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第250話 秋葉原大決戦!コンカフェは地獄だ!(第三部)

 知人の宮廷書記官カクベー・ジッシを異性に慣れさせるためにおれは東大の先輩で秋葉原に4店舗のコンカフェを経営する今 嘉兵衛氏に頼み、彼の店を案内してもらうことになった。最初の店で騒動を起こし、次に案内されたツンデレカフェでおれたちを待ち受けていたのは天魔りりすという秋葉原ナンバーワンメイドだった。


 バックヤードのドアが開いて出てきた美しきシルエット、それがアイドル並みのルックスにモデル並みのプロポーション、そして声優並みの美声と言われるパーフェクトメイドの天魔りりすだ。ライトブルーのカラコンが入った大きな眼、ボリューム感のあるツインテールでアッシュピンクの髪、胸元がざっくりと開いた変形メイド服は彼女専用であろうゴールドを差し色にパールホワイトのサテン生地を基調としたものだ。なるほど確かにこれはひと目を惹くルックスだな。天魔りりすは客席を一瞥すると「ふん」と鼻で笑った。

挿絵(By みてみん)

客席「おおおお」


客D「来たぜ、アキバの堕天使!」


客E「今日もお美しい…!」


客F「行くぞ! 下僕ロード作れ!」


 下僕ロードとは何のことかと思ったが、驚くべきことに店内の常連たちが次々と天魔りりすの足元に伏せて連なり、人間の体でカーペットを作り出した。おいおいマジか…。


客D「りりす様、どうぞお通りください」


 床に伏せ下僕ロードの一部となりながら天魔りりすに声をかける常連の一人。何が彼らをここまでさせるのか。


りりす「ありがと」


 天魔りりすは躊躇せず常連客たちの背中をロリータパンプスで踏んで歩いていく。下僕ロードとなった常連客たちは呻きながらも嬉しそうだ。おれたちは何を見せられているのか…異世界人のカクベー氏やマグナ君のみならず地球人の永瀬まで唖然としていた。


りりす「相変わらずブッサイクで無価値な非モテ男どもが集まってんじゃん。りりすに出逢えてラッキーだね」


 下僕ロードを踏みしめながら澄んだ美しい声で酷いことを言う天魔りりす。


永瀬「これはなかなかですね…」


ミキオ「最近のツンデレカフェはこんなことになってるんですね…おれの想像を超えてました」


今「りりすのツンデレは強烈だからね。ツンが長くて何ヶ月もデレが来ないんだ。最悪デレが無い時もある」


永瀬「デレの無いツンデレは性格悪いだけでは?」


 永瀬の問いかけには答えず、今先輩は大きい声を出して天魔りりすを呼んだ。


今「ここよ、りりす! こちらVIPのお客さんだから」


りりす「あっそ(また代わり映えのしない非モテのオタク男か…ああ鬱陶しい。でもまあ客をイジメてやればお給料出るんだから楽は楽だね)」


 天魔りりすは何事か思いながらか伏し目で下僕ロードを降り、うちのテーブルにやってきた。圧倒的な美貌と色気、ゴージャスなオーラに早くもカクベー氏は目が♡♡になっている。


りりす「あなたがVIP客? りりすに出逢えて良かったね」


カクベー「は、はい、この上なき果報者です、ありがとうございます!」


 何度も頭を下げ、しまいにはテーブルに額をぶつけるカクベー氏。これじゃどっちが客だかわかりゃしないな。


りりす「で? こっちは?」


 店長の今先輩と共に大テーブルにいるおれたちを不思議そうに眺める天魔りりす。


今「ああ、これは俺ちゃんのツレなんで、気にしないで」


りりす「ふーん…(なんなのこいつら…こっちのずんぐりむっくりなブサ男はともかく…)」


 カクベー氏を1秒だけ見たあと、マグナ君を睨む天魔りりす。


りりす「(このプラチナブロンドの子、とんでもない美形じゃん…男か女か知らないけど異様に整ってる…こんな子がメイドカフェに何しに来たわけ…)」


 きょとんとするマグナ君から視線を外し、秘書永瀬を睨む天魔りりす。


りりす「(それにこの丸の内OL風のショートボブの女、こいつもなかなか美人じゃん…どう考えてもメイドカフェに来るような人種じゃない…こいつら何がしたいの…?)」


 不思議そうに見返す永瀬から視線を外し、天魔りりすはおれの方を見つめてきた。


りりす「(で、問題はこの男よ…クール系メガネイケメンて、りりすの好みどストライクじゃんか…しかもロン毛を束ねていてアウトローっぽさもある…ヤバいかも、一目惚れしたまである…)」


