第2話:デスマーチへようこそ3
「それでも荒事前提ね。
サムライソード(小太刀)はそのまま持ち込むとして」
最大の問題は『弾薬の補給』よ」
「ミントは腰のホルスターに手をやり」もしくは前の台詞に閉じ括弧を追加、愛用のマシンピストルを軽く叩いた。
「レーザーガンのバッテリー、マシンピストルのケースレス弾。
これらが現地調達できないなら、ワタシはただの重たいスクラップを持って歩くことになる。
現地の魔石か何かをエネルギー変換して、リロードできるようにシステムをパッチ修正(変更)して」
あ、ミラーグラスの外部電源もセットでね」
ミントは追加の要求を重ねる。
「それと、ワタシの銃術をあっちでも使用できるように。
拳銃による近接戦闘技術――これさえあれば、あっちの化け物相手でも物理で対応可能になる」
「……分かりました。その条件、すべて呑みましょう」
ガイアは諦めたように溜息をついた。
最強の剣や魔法を欲しがるどころか、自分の世界の持つ技術を異世界へ持ち込むための
「互換性」を要求する転生者。
「ミラーグラスをあっちでオンラインに出来ない?リードオンリーでいいから」
ガイアは困ったように首を振る。
「……無理よ。パンガイア大陸からシン新宿の『ネットワーク』まで世界を跨いで接続するなんて。
貴方のデバイスは、あっちに行けば
『スタンドアロン』……完全なオフラインよ」
「しょうがない、交渉成立ね」
ミントの宣言とともに、神殿の床が淡い光を放ち始めた。
異世界パンガイア大陸へ、光が収束し、ミントの意識が遠のく。
これから異世界デバッグというデスマーチに放り込まれる。
「期待しているわよ、勇者さま?」
鼻の奥に飛び込んできたのは、強烈な草いきれの匂い、そして乾燥した土が舞い上がる特有の埃っぽさだった。
シン新宿の酸性雨に濡れたアスファルトの匂いではない。
ミントが目を開けると、そこには黄金色の夕刻が広がっていた。
石造りの街道が地平線まで伸び、視界を遮る高層ビルもホログラム広告も存在しない。
彼女の装いは、この風景の中で絶望的なまでに浮いていた。
黒染めされた軍用ボディーアーマーに、タクティカルパンツ。
腰には愛銃のマシンピストルとレーザーガン。
中世風の石畳の上に降り立ったサイバーパンクの住人は、まるで雑なコラージュのようだ。
目を開けたミントのミラーグラスには警告が表示され、視界を赤い滝のように流れていった。
お約束とミントの感想
一瞬で体を綺麗にする浄化:銃の清掃メンテ
無限収納のアイテムボックス:絶対零度なら、モンスターの攻撃を防ぐのに使えたかも?
異世界の文字が読めるし、話せる:機械翻訳よりはまし
デバッグ・チャットログ
ミント:そもそもさ、「神に出来ないこと(世界の停滞の解消)」を
外部委託って言ってる時点で、女神が全能ではないことを証明しているよね?
論理的矛盾じゃない?
ガイア:痛いところを突くわね……。言っておくけど、私だって好きでやってるわけじゃないのよ。
システム内部の自由意志に直接干渉できない「制限付きアカウント(中間管理職)」なんだから。
それにしても、ミントさんは見た目と名前以外、本当にカワイくないわね。
ミント:トラップみたいな採用面接を仕掛けてくる神様にだけは言われたくないです。
ガイア:ひどい! 私はこれでも、パンガイア大陸の運営を必死にやってるんだから!「もう全部滅ぼしちゃえば?」って言ってくる過激な親戚(神々)をなだめるのだって大変なんだから!
参考:銃術の設定について
民生用の(軍事用アサルトライフルやサブマシンガンに劣る)マシンピストルで効果的に戦うための技術。
連射速度や集弾性に劣るため、2丁拳銃やミラーグラスのアシストを利用する。
サブでサムライソード(刀を工業的に再現したもの)も使う。
カポエイラは手かせをされていた奴隷が、その拘束をとかれないまま鍛錬した格闘技の為、
足技を中心に発展したとされる説がある。それと同じ理由の設定。




