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テンプレ異世界はバグばかり?ポンコツ女神と示談から始まるデバッグ無双  作者: ニャルC


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第13ー1話:美人デコイとトロイの木馬2

パノティア国に戻った二人を待っていたのは、祝杯ではなかった。

防壁のように硬く冷ややかな、反対勢力だった。


「ミントさん、陸運貴族と教会が強硬に反対しています」

アイリスの報告に、ミントは眉を顰める。


「陸運貴族はわかる。

支援物資の輸送という独占利権がなくなるからね。でも、教会は?

スタンピードの時に魔王の脅威を説いて寄付を募っていたけど、和平案に反対するほどの寄付額があるの?」

「教会は『魔王は絶対悪であり、対話など言語道断。神の教えに背く行為だ』と主張しています」

「……反応が過敏すぎるね。気になるリーク(情報)があるし、裏取りが必要ね」


パノティア王都の片隅、陸運貴族の拠点近く。

ミントは物陰で自分の黒髪を指で弄りながら、忌々しげに吐き捨てた。

「……目立ちすぎね。ワタシの容姿は、スパイ活動には致命的なバグ。

黒髪なんて、この国じゃ『ワタシ』だと宣伝して歩いているようなものよ」

周囲には教会や陸運貴族の監視の目が光っている。


「反対の理由は『カミ』じゃなくて『帳簿カネ』でしょうね。

誰かが彼らの裏を洗ってくれれば早いんだけど……」

と呟く。その時、背後の「影」が不自然に揺れた。


「ミント様……お探ししました」

聞き覚えのある声。

振り向くと、そこには学園の大会で戦った暗殺者の少女、ニクスが影から染み出すように立っていた。


「えっ……? あなた、まだ塀の中(監獄)のはずでしょう?」

剣闘士制度コロシアムを活用しました。

……ミント様に再びお会いするために、最短ルートで刑期を短縮して参りました。

合法的に自由の身です」


「ヘレンと同じ手段ね……。この世界の司法は脳筋フィジカル寄りすぎるんじゃないかしら」

驚きを瞬時に「利用価値の計算」に変換したミントは、ミラーグラスの奥で目を細めた。


「ちょうどいい。あなた、暗殺者なら『侵入工作』は得意よね?」

「もちろんです。私の技術は、貴女の望む場所へ私を運び、貴女の望む証拠を奪うためにあります。

ですから、その報酬として……」

ニクスの瞳に、契約以上の「熱」が宿る。

だが、ミントはその先を言わせる前に、ビジネスライクな言葉で遮った。


「報酬なら、前渡しで半額。成功後に残り半分を支払う。

……相手は、あなたを大会で使い捨てにしたあの陸運貴族たち、鼻を明かしてやる機会よ?

奴らと違って、ワタシならあなたの能力スキルを適切に運用できる。

……これこそ、天の配剤による幸運ってやつかしらね」

ミントの口元に、珍しく計算抜きの小さな笑みが浮かぶ。


「ワタシの人生、常にデバッグの連続だと思ってたけど……。

まさかここで、一番欲しかった『隠密ユニット』が自ら接触してくるなんて」

ニクスはその言葉に、報酬以上の充足感を得たように深く頭を下げた。

「適切な運用……それで『幸運』を、私が確定事項に変えてみせます。ミント様」



王宮の一室。

ミントは「袋(アイテムボックス、中の時間は停止して重量を無視する女神ガイアのチートアイテム)」

をニクスの前の机に置いた。


「では陸運貴族と教会の反対の理由を調査しましょう。ニクスの潜入作戦(トロイの木馬)よ。

袋の中の時間は止まっているから、空気の心配は不要。重量も無視出来る。動物実験も済んでいる。

そして使用人の服も入手済み」

「さすがの手回し。服の入手経路は?」

「熱心な拝金教徒がいた、話が早くて助かった」


「わざわざ袋に入るのはなぜですか?」

ニクスが当然の疑問を口にする。

「この袋を持って、貴族の邸宅と教会にアイリス王女が説得に行ってもらう。

彼女の荷物をチェックできる人間はいないから安心」

「一国の王女を侵入者の運び屋にするとは、恐ろしい方」

「軽蔑した?手段の最低さには定評があるの。二の矢として、『美人デコイ作戦』

アイリスの『王女属性』とヘレンの『武人属性』、この二つで、敵の監視リソースを飽和させる。

……デコイとして最高級。これであなたが動きやすくなるはず」

「王女も名高い武人も目眩しですか」


ニクスが、ジト目でミントを見た。

「……ミント様。それなら、貴女も一緒に行けばよろしいのでは。

貴女の外見も、十分にその役を果たすのでは?」

「却下。ワタシの顔は既に、あちら側ではブラックリスト入りしてる。

そして作戦の詳細は二人には教えない。知らない方が怪しまれない。

もしも、あなたが調べてシロなら王女が反対派を説得に行っただけ」

「汚れ役は我々だけで十分。秘密の共有、いい響きです」

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