5話 豪華なサンドイッチ
馬車がゆらゆらと揺れる中、気になるものがある。
いつもは樽と農場で採れた野菜が乗っているはずなんだが、今日は樽と蓋がされている箱が乗っている。
おじさんが通るときに野菜を買っているためそのことがわかる。
「おじさん今日は野菜が乗ってないけど、この箱の中身は何が入っているの?」
「おう坊主、その中には乾酪が入っているんだ」
乾酪!チーズが入っているのか!いいないいなチーズ!
どうにかしてチーズが食べたいな・・・知らないふりをして聞いてみるか。
「乾酪って食べもの?どういう味がするの?」
「なんだ坊主、乾酪を食べたことないのか」
「うん、食べたことないよ」
「そういえば森に来てからは食べていませんわね」
母さんは食べたことがあるのか。母さんの料理はどの料理も基本的においしいし、街道にたまに馬車で走っている商人に声をかけてはいろいろなものを買っている。調味料もそうだ。家にはたくさんの調味料がある。この世界では珍しいスパイスやハーブといった香辛料。塩はもちろん、砂糖まである。気になるのはどこからお金が出ているのかということだが。おいしいものが食べれるんだ。気にすることはない。
「乾酪はいいぞー!これぞ本当のとろけるうまさだ!」
ゴクリとのどを鳴らしてみる。食べたい。本当に食べたい。
「ハハハ!坊主食べてみたいと顔に書いてあるぞ!」
「うぐ!だ、だって食べたことないんだもん!」
違うただ食べたいだけである。
「よーし、坊主に祝いだ!乾酪を一個丸々持っていきな!」
「やったー!!」
「そんな悪いですよ。お金なら持ってきてますので買わせてください」
母さんくれるって言うんだからありがたくもらっちゃおうよ!
「なーに、大丈夫さ!アイリスさん。これはいつもいろいろ買ってってくれるお礼でもあるんだ!受け取ってくれ!」
「そうですか・・・ではありがたくいただきますね」
乾酪一個丸々か結構な大きさだろうししばらく楽しめそうだな!
「母さん、乾酪って今すぐ食べられたりするの?」
「そうねー、焼いたりはできないけど今日はサンドイッチを作ってきたから間に挟んでチーズ入りのサンドイッチならできるわね」
母さんのサンドイッチにチーズ入りか・・・よだれが出てきた・・・
「うふふ、エランよだれが出ているわよ。今日はサンドイッチにチーズを挟みましょう。たくさん作ってきたからもらったお礼に、チーズ入りのサンドイッチをユリックさんにあげましょうね」
「うん、わかった!!」
「お、アイリスさんの手作りサンドイッチか!そいつは楽しみだな!」
おじさんの顔がにやけているのがわかる。後ろ姿でもそれは伝わってくる。
「ひひーん!!」
「なんだタルク?お前も食べたいのか?」
「ひひん、ひひーん!!」
「そうかそうか、アイリスさんタルクの分も少しだけ分けてもらうことはできるかい?」
「今日は本当にたくさん作ってきたから、少し分けるくらいならできますね」
「ひひーん!」
「よかったなタルク!」
お昼まではまだまだ先だが、今日一日は本当に楽しみな一日だ。
お昼ご飯は教会に行って自分の特性の確認が終わった後だろう。
季節にして春。
ピクニックでサンドイッチを食べるのは本当に格別だろうなー。
ゆらゆら揺れながら馬車が進んでいくと、空に複数の白い鳥が飛んでいるのが分かった。
なんだろう、この世界でまだ見たことない種類の鳥な気がする。
そして、鳥の羽が輝いていて透明感があり首の部分は細長い。
目は少し鋭く見えるためなのか、その部分がまた神秘的に見える。
「なんだあの鳥は、初めて見る種類の鳥だな」
おじさんでも見たことない鳥なのか。
本当に珍しい鳥なんだろう。
まあそんな気はする。だってあんなに神秘的なんだもんな。
「母さんはあの鳥見たことある?」
母さんに声をかけて母さんの顔を見ると、いつもの優しい笑顔とは違って少し険しい表情になっているのが分かった。
「母さんどうしたの?」
もう一回母さんに声をかけると、母さんはいつもの表情に戻った。
「そうね、母さんも見たことがない鳥の種類だわ」
「そっか、じゃあ本当に珍しい種類の鳥なんだね」
「そうね」
