのさ。まあ俺が地位は要らないと言ったらすぐに掌を返してぜひ自分の領土にって言って来るような拙僧なしだが」
(大変なんだなあ……)
思わず同情するユミル。しかしそれもいざ二人との顔見世の順番が近付くにつれてそれどころではなくなった。
(どうしよう。何を話せば……いや、なんて挨拶をすれば……)
「大丈夫。俺がいるさ」
緊張するユミルだが、片方の手で未だ中身の入ったグラスを手に笑いかけるレイクリウスがその緊張を和らげる。
「リラックスして。言いたいことを言えば良いさ」
「……はい」
そして。
「レイクリウス=グランド―ル。〝聖女〟サクラにご挨拶述べる」
「……うむ」
厳かな女性の声が響く。
「よくぞ来てくれた。〝勇者〟殿」
流れるような銀髪が映える美女。この国の王女にして〝聖女〟の名を授かりし神官。サクラ=プロスペリタース。
そして、
「――ユミル」
「アル、バス」
互いに視線を交差し合い、決して逸らすことない一組の男女。即ち、
「来てくれて、ありがとう」
黒髪の青年〝聖騎士〟アルバス=ソレイグと、
「うん……来たよ」
その元婚約者、ユミル=ポートレムであった。
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