3話 私の世界
寝ていたら母さんがご飯を作ってきてくれた。
といっても人肌に温められたミルクだ。
・・・目覚めていても結局は変わらなかった。
間違いなく転生したのだろう。
前世では転生物の物語とかはよく読んでいたが、自分がこんなことになるとは。
・・・まあ、あれだが。
こちらに転生できたのもあの狂気とも呼ばれるであろう事件のせいであるが。
あの事件には前世で事件名がついただろうな・・・
少なくとも記憶の限りで4人は殺されている。
しかも一人はめった刺しだ。
そのうえ犯人は人がいるであろう方向へと包丁を持ちながら走っていった。
まだ人を殺そうとしていたんだろうな・・・
いや、実際に殺されているかもしれないんだよな・・・
「はい、エラン。ごはんですよー」
母さんが小さいスプーンにミルクをすくって口の中に少しずつ流し込んでくる。
この体の状態で飲まないのはまずい。
成長できなくてすぐに栄養失調になるだろう。
赤ん坊の時は飲むだけ飲むそれが成長につながるはず・・・太ったりはしないはずだ。
しかし、なぜあの人間はあんな状態になったのだろうか。
精神状態が異常であったはずだ。
あんな状態になるまで・・・人を殺すなんて・・・
「エランは時々難しい顔をしているわねー。なんで眉間にしわを寄せるのかしら」
眉間にしわを寄せる赤ちゃん・・・なんてかわいくない赤ちゃんだろう・・・
気を付けておこう。
前世での仕事場はどうなっただろうか。
まあ、人がいなくなってもどうにかするというのが普通だが。
あの仕事場は、いつも人手が足りなかった。
あの仕事場接骨院では。
一日が長く、重労働で力仕事。
これだけで人は集まりにくい。
そのうえ患者には体の状態の説明を行い、必要なことを伝える。
事務的な部分ではカルテの作成、さらには一日の売り上げ計算。
保険は厳しい状況になっている中、会社では保険請求で不正行為にまで手に染めようとしていた。
まあ、そこは絶対ダメだと止めていたが。
一日の労働時間は15時間以上で、医療類似行為、経理、患者への営業。
完全なブラック企業だ。
ちなみに保険は初回以外は基本的にケガ一か所につき金額は十割分で、600円ちょっとぐらいだ。
あまりにも安すぎる。
まあ患者さんの体の状態がよくなって笑顔が見れたときはとてもうれしかったが・・・
続けるには根気と体力が必要であった。
「・・・今度はなんか疲れている顔になっているわね・・・なんでかしら?」
おっと、また顔にでていたみたいだ。
もうちょっと押さえないと。
「はい、ご飯は終わりね」
食べ終わった後自分で勝手にげっぷをする。
「・・・驚いた、自分でげっぷをするなんて。こんなことは初めてだわ。」
やばい、あまりにもおっさんすぎたか・・・まだ精神年齢は28歳だが。
・・・28はもう十分おっさんか・・・
「エランお腹いっぱいになったしちょっとだけ外に行きましょうか」
おお、外に行けるのか。
どんな感じだろう。
「エランちょっと待ってね」
私をベッドにおいて母が靴を履き替えてくる。
さっきのは室内履きだったのだろうか。
いちいち変えるのは毎回面倒臭くはないだろうか。
「はい、じゃあお外に行きましょうねー」
母はにっこり笑って私をまた抱っこし始めた。
そして木製の扉を開けて押し込んだ。
外に出て周りは木がたくさんあった。
森の中なんだろうか?森の中でログハウスで生活なんて前世では夢のような生活だった。
暖炉に火をつけて、木の椅子に座りながらコーヒーを飲んで暖炉を眺める。
あたり一面は目に優しい感じでぬくもりのある木目。
最高じゃないか。
しかしなんで森の中なんだろうか?
街のほうが生活はしやすいだろうに。
なんか理由でもあるのかな。
「エランあれが見える?大きい熊さんですねー」
・・・ちょっとまて・・・熊だと・・・危なくないのか?
お、ウサギやキツネ、オオカミまでいるではないか。
狂暴じゃないのかな?非常におとなしいな。
「グルゥ!グルゥ!」
「木の実かしら?ありがとうね!」
母さんがそういうと熊さんから木の実を受け取る。
ほんとにおとなしい熊なんだな。
そう思っているとまたうとうとしてきた。
「あら、エラン眠いのかしら?じゃあ中に行きましょうね」
そういって母さんは家の中にまた入っていった。
私は母さんの腕のぬくもりですぐに眠っていった。