 天魔りりすはおれの方を見て少し紅潮し、すぐに視線を外した。これもツンデレサービスの一環なのか、秋葉原ナンバーワンメイドのやることはよくわからないな…。


今「りりす、ツンデレーダーMAXのお客さんはこちらだから」


 手のひらでカクベー氏を指し示す今先輩。ツンデレーダーというのはこの店でのツンデレサービス度を計る単位らしい。


りりす「うっさいなあ。わかってるし。ねーあなたこの店に何しに来たわけ」


カクベー「は、はい、店長に紹介して頂きまして…」


りりす「あっそ。で、そっちのメガネは彼女とかいるの…?」


 何のつもりか、天魔りりすがこっちに話を振ってきたのでおれが遮った。


ミキオ「ああ、いや、おれたちは見学で来てるだけなのでお構いなく」


りりす「あ、そう…(ヤバい! あのひと声もイケボじゃん! 宮野真守みたいな主人公声! この出逢い逃したくない…!)」


カクベー「あの、何か?」


りりす「何でもないし。ねー、何か頼んで。オムライスがいい」


カクベー「オムライス…はさっきの店で食べたんで」


りりす「は? りりすに逆らうの? ありえなくない?」


カクベー「いえ、そんなつもりは! 喜んで注文させて頂きます!」


りりす「オムライス1人前、このブタに」


 厨房にオーダーを入れる天魔りりす。ひどい接待だ。まあこういうもんだとわかって来てる客ばかりだろうから全然良いのだが、それにしてもブタ呼ばわりされてニタニタしてるカクベー氏も如何なものだろうか。周囲の客たちも自分たちのメイドそっちのけで羨ましそうに注視している。


 ほどなくしてオムライスが届いた。銀のアルミ皿に載ったなんの変哲もないオムライスである。


りりす「ケチャップかけてあげるね」


 そう言いながらデスソースの瓶を取り、オムライスの上にぶちまける天魔りりす。かけ過ぎだろ…デスソースなんて少しかけるだけでも口の中が大変なことになるのに、あんなの普通に食べたら腹痛起こすぞ。


