第3話:現場入り、門閥制度は親の敵?3
ミントはミラーグラスを外す。
先ほど激昂していた若い騎士が、石像のように固まった。
「……え、あ……貴公は女性、だったのか」
「それが何?」
「……結果の出ない忠道では主君を危険にさらす、理解した。先ほどの無礼を詫びさせてほしい」
騎士が拳を胸に当て、うやうやしく頭を下げる。
ミントはその態度の急変が理解できず、小首を傾げた。
馬車の扉が静かに開き、再びアイリス王女が降りてきた。
夕陽に輝く金髪、均整の取れた高い身の丈。
彼女の華やかな美貌は、この世界の「正解」を体現しているかのようだった。
対照的に、ミントは小柄だ。
シン新宿の劣悪な栄養環境(低品質な合成食)で育ったからだろうか?
ミラーグラスを外した素顔は、
本人のドライな性格に反して「カワイイ系」というカテゴリーに分類される整った童顔だった。
「ミントさん、近くの街までぜひ同乗を」
「恐れながら王女殿下、先ほども申し上げたように……」
「そのつもりなら、野盗を退治したときに同乗しているはずでしょう?
あの時誘いに乗らなかった時点で、貴方は『シロ』だと思います。
それに私が2回誘う保証はありません」
アイリスは茶目っ気たっぷりに微笑み、ミントの言葉を封じた。
「お強いのは分かります。ですが、夜道を女性が一人で歩くのは危険です。
……そんなに可愛らしいのだもの。どうか、私に恩返しをさせてください」
王女が白く細い手を差し出す。ミントはその瞳をじっと見つめた。
これ以上の固辞は失礼、無意味な敵対だろう。
ミントは王女の手を握り、立ち上がった。
正面に立つと身長差は頭一つ分以上あり、ミントは完全に見上げる形になった。
「……分かりました」
不機嫌そうに呟きながら、ミントは贅を尽くした馬車へと乗り込んだ。
お約束とミントの感想
・盗賊に襲われる姫を助ける:お家騒動とマッチポンプの可能性あり
・助けた姫に好かれる:セキュリティ意識が低いのでは?
・姓名を言うと貴族扱いされる:名前が長いほど偉いなら、落語の「寿限無、寿限無」と名乗ると皇帝一族?
・騎士道:性別で論理回路が換わった、一貫性に欠ける
王女アイリスの交渉術:
ワタシの外見を「可愛らしい」と褒めることで、こちらの心理的なガードを下げようとした。策士。
デバッグ・チャットログ
ミント:報告。王女アイリスの護衛騎士、あれ選抜メンバーでしょ?
なのに判断力がポンコツすぎて驚いたわ。
一方で、襲ってきた野盗の方がよっぽど引き際の判断がプロ(損切りが早い)だった。
これ、縁故採用や血縁重視による組織の「腐敗(劣化)」が、
魔王の勢力より深刻なバグになってるんじゃない?
ガイア:騎士一人の育成コストを考えると実家が太くないと無理なの。馬に鎧に教育費、全部自前なんだから。
ミント:礼儀作法とか余計なコストをかけるからじゃないの?
ガイア:騎兵突撃は十分な威力があるし
ミント:弓や槍衾で止められない?
ガイア:……魔物や魔王という「明確な外部脅威」がある世界では、
封建主義や君主制でトップダウンにリソースを集中させる方が生存戦略としては利があるはずなのよ?
ミント:歴史のデータを見なさい。
20世紀最強の国は民主主義国よ。
組織が硬直化した君主制なんて、例外なくデスマーチの末路を辿るわ。
ガイア:あそこは国力がチート。他に気づいた点はある?
ミント:「遠見の水晶で確認したから街道は安全だ」って騎士が言い張ってた。
これ、現代で言えば「ドローンでスキャンしたから大丈夫」って盲信して、目の前の地雷原に突っ込むのと同じ。テクノロジー(魔法)への過度な依存と、それに伴う「思考の外部化」ね。
ガイア:思考の外部化……?
ミント:そう。自分で考えず、ツールが出した結果を「真実」だと思い込む。ポンコツ騎士のようにね。
この「問いを立てることを止めた姿勢」こそが、貴方の言う「世界の停滞」の根本原因じゃないかしら?
ガイア:……ミントさん、貴方やっぱり可愛くないけど、最高のデバッガーだわ。その調子で、世界の「論理のバグ」をどんどん暴いてちょうだい。




