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四話、進む侵食

〔ミルズの街〕


ミルズの街でシーナはアイギスと落ち合っていた。


「あはっやっぱり来てくれた、良いのぉ?私あなたの敵だよぉ?」


アイギスはクスクスと笑いつつシーナに近付いてくる。


「くっ…」


シーナは分かっているアイギスに会いに来るべきではないと魔堕石もアスナに渡して破壊して貰うべきだと。


(分かってる…分かってるけど…私は…あの快感が忘れられない…)


シーナと言う女性は幼い頃は神童と呼ばれた少女であった。


そんな優れた少女は幼いアスナと言う本物の天才に出会いこんな凄い子がいるんだと驚いた。


シーナにとって前のアスナも今のアスナも自分とは違う世界にいる存在だと思っており嫉妬の対象ではない。


シーナがどうしても自分と比べてしまうのは同じ人型の生物であるのに自分よりも高い才能と戦闘能力を持つララティアやセツナやアンジーと言う存在である。


シーナも最初は彼女達に負けないくらい頑張って凄いアスナを支えようと思っていた。


しかしどれだけ頑張ってもアンジー達に追い付けず挙げ句の果てにはこの前の怪我だ。


シーナの心はあの日完全に折れ自分がどれだけ頑張っても意味はないと考えるようになってしまったのである。


(だけど…私にはこれがある-これがあれば私だって凄いアスナみたいに慣れるのよ!)


シーナはそう言ってポケットから取り出した魔堕石を握りしめる。


そうしてある間にも魔堕石はシーナを侵食して行っていることに気付かずに。


「良いわ…私はもっとこの力を使いたいの…」


「ふふっ」


(順調に染まってるね、このまま行けば自分から魔堕石を身体に取り込んで魔怪人になってくれるでしょう)


アイギスは自分の計画が上手く行っている事に心の中でほくそ笑んだ。


きっと魔怪人なったシーナはアスナ達を苦しめ自分を楽しませてくれる筈だと思って。


「行こっ?シーナ、今日も殺して良いクズ共を見つけておいたからさ、いっぱい楽しんで殺そうよ」


「ええ…そうね…クズなんてだけだけ殺しても構わないのよ…」


シーナは虚ろな瞳になるとアイギスと共にマフィアのアジトに正面から入る。


「うふふ、私が来てあげたわ?クズ共、しっかりと皆殺しにしてあげるからね?」


シーナは邪悪な笑みを浮かべると銃を取り出し次々と撃ち抜いて行く。


「ひっ!!」


そうしているうちに怯える女が現れた。


マフィアに捕らえられていた被害者で何の罪もない者である。


「…あなたあのクズ共と同じ臭いがするわね?」


魔堕石の侵食が進んでいるシーナには人間のフェロモンを嗅ぎ取る能力が備わっていた。


そのため女の中にある男の臭いを嗅ぎ付けたのである。


「じゃあお前もクズだわ」


シーナはこんな事はしてはいけないと震える手で女に銃口を向ける。


心の中では分かっているのだ彼女は被害者で殺すべきではないと。


しかし侵食されている心は目の前の女も殺したがっている。


「どうしたの?シーナ?殺さないの?」


「わ、たしは…」


「気持ち良くなりたくないの?殺せばきっと凄く気持ち良くなれるよ?ほら?トリガーを弾いて殺しちゃおう?」


アイギスが背後からシーナを抱きしめシーナの手を自分の手で包み込む。


「ほら、私も一緒に弾いてあげるから一緒にあのクズを殺そう?」


「あ、あぁ…」


「シーナ?…やれ」


アイギスは最後に口調を変えてシーナに命令した。


その瞬間シーナはトリガー弾き女を殺した。


その瞬間シーナは自分の中の何かが壊れたのを自覚する。


「うふっうふふ、うふふふふふふ!はぁ…」


シーナはアイギスの腕の中で身を震わせる。


「はぁん…シーナったら本当に可愛い…」


アイギスはシーナの前に回ると頬に手を添え唇を奪った。


シーナは嬉しそうに彼女のキスを受け入れる。


「アイギスも可愛いわ、それじゃ帰るわね」


シーナは最後にアイギスの頬にキスをすると転移して帰って行った。


「んーまだかぁ、まぁ時間の問題だろうけど」


アイギスは今日シーナが魔堕石を取り込まなかった事に対して残念そうにしつつ帰って行った。




〔エクシーズ本部〕


翌日シーナがエクシーズにやって来るとアスナが駆け寄って来た。


「ねぇシーナお姉ちゃん、何か困ってる事はない?」


アスナはホワイトクイーンとして今のシーナに何か感じる所があったのだろう話しかけて来た。


ちなみにアイギスに言われて今は魔堕石を持っていないためアスナでも侵食に気付く事は出来ず感じれるのは確信のない違和感だけだ。


「なんでもないわ、アスナ」


シーナにとってアスナは大切な存在のままだ。


だからこそ優しく微笑みなんでもないと言う。


「そっか…」


アスナは胸に手を当てながら頷き引き下がる。


「シーナ、何か飲む?」


するとセツナがいつも通り話しかけて来た。


「そのくらい自分で用意するわ」


「そ、そう?なら良いんだけど…」


シーナは自分が淹れる紅茶が好きであるためセツナは飲むか聞いたのだがいらないと言われれば何も言えない。


「…」


シーナはアイギスに言われたことを思い出す。


怪しまれずに楽しみたいのなら出来るだけ普段通りにしないとバレてしまうとの言葉を。


(チッ、アスナは可愛いからともかく、他の奴等は本当にムカつくわ、早く帰ってまたアイギスと楽しみたいわね…)


シーナは心の中ではイライラしつつ表面上はいつも通りを装って過ごすのであった。


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