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僻地に追放されたうつけ領主、鑑定スキルで最強の配下たちと共に超大国を創る  作者: 瀬戸夏樹


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第173話 外部勢力の掌握

 ディーシュ族の有力者達は緊張の面持ちでノアとの会合に臨んでいた。


 ディーシュ族の命運はひとえにノアの決断にかかっている。


 ノアがディーシュ族の長となり、悪鬼防衛に協力してくれなければ、色々と捨てる覚悟をしなければならない。


 会合の場にノアが現れるとゴクリと緊張に喉を鳴らす。


 ノアは席につくと厳かに話し始めた。


「要塞を視察してきたよ」


「……」


「悪鬼達がかつてないほど力を伸ばしていることはよく分かった。冬が明ける前に彼らの侵攻にすぐに対策を講じる必要がある。無論、そのために私も最大限努力するつもりだ」


「では……」


「君達の要請に応えてディーシュ族の長になろう」


 それを聞いてとりあえずディーシュ族の者達は、ホッとした。


 アークロイ大公はディーシュ族の窮状を理解してくださる。


「おおお。ありがとうございます」


「大公に神の恩寵があらんことを」


「だが、条件がある」


 ディーシュ族の面々は歓迎ムードから一転再び緊迫する空気になった。


 当然の展開ではある。


 だが、ノアの出す条件次第では、事態が余計に悪化する恐れがあった。


「条件とは?」


「ディーシュ族の軍権をすべて私に委ねることだ」


「大公。無論、我々は大公の指揮下に入る所存です」


「ですが、事は急を要するのです」


「アークロイ大公、このまま悪鬼の勢力が強くなれば、要塞は突破されてしまいます」


「急ぎ大公の軍をこの里まで呼び寄せてください」


「どうかご決断を」


「無論、必要とあらば私の騎士達をこの里まで呼び寄せるつもりだ。だが、その前にまずはディーシュ族の強化からだ」


「しかし、どうやって……」


「ディーシュ族には騎兵戦に長けた者達が多くいるようだね。そして強弓の使い手も」


「……」


「なら、もっと弓騎兵をメインに軍を編成、強化した方がいいと思うのだが……」


 ノアがそう言うと、ディーシュ族の有力者達はハッとする。


「な、なるほど。確かに」


「言われてみれば……」


「そうだよな。俺達ディーシュ族ははもっと弓騎兵をメインに編成するべきだ!」


「そうそう。実は俺も前から同じようなこと思ってたんだよ」


「流石はアークロイとマギアを統一した領主様」


「今回の領主様は話が通じそうだな」


「弓騎兵を強化することには同意してくれるということでいいな。じゃあ、次に騎兵の機動力と弓矢の火力を活かすために偵察能力を重視した方がいいと思うのだが……」


 ノアはチラリと有力者達の顔色を窺う。


(流石にこれは性急すぎたか?)


 だが、ディーシュ族の者達はまたもやハッとする。


「な、なるほど。そんな手が」


「確かに偵察能力を上げれば、弓騎兵の火力と機動力をより活かせるな」


「待ち伏せも奇襲もやりたい放題じゃないか」


「そうそう。俺も前から同じようなこと思ってたんだよ」


 ノアは続ける。


「騎兵で偵察して、敵の動きを素早く察知することができれば、攻城兵器を運ぶ部隊を狙い撃ちにして敵の要塞攻略の意思を挫くことができると思うのだが……」


「う、うおお!」


「な、なるほど。そんな手が……」


「そうそう。俺も同じようなこと思ってたんだよ」


「流石はアークロイ大公」


「二つの地方を統一しただけのことはあるな」


「更に言えば、騎兵の多くは鎧を着ているようだが、頑丈な鎧を造るのにコストをかけるよりも攻撃力の高い弓矢をより安価に大量製造する体制を構築した方がいいのでは?」


 またまたディーシュ族の者達はハッとする。


「な、なるほど。そんな手が……!」


「確かにそっちの方がより低コストで部隊を運用できる」


「敵を削るのも低コストでできそうだな」


「そうそう。俺も前から同じようなこと思ってたんだよ」


「流石はアークロイ大公」


「二つの地方を統一しただけのことはあるな」


「すでに我々アークロイ軍は強弓を開発している。エルザ。皆さんにアークロイ製の取り回しのいい弓矢の威力を見せてやってくれ」


「はい」


 ノアはエルザを伴って、有力者達と一緒に射撃の練習ができる場所に赴く。


 全員、固唾を飲んでエルザの射撃を見守る。


(うーん。久しぶりの弓矢ちゃんと射てるかな)


 エルザは緊張しながら弓に矢を番える。


 最近、魔石銃ばかり射っていたので、弓矢は久しぶりだった。


 キリリと(つる)を絞ってヒョウと矢を放つとはるか彼方の的に命中する。


 鬼人達は湧き立った。


「うおお」


「す、凄い」


「あんな遠くにある的を……」


「この弓矢を導入すれば、悪鬼にも勝てるかもしれんな」


「みんな! 聞いてくれて」


 ノアは有力者達に語りかけた。


「もしみんなが一族から弓騎兵の戦力になりそうな兵士を提供してくれて、弓騎兵に纏わる諸々の施策を受け入れてくれるなら、私にもこのアークロイ製の弓矢をディーシュ族のために提供する用意があるのだが。どうだろうか? 我こそはと申し出てくれる者はいるか?」


「おおお。それは願ってもないことです」


「ウチからも弓騎兵になれそうな若者を用意いたしますぞ」


「ウチからも50騎ほど出せますぞ」


「俺も100騎ほど出すぞ」


 ディーシュ族の有力者達は先を争うようにしてノアに弓騎兵候補者の提供を名乗り出る。


「エルザ、おつかれ。いいデモンストレーションになった」


 エルザはノアに褒められて頬を赤らめる。


「えへへ。久しぶりの弓矢なのでドキドキしました。でも腕(なま)ってなくてよかった」


 ノアは有力者達の方に向き直る。


「どうだろうみんな。弓騎兵をディーシュ軍の主軸にすると決まったところで、流鏑馬(やぶさめ)の大会でも開いてみないか?」


流鏑馬(やぶさめ)?」


流鏑馬(やぶさめ)とは?」


「馬に乗りながら弓矢で的を射る競技だ。ディーシュ族の新たな戦力を発掘するのにちょうどいいと思うんだが」


「おおお。それはいいですな」


「早速、御触れを出しましょう」


(よし。上手く弓騎兵を配備充実させる流れにもっていけたな。鑑定スキルを政治力に転用する方法、だんだん分かってきたぞ)


 こうしてアークロイ大公主催の流鏑馬(やぶさめ)大会が開かれることになった。


 知らせはその日のうちに鬼人の村々や街々に知れ渡った。


「強弓と馬乗りでディーシュ(いち)の勇者を決める」との触れ込みで大会情報を拡散すると予想以上に参加者が集まった。


 悪鬼の襲撃に移住を検討していた者達まで大会に参加するほどだった。


 ディーシュ外からの参加者も見られた。

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