二十七話、だから何?
〔レイアール家〕
桃香としての記憶を数百年振りに戻したアリシア。
かつてはその記憶が辛かったが長く生き様々な事を経験して強くなった今のアリシアの心ならば桃香の記憶が戻っても何の問題もない。
「お嬢様?大丈夫ですか?」
聞かなければ分からない。
だからこそ数百年前の事を知るチェルシーが大丈夫か聞いた。
「大丈夫よ、今の私はあの頃の私より強くなったから」
「なら良かったです」
チェルシーはアリシアの言葉を聞いてホッとした顔を見せた。
「それじゃ今からアスナに会って来るわ」
「危険じゃない…?」
一人でアスナの元に行くのは危険だと思いフィオが心配した。
「いつもながら危ないと思ったら逃げて来るから大丈夫よ」
アリシアはだから大丈夫と微笑みながらフィオの肩を叩き転移した。
〔ダークローズのアジト〕
アリシアが玉座に腰掛けるアスナの目の前に現れる。
「あらあらあら?私の前にわざわざ来るなんてどう言うつもりなのかな?」
アスナはアリシアが現れた瞬間に魔力で圧をかける。
アリシアは怯まずにアスナを見た。
「あなたに話したい事があるの」
「それはなぁに?」
掛けられる圧はどんどん強くなって行っている。
アスナは跪けとそうする事で暗に言っているのだがアリシアはアスナに従わない。
「私はね?とある記憶を取り戻したの」
「どんな記憶?」
アスナは跪かないアリシアを見てイラついた様子を見せつつ話す。
「あなたの前世明日奈の姉桃香としての記憶よ」
「…はっ?」
アスナはまさかの言葉を聞いてきょとんとした顔を思わずしてしまった。
まさかアリシアの口から桃香と言う名が出て来るのは思っていなかったのだ。
「ははは、お前が桃香お姉ちゃんなわけない…」
アスナの様子はイラついた様子から明らかに怒った様子に変わった。
桃香であると言った事に対して怒りを感じたのだ。
「本当よ、あなたはいつも孤児院の裏にあるブランコが好きだったわよね、夕方になるまで遊んで私がいつもアイスを持って行ってあげてたっけ?」
アリシアは桃香としての記憶を持つ者しか知らない筈の言葉を言った。
「どこのメーカーのアイス?」
「氷月だったかしら?」
「…」
アスナは今の言葉を聞いて確信する。
氷月のアイスは桃香が亡くなってからもどうしても寂しくて仕方がない時にスーパーに行って買って食べていた思い出のアイスなのだ。
「本当に桃香お姉ちゃんなんだ…」
「そうよ、私は桃香でもあるわ」
アリシアはそう言いながら優しく微笑む。
「そっか…」
アスナは俯きながら立ち上がる。
そして顔を上げた。
「だから何?」
氷のように冷たい表情を見せながら。
「…」
アリシアは予想していた自分が桃香だと明かしただけではアスナの心を癒す事など出来ないと。
それでもきっかけになるかもしれないそう思って言ったのだ。
「そもそも、私達を捨てたあのクソ野郎共と同じでお前もいなくなった癖に、お前がいなくなった後どれだけ寂しかったのか知らない癖に!」
アスナはアリシアに飛び付くとその胸を何度も何度も叩きながら話し始めた。
「どうして死んじゃったの!?約束してたでしょ!あのクソ野郎共と違ってお姉ちゃんはずっと側にいてくれるって!それなのに!死んで私を一人にした!お姉ちゃんなんて…お姉ちゃんなんて大っ嫌いだよ!」
アスナは泣きながら明日奈であった時の気持ちをアリシア…桃香にぶち撒けた。
「ふふっふふふ…はぁ…益々お前の事を殺したくなっちゃった、本当、私はお前を殺すために産まれ直したんだね、嬉しいよ」
アスナは邪悪な笑みを浮かべながら言う。
「私は前世の後悔をやり直すために産まれ直したんだと思ってる」
桃香は死の直前明日奈を残して逝く事を後悔していた。
その後悔をアリシアは晴らすチャンスが来たのだと思っている。
「やり直させたりなんてしない、お前は私の手で殺されるんだから、今日はもうその顔を見たくない!帰れ!!!!!」
アスナは怒りを抑えきれないと言った様子でアリシアに帰れと言う。
「分かった」
アリシアは様子を見て引き下がるべきだと思い転移して帰って行った。
「あああ!!!本当に腹が立つ!アイシア!!!世界を一つぶっ潰しに行くよ!!!!!!」
「あはは…はいはい…」
怒り狂うアスナは転移して数秒後世界を一つ消し飛ばした。
すぐにアスナと共に戻って来たアイシアは胸に顔を埋めて来るアスナの背中を優しく撫でる。