そういった後の母さんの顔はいつもと変わらないような気がしたが、なんだか寂しいような感じの雰囲気にも見えた。
そんなことを考えてるうちに教会が見えてきた。
「アイリスさん、坊主もうすぐ着くぜ」
「うん、見えてきたね」
やはり話しながらでも、歩くより馬車のほうがずっと早いな。
教会には象徴である祝福の女神ウランの銅像が屋根の上に飾られている。
中にはとても大きな彫刻も置いてある。
以前教会の中に入った時に見たその彫刻は細部まで細かく彫られており、美しいものであった。
目元は端のほうがが少し鋭くなっており、目は大きく開いていた。
口元は微笑の形に彫られており、体全体はやや細身でその体に合わせてローブがぴったりつくような感じになっている。足元ははだしになっており、立ってる姿はまるで蝶が舞うような姿になっている。
今にもバレーを始めそうな感じだ。指先まで芸術作品になっている。
建物の高さ自体は15メートルくらいだろうか。
周りには畑があり柵でおおわれている。
他は草原が広がっておりそこで座ってサンドイッチを食べたい。
食べてる時にそよ風があったらなおよいだろうな。
「よしよしよし、タルク止まってくれ」
「ひん!」
教会についた。そうそう、教会といえばこの大きな扉もあったな。
この扉よく作ったよな。模様が入っているとかではないが、木製でもこの大きさの扉を作るのは大変だろう。この世界にも職人の技術はというのは魂がこもっていることがわかる。
馬車が止まっておじさんが箱のふたを開けると、おじさんが大きいチーズを取り出した。
直径は20センチほどで、厚さにして5センチほどだ。
「坊主持って、においを嗅いでみろ。うまそうなにおいがするぞ。」
「うん、もたして!」
おじさんがチーズを持たせてくれた。
匂いを嗅いでみると、発酵食品独特のにおいがしてきた。ただ、香りを嫌気することはない。
この匂いは食欲をそそる匂いだ。
匂いを嗅いでいる間に母さんはバケットをあけた。
バケットの中にはもちろんサンドイッチが入っている。
「エラン、こっちにチーズを持ってきて」
母さんにそう言われチーズを持っていく。
チーズは馬車の荷台に起き包んである紙を開く。
見事な黄色であり、先ほど嗅いだ香よりもっと強いものが鼻の穴の中に入ってきた。
鼻腔を通じて嗅覚の細胞が反応して脳に信号が送られ、これは本当にうまいだぞって脳で把握する。
母さんが持ってきたナイフできれいに薄くチーズを切っていく。
そしてバッケトの中のサンドイッチを取り出し、その間にチーズを挟んでいく。
サンドイッチの具は燻製の肉に、おじさんから前に買ったレタスに似た野菜のサルタ。
あとはトマトに似た野菜のマタイ。
味付けはバターと塩に数種類のハーブだ。
「エラン、このサンドイッチはユリックさんに渡して。」
先に作り終えたサンドイッチは、バケットに入っていた包み紙に包まれている。
サンドイッチをおじさんのもとに持っていく。
おじさんはタルクの頭を撫でていて、タルクは喜んでいる。
「はい、おじさん。おじさんとタルクの分のサンドイッチだよ」
「おう、坊主ありがとうな」
「ひん!!」
「ははは、タルクくすぐったいよ」
タルクとじゃれていると母がサンドイッチにチーズを挟むのが終わったのかこちらにやってきた。
「ユリックさん、チーズなんですけど帰りの馬車まであずかってもらうことはできますか?」
「ああ、構わないよ。教会に乾酪の塊を持って行っても邪魔だしな。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、さっき言った2刻後ぐらいにまた通るから、その時待っててくだせえ。」
「わかりました、何から何までありがとうございます。
「坊主、またあとでな!」
「うん、おじさんありがとう!またとでね」
おじさんは、ニコッと笑顔を見せて馬車に座り、あとでな!ともう一回行って馬車を進ませ始めた。
「エラン、行きましょうか」
「うん!」
そうして母さんが、教会の門とは別の扉にノックをした。
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