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僻地に追放されたうつけ領主、鑑定スキルで最強の配下たちと共に超大国を創る  作者: 瀬戸夏樹


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第170話 アイアン・クロー

 僻地に凱旋したノア達は領民達の盛大な歓呼の声で迎えられた。


 マギアでの武勇の数々はアークロイにも伝わっていた。


 領民達は諸手を挙げて領主一行の帰還を喜ぶ。


「お帰りなさい領主様」


「大層な武勇を挙げられたそうですな」


「英雄の帰還だ。今日はお祭りだ」


 領主はもちろん将軍や小隊長、一兵卒に至るまで労いの言葉がかけられ、村娘達が何か声をかけたり、食べ物を渡したりする。


 尚武の気質が強いアークロイにおいては、領外での戦果は何よりも(とうと)ばれることだった。


 ノア達は久しぶりに僻地の素朴な雰囲気に当てられて癒された。


 アークロイ兵達もマギアの洗練されてはいるが、謀略と政略渦巻く魔法院文化から解放されてホッとした。


 神々への戦勝の報告を終えて、アークロイでの本拠地クルック城に戻ると、ノアは宮廷政治を再開した。


 ノアは久しぶりに玉座に座って、左右に家臣を配し、大商人や大地主達に謁見する。


 留守のことは聖女アエミリアが万事無難にこなしてくれていたようで問題はほとんどなく、祝勝の挨拶と定例の報告がほとんどだった。


 ファウナは隙あらばノアの膝にゴロニャンして、果物をねだる。


 ファウナの狙いはノアがマギアから持ち帰ってきた高級ブドウだった。


 評議の合間合間を縫ってノアに構ってムーブをし評議を妨害する。


 評議再開の交換条件としてブドウを一房頂戴(ちょうだい)すると、城内の仲間の鬼人達にブドウをお裾分けするのであった。




 ♦︎




「ねぇねぇ。ノア様ぁ。そろそろ私のマギア出禁も解いて下さってもいいんじゃないですか? ねっ? ねっ?」


 アエミリアが評議中に甘え声で言ってくるが、ノアはそれを振り切って老家臣達に尋ねる。


「それよりもディーシュ族のことだ。何があった?」


「おお。帰還して早々(まつりごと)を行なわれるとは」


「立派な心掛けでございます」


「ディーシュ族のことに関してはアエミリア様がお詳しいことと存じます」


「アエミリア様、どうぞ領主様にご説明ください」


 アエミリアは仕方なく説明し始める。


 ノアがアークロイを統一した頃、鬼人の里では悪鬼の勢力が著しく衰退し、もっぱら抗争は鬼人同士でのものがメインだった。


 ディーシュ族もノアを鬼人同士の抗争に巻き込もうとしていたが、それについてはオフィーリアの献策で回避された(第34話、第35話参照

 https://ncode.syosetu.com/n4486jr/34

 https://ncode.syosetu.com/n4486jr/35)。


 そうして鬼人同士でホーンズの森での覇権を賭けた闘争を演じてきたのだが、ある時から俄かに悪鬼が勢力を盛り返してきた。


 ディーシュ族も支配下に置いていた村や里が悪鬼達に侵略され、再び鬼人達のアイデンティティは揺れている。


 鬼人達は自分達が人間に近いことをもって悪鬼達への優越としていたが、どういうわけか悪鬼達に知恵がつき始めたのだ。


 それまでは使えなかった複雑な武器や道具も使うようになり、高度な戦術や建築技術まで駆使するようになってきた。


 この背景にはどうも魔族が関与しているのではないかと噂されている。


 悪鬼になっても知性が保てるのならと、悪鬼化することを選ぶ鬼人も現れ始め、再び鬼人コミュニティは動揺し始めている。※従来、鬼人は人や同族を食うと悪鬼化し、強靭な肉体を手に入れる代わりに凶暴化して理性を失うとされていた(第13話参照

 https://ncode.syosetu.com/n4486jr/13)。


 また、安全面からディーシュ族の支配に不安を覚え、ホーンズの森を抜けてアークロイ領に移住する鬼人も現れ始めている。


 ドレッセン(アークロイ領内の鬼人の里)においては、すでに多数のディーシュ族の者達が難民として移住しており、地元民との軋轢も生じつつある。


 ディーシュ族にあっても人口の流出や軍事力の低下を深刻に捉えており、アークロイ領に接近してきたのにはそういった事情も加味されている。


 ディーシュ族の里長が亡くなって、一族を纏められる者がいなくなり、次点の勢力を持つ者達も権威においては同列の者達ばかりで横並びになったのもあって、思い切ってノアにディーシュ族長への就任を打診した。


 隣の一族から有力者を引き抜いて族長になってもらおうという話もなくはなかったが、生憎これまで抗争していたこともあり、疑心暗鬼になっていて悪鬼対策においても族長就任においても利害を調整するのは難しく……。


 そこまで聞いてノアはアエミリアの頭をガッと掴み、アイアン・クローをかけた。


「あだっ。あだだだだっ」


「無茶苦茶深刻じゃねーか。なんで今まで放置して黙ってたんだよ」


「ち、違うんです。それは、マギア進出中のノア様の御心を煩わせるわけにはいかないという高度な政治的判断というか、私なりの配慮であって……」


「なおさらマギアの利権漁りしてる場合じゃねーだろ」


「うーん。でも、込み入った事情で面倒な対応を迫られそうですしぃ。アークロイでのお仕事もマンネリ気味だったからぁ。自分へのご褒美も兼ねて都会のマギアで羽を伸ばしたいなって……、あだっ。あだだだ。ほんとすみません。そろそろ許してください」


 ノアはアエミリアの頭から手を離して解放した。


「まあいい。とにかくディーシュ族のことは急ぎの要件だ。冬が明けてから動くつもりだったが、今すぐ動くぞ」


「とはいえ、我が軍は遠征で消耗しております」


 オフィーリアが諌めるように言った。


「そうだな。ディーシュ族へはアークロイの留守組を中心にして行くことにする」


 ノアは冬のうちにディーシュ族の里を訪れて、会談の席を持つことを打診すると、ディーシュ族の方でも前向きな答えが返ってきた。


 すぐ様、ディーシュ族の方から外交官セリクがやってきて先導役を努めると申し出てきた。


 ノアはドレッセンにて久しぶりにセリクと再会すると、情報交換し日程の調整と細々とした打ち合わせを行い、ディーシュ族の里へと赴く日程を定める。

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