りりす「残さず食べてね♪」


カクベー「じゃ、頂きます」


 スプーンでオムライスの端を崩し、すくって口に入れようとするカクベー氏だったが、さすがに可哀想になっておれが注意した。


ミキオ「カクベー氏、それはケチャップではなくデスソースと言う激辛の調味料だ。邪魔をするつもりはないが、一応注意だけしておく」


カクベー「え」


 スプーンが止まるカクベー氏。


りりす「(何あいつ、イケメンのくせに正義感まで強くて思いやりまであるのかよ…)じゃっ、じゃあ、食べなくて、いいよ…」


 なぜか恥じらうような態度の天魔りりすを見てざわめきだすギャラリーの常連客たち。


客A「今日のりりす様は調子悪いな」


客B「いつもなら客の顔にオムライス投げつけるとこなのにな」


カクベー「いやっ、おれは食べるよ! 見ててください、りりす様! …ぶはっ!!」


デスソースのたっぷりかかったオムライスをがっつき、一気に吐き出すカクベー氏。今日のこの男は本当に汚いな。


りりす「きったな。何やってんの。最悪じゃん。おしおきしてあげるから這いつくばって」


カクベー「え? え? おしおき?」


りりす「いいから早く」


 天魔りりすはカクベー氏を這いつくばらせ、その尻をサッカーボールのように蹴った。


カクベー「ぶひっ!」


りりす「クールに構えやがってさ! ちゃんとりりすの方見てんの?! メガネイケメンさんさぁ!」


 何度もカクベー氏の尻にサッカーボールキックをかます天魔りりす。もっともこれはサービス用のキックであり大して痛くもなさそうだ。


カクベー「わひーっ!ありがとうございますぅ」


 品が無いなぁ。これじゃツンデレカフェというよりSMクラブじゃないか。こんなところに長居してもカクベー氏の変な扉が開くだけで得るものは無さそうだな。


マグナ「メイドさんのあの言葉、カクベーさんじゃなくてミキオ先生に言ってません?」


ミキオ「そんなわけないだろう。何を言ってるんだ。今先輩、ここは大体わかったんで、そろそろ次の店を」


今「おっそうね。じゃ次はアニソンカフェ行こうか」


りりす「えっ…もう行くの?」


 明らかに落胆の表情を見せる天魔りりす。何でだ? まさかカクベー氏が気に入ったわけでもないだろうに。


今「今日1日でうちの系列全部回る予定だからね」


カクベー「名残惜しいなぁ。まあ、またご縁がありましたら」


 立ち上がり、笑顔で服の埃を払うカクベー氏。彼も残念そうではあるが気持ちの半分はもう次の店に行ってしまっているようだ。こいつ女性に執着しているようで意外と切り替え早いな。


りりす「店長、りりす今日はこれであがるから」


客たち「えーっ?!?!」


今「ちょっと、勘弁してよ、他のお客さんが待ってんのよ?」


りりす「アニソンカフェ行くんでしょ。りりすも行く。りりすお歌得意じゃないから行って勉強したい」


 急にワガママを言い出した天魔りりすに困惑する今先輩。


今「参ったなぁ。辻ちゃん、悪いんだけど次の店にこの子連れてっていい?」


ミキオ「はあ、まあこちらは見学させてもらってる立場なんで」


今「悪いね、じゃ行こうか」


客A「りりす様! 近々また出勤してよ!」


客B「今度オレに指名させてね!」


りりす「別にあなたたちに会いたくないから。バイバイ」


 残念そうな常連たちの視線を受けながらおれたちは「ロリータ・ストロベリー・イン・ザ・ムーン」を後にした。





今「次のお店はちょっと歩くよ」


 おれたちは店を出て、今先輩に先導されラジオセンター周辺の薄暗い路地を歩いていた。後方で天魔りりすがうちの秘書永瀬と話している。オフモードの天魔りりすはサーモンピンクのワンピースにワインレッドのライダースジャケットを着ており、意識はしてないだろうがシャア専用ザクを思い出すカラーリングだ。


りりす「ねー、このグループ何繋がりなの? 謎なんだけど」


永瀬「えーと、これはあのカクベーさんて人を女性に慣れさせるためのツアーなんです」


りりす「ふーん。みんな付き合いいいね…あなたはあのロン毛メガネの彼女?」


永瀬「いや、わたしは彼の秘書で」


りりす「あのひと秘書いるの? …じゃあのプラチナブロンドの子が彼女?」


永瀬「マグナ君は男の子で、まあ弟子みたいな感じ」


りりす「え、男の子なんだ、そう…(秘書がいて、弟子までいるって…どういう男なんだよ…りりすが想像してたより大物なのかも…)」


 女子二人がそんな会話をしていると、曲がり角から出てきたガラの悪そうな3人組に話しかけられた。


半グレA「おい、あれ天魔りりすじゃねーか?」


半グレB「あれ、マジだ。すげえ。りりすじゃん。何やってんの?」


 チンピラの呼びかけを無視して無言で歩く天魔りりす。


半グレA「おいシカトすんなって。天魔りりすだろ、お前」


天魔りりす「プライベートの時は話しかけないで」


半グレA「んだコラ! お前イキッてんじゃねーぞ!」


 大きな声がしたのでおれも今先輩も後方を見た。この3人組はどうやらチンピラ2人とその兄貴分という感じのようだ。半グレか、あるいは反社か。平和な秋葉原に悪漢の怒声が響き渡る。次回、秋葉原大決戦編最終章に、エル・ビドォ・シン・レグレム!



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