七話、十歳になったアスナのやりたい事
〔森の中の家〕
十歳になったアスナが朝の鍛錬を一人で行っている。
五歳の頃より様々な事が分かるようになりそして断片的に前のアスナの記憶が見れるようになったアスナは。
前のアスナのような死に方をする者を増やしたくないと思いそして人々を守るために強くなりたいと思う心優しい少女に育っていた。
そして前のアスナと神の会話を見れたアスナは前のアスナをこう認識している。
(もう一人のお母さんのためにも私、絶対にお姉ちゃんを倒すから!)
自分は前のアスナが記憶と魂を対価に産み出した存在であるだからこそ自分は前のアスナが産み出した存在だと思うようになり前のアスナも自分の母だと認識するようになったのである。
そしてこのような関係を考慮しても前のアスナと今のアスナは髪色と瞳の色以外は同じ見た目をしているだけの別の存在であると言える。
「あら?早いわね?アスナ」
そうしているとアリシアがアスナの元にやって来た。
五年前から自分を育ててくれているこのアリシアもアスナにとって本当の母だ。
だからこそアスナは自分を二人の母が産み出してくれた存在だと思っている。
「うん、私には強くならないといけない理由があるからね」
アナスタシアを討ち彼女の思うままに操られている魔人達を解放して平和な世界を作るそれがホワイトクイーンとして産まれたアスナのやりたい事だ。
そしてそのやりたいことは必ずしもエクシーズの目標とは異なる。
エクシーズの目的はあくまでも魔人の殲滅だからだ。
「魔人の解放ね…エクシーズは中々認めないと思うわよ?」
前のアスナを含めて魔人はこの世界に多大な被害を出している。
エクシーズの考えとして新しく産まれたアスナには彼女達に連なる者ホワイトクイーンだとしても罪はないと言う考えだが。
ここまで世界を滅ぼした魔人達は簡単には許せない存在なのである。
「それでも私のやりたい事なの、お母さんは私に味方してくれるよね?」
アスナは持っている木剣を抱きしめ母を見上げつつ協力してくれるか聞いた。
「難しいと思うわ、でも私の娘が言う事よ、協力する」
娘のやりたい事だアリシアは迷わず協力すると言う。
それに魔人達が元人間や魔族だと考えると殲滅すると言うのは間違いだと思うのだ。
「でもこの私のやりたいことは私がもっと力を持ってから始めるべきだよね?」
「そうね、今のあなたは前のあなた程の強さではないから」
前のアスナの力が100だとすると十歳になったアスナの力は30程だ。
ホワイトクイーンの力を持って産まれたアスナであっても十五歳になるまでの間に己を鍛え上げ魔怪人に堕ちてからはその身をアナスタシアに改造され尽くした前のアスナにはまだまだ及ばないのである。
「分かった、ならやりたい事のためにも私いっぱい頑張る!」
前向きなアスナは頑張るぞ!と腕を振り上げた。
「さてそれじゃいつもの実戦形式の訓練を始めるわよ!」
「うん!」
アスナは木剣を右手に持ち直すとアリシアの前で剣を構えた。
そして駆け出した少女はアリシアに向けて剣を打ち込む。
アスナの剣技はアリシアに教えられたものだけではなく断片的に見れるようになった前のアスナの記憶からも学んでいる。
そのため十歳の少女が振るっているとは思えない程の鋭い剣技を扱うことが出来今の時点でも十分に強い。
「良いわね!どんどん打ち込んで来なさい!」
「うん!」
赤い粒子が混ざる金色の聖なる魔力ホワイトセイクリッドの力を使うアスナはアリシアと木剣をぶつけ合う。
「くぅぅ!やぁ!」
自分の力ではアリシアを押し切れないと思ったアスナは光の粒子を左手に溜めると攻撃を放つ。
「セイクリッドレイ!」
「ブラックスターライトレイ!」
二人のビームが着弾して大爆発を起こした。
アスナはその爆風を突っ切ってアリシアに迫るが待ち構えていたアリシアはアスナの首に剣を突き付ける。
「くー…」
アスナはまた負けたぁとシュンとする。
「うふふ、大分良かったわよ、さっ続きを始めましょう」
「うん!」
負けた悔しさも力に変えるアスナはアリシアとの鍛錬を継続した。
〔ダークローズ本部〕
まだ力が戻らないアナスタシアは新たに産まれた娘アイギスに今の戦闘を見せていた。
「見たかしら?あれがあなたが殺すべき相手の力よ」
「うふふ、楽しめそうな敵だね?」
アナスタシアがアイギスを産み出し目指しているのは魔怪人アスナの完全再現。
そのためその力もその見た目もその性格も魔怪人アスナを九歳程の姿にしたものである。
「ええ、きっとあなたを楽しませてくれる相手だわ、ただあなたでも簡単に殺せる相手じゃない、だから私の教えを受けもっと強くなりなさいアイギス」
「うんお母様、もっと強くなって絶対にあの子を殺すよ、あはっ、あはは!!!!!!」
かつて魔怪人アスナがこのダークローズ本部で響かせていた邪悪な笑い声と全く同じ声をブラックプリンセスアイギスは響かせた。




