新九章、穏やかな日々、プロローグ
今章の間にアスナは十五歳まで成長します。
〔森の中の家〕
アリシアがホワイトクイーン…アスナの手を引いて自宅にチェルシーと共に帰って来た。
「お帰りアリシア、その子は?」
桜色の髪に桜色の瞳をした少女を見たレイリックは妻に何者なのか聞く。
「この子の名はアスナよ」
「レイアール家のアスナとは違うのかい?」
「そのアスナを元に神が新たに産み出した子よ、私が娘として育てる事になったの」
「そうか…」
アリシアの説明を聞いたレイリックは前のアスナが死んだ事を理解する。
「やぁアスナ、俺の名はレイリック、アリシアの夫で君のお父さんになる、よろしくな」
レイリックはアスナと目線を合わせ自分が父親であると言った。
「お父さん!うん!よろしく!」
アスナは目の前の男性が父だと知ると嬉しそうに抱き着く。
「さぁ夕飯にしましょう、お腹空いているでしょう?アスナ」
「うん!ぺこぺこ!」
ご飯と聞いたアスナは無邪気にぴょんぴょん飛び始める。
アリシアはその可愛らしい様子に目を細めると愛おしさが止められない表情を見せながら抱き上げ共に家の中に入って行った。
〔エクシーズ本部〕
アリシアはアスナを連れてエクシーズ本部に訪れていた。
「おじさん顔こわーい!」
部屋に入るなりアスナは司令の顔を見てアリシアの背後に隠れる。
「こらこら…優しいおじさんよ?」
「こわーい!」
「もう…」
アリシアは苦笑いしつつアスナを背後から持ち上げた。
「と言うわけでこの子がアスナよ、前のアスナを元にして神が産み出した存在ね」
「つまり魔人と言うことか?」
「恐らくは…ただこの子が私達人類と魔族側の希望となる存在だと言っていたわ」
アスナは母の言葉を聞き何の話?と首を傾げている。
今前のアスナの記憶を見れるようにするのは幼い精神には重すぎるため封印されているのだ。
「神が言うのだ信じるしかないな、ただ、この子の体を調べさせて貰う、魔人の進化系と言う時点でな、構わないか?アリシア殿」
「ええ、必要な事だと分かっているわ」
「ありがとう」
司令はアリシアとアスナを連れて研究室に向かう。
アスナが怖がらないように簡易的な解析装置に繋げアスナの身体の解析が始まった。
神が希望と言う時点でこの少女には健やかな成長が必要な事は司令にも分かっているのだ。
「ダークローズの動きは?」
「なくなった、恐らく前のアスナを失ったからだろうな」
「でしょうね、それに親玉のアナスタシアが大きなダメージを受けたのもあると思うわ」
「出来る限り長い期間攻撃が止まって欲しい所だがな…」
期間が長ければ長い程アスナが成長出来る。
そのため司令はダークローズの侵攻の再開が長引いて欲しいと思う。
「解析完了しました」
「おわったー!」
解析が完了するとアスナはアリシアに向けて走って来て抱き着く。
アリシアは優しく彼女を抱き上げた。
「基本的には我々が解析して来た魔人の身体構造と合致しています、ただ邪神と言う事もあり、その内に持つ魔力量が膨大です、この魔力量を暴発させずにコントロールしているのは五歳ほどの外見に見えるのを考えると凄いですね」
「確かにね、アスナー?あなたは凄い子よー?」
「えへへー!私すごーい!」
アスナはご機嫌な様子で脚をブンブン振る。
ちなみに翼はいつでも消せるため現在は消しておりその見た目はどう見てもただの五歳児だ。
「そして他の魔人にはある、常に脳に送られている脳への支配ですが、この子にはそれが一切ありません、理由は何か知っていますか?アリシア様」
「この子に仕込まれていた自律攻撃モードが言っていたけどアナスタシアの対になる存在ホワイトクイーンだと言っていたわ、その言葉を信じるならこの子はアナスタシアと同格の邪神と言う事になるわね、更に追加の対策で天使の力も与えてあると言っていたわ」
「なるほど、同格の邪神かつ天使の支配は出来ない、神様も考えましたね、これならば完璧な対策です」
同格の邪神かつ天使の力と言う二段構え。
もう絶対にアナスタシアに奪わせないとの意思が見える徹底振りだ。
「ええ、だからこそ殺されないように成長するまで守らないといけないわ」
アナスタシアはこれから洗脳は無理なら無理矢理連れ去ってアスナを自分の物に最初はしようとするはずだ。
それが失敗すれば殺そうとするはず何としてでもそれは防がなくてはならない。
「安心して、私も守るのに協力する」
そんな話をしているとアイシアが現れた。
「アイシア…良いの?あなたのお父さんとお母さんを裏切る事になるわよ?」
アリシアはアイシアに両親を裏切る事になるが良いのか?と聞く。
「構わない、前のアスナが死んだのはお父様のせいだよ、私の最愛の人を…絶対に許さないって決めたの」
アイシアは前のアスナを失った原因であるアナスタシアが許せないだからこそアナスタシアを裏切ると決めたのだ。
「分かったわ、信じる」
「ありがとう、アスナ?よろしくね?」
アイシアがアスナに手を伸ばすとアスナはその手を握る。
「お姉さんの体にある悪いもの、なくしてあげるね?」
するとアスナは前日に会った時から感じていたアイシアの中にあるアナスタシアの影響を取り払うと言い魔力を放つ。
「ちょっ!?いきなり…」
アスナの魔力がアイシアの中を走りアナスタシアの影響が消え去った。
これでアイシアもアナスタシアに脳に指令を送られて操られると言う事がなくなった。
「凄い….なんだが頭がスッキリしたよ」
「えへへ、良かったねー!」
「同格であるからこそ出来る事か…」
「そのようですね…もしかすると中級以上の魔人化も…」
「解除出来るかも…ただ今のこの子には絶対にやらせないわよ」
「分かってます」
研究員はアスナに危険な事をさせるつもりはないためそのつもりはないと示した。
「それじゃ司令、もう帰っても良いかしら?アスナがお眠だわ」
魔力を使ったからだろうアスナはうつらうつらと眠そうにしている。
強力な力を持ってはいるがまだ幼子なのだ。
「うむ、我々で確実に守ろう」
「もちろんよ」
アリシアはアスナを抱き上げたするとアスナは安心した様子で母の胸の中で眠り始める。
「アイシア?あなたはどうするの?」
「冒険者でもやろうと思ってるよ、あなたのあの森の中の家の近くに魔人が現れたらすぐに行くから」
「分かった、それじゃまたね」
「うん」
アイシアが先に転移しアリシアは彼女を見送ってから転移して行った。




