二十五話、私に家族なんていない
〔アークナイトのアジト〕
遠くから聞こえて来る騒ぎが小さくなって来た頃アスナはアリシア達を連れてアジトの近くまでやって来た。
「シーナ?中にいる…」
アリシアが作戦を立てて攻撃を仕掛けようとするがアスナとアイシアは構わず近付いて行きドアを蹴り飛ばした。
「なっ…」
アリシアは出来る限り構成員を全員捕らえて情報を聞き出そうとしていたためアスナの行動に呆気に取られる。
「ふふっ久し振りの戦闘だよ、アイシア、壊して蹂躙して殺して…楽しもう?」
アスナはアイシャとエレノアを成長させるため支配した三つの世界の侵攻を二人と魔人達に任せていた。
そのためその間戦闘をしておらず鬱憤が溜まっていたのだ。
だからこそ今からの戦闘は絶好の機会なのである。
「ええ…アスナ」
アスナとアイシアは入り口で抱き合うとキスをする。
そうしている間に騒ぎを聞き付けた中にいた下位組織の者達が襲いかかって来るが。
アスナはその攻撃を避けアリシア達でも恐ろしいと思うスピードで動いて殴り殺した。
「あはっ…」
一撃で敵を殺したアスナは頬を赤く染めつつ邪悪に笑う。
「あぁ…なんて楽しいんだろう、ふふっふふふ、あはは!!!!!!」
邪悪な笑い声を上げながらアスナは中にいる者達の蹂躙を開始する。
侵入者を殺すつもりであった彼等は絶対に敵わない化け物が二人もやって来たのを見て逃げ出そうとするがアスナとアイシアはそんな事は許さず次々と殺して行く。
「待ちなさい!アスナ!せめて一人だけでも捕らえて!」
アリシアが一人だけでも捕えろと言うがアスナは止まらず最後の一人も殺してしまう。
「ふぅ…お前、本当に煩いよね、私に命令するなんて何様のつもり?」
戦闘を終えたアスナはアリシアの方を見て命令をするなと睨む。
「あなたの家族よ」
アリシアは迷わず自分はアスナの家族だと言う。
アスナはその言葉を聞いて非常に冷たい顔を見せた。
「あぁなるほど、良い機会だから教えてあげる、私はね?魔怪人になる前からお前達を家族だなんて思った事は一度もないよ」
「何を言って…」
アリシアはアスナの言葉を悲しく思いつつどう言う意味か聞く。
「分からない?私の前世は孤児だった、そして今世も作られた体に宿って親なんていない、そして前世で親に捨てられた私は生きて行くためにあの親を名乗る二人に必死に媚びを売っていた、今世では捨てられないように」
アスナの瞳は言葉を重ねるほどに氷のように冷たくなって行く。
今正にアリシアやフィオのような側にいた者達にすら隠していたアスナの心の闇が本人の口から語られようとしているのだ。
「心配しなくても…あの二人はあなたを捨てたりなんて…」
「前世で私は捨てられてるの、だからこそ私は親と言う存在も家族も信じる事なんて出来ない、生きて行くために利用する、私にとって家族なんてそんな存在だった」
アスナはここまで言ってアイシアの腕に抱き着く。
「でも、今は違うよ?アイシアと結婚して私を愛してくれる家族が出来たの、だからとっても今は幸せなんだ」
アスナは頬を赤く染めつつアイシアに視線を送る。
アイシアはその頬に手を添えると唇を奪った。
「お姉ちゃん…私もセシィも作られた存在だった、それでも私達はお姉ちゃんを家族だと思ってるわ!」
「ふふっ…組織がなければこの世界に産まれることすらなかった存在が何を言っているの?」
アスナは冷たく言うと手を握ろうと伸ばして来るフィオの手を弾いた。
「この話はこれでおしまい、私があなた達なんて一度も家族だなんて思った事なんてないって事実があるだけだよ」
アスナは冷たく言うとアイシアと共に去って行った。
今アスナが話した内容はアーリアも知っていた事だ。
作られた経緯は違うもののアーリアも作られた存在でありアスナとアーリアは生い立ちが似ている。
だからこそアーリアは悪に堕ちてからのアスナを気に入り悪に堕ちる前のアスナを嫌っていたのである。
「…」
フィオとセシィはアスナの今の言葉を聞いて涙を流す。
しかしアリシアは顎に手を当てて何かを考えていた。
「お婆ちゃん?」
フィオは何かを考えるアリシアを見て首を傾げた。
「今のアスナの心に届くかもしれない糸口が今の言葉で見えた気がするわ」
「それは?」
フィオはその糸口について聞く。
「私はね?」
アリシアはここにはいないチェルシー以外は知らない前世について話し始めた。




