第11話:学園編:武道大会編(完璧な偽装)2
ミントは淡々と言う。
「あ、安心して。陛下には報告していない。物証はあの時、賊が自ら焼いて抹消済みだし、
流派が同じというだけでは『犯人』と断定する論理的根拠に欠けるもの。
……ただ、不可解なのよ。あの時の撤退判断の速さ。
数の優位があれば、強引に王女を拉致は可能だったかもね。
……同門の意見として聞かせて。
あの襲撃の『真の動機』は何だったのかしら?」
部屋の温度が数度下がったような錯覚。
カドモスはゆっくりと手を下ろし、感情の消えた声で、冷めかけた紅茶を見つめた。
「……同門で食い詰めた者もいるだろう。……我が国への支援金は、年々減らされているから。
……だからこそ、王女殿下の『恩人』となり、直接の支援ルートを構築したかったのでは。
……もし動機があるとしたら……話すべきことは、以上ですよ」
カドモスは立ち去った。
その背中を見送りながら、ミントはミラーグラスを外した。
閑話:カードゲーム
学園のサロン。
ティータイムの終わりに、ミントは精緻な模様が施された54枚のカードをテーブルに展開した。
「……王女殿下、少し新しいゲームを試してみませんか?」
アイリスが興味深げに身を乗り出す。
「あら、珍しいわね。ミントさんが遊びに誘ってくださるなんて」
「面白いと判断されたなら、社交の場での公式プロトコルとして採用していただきたいのです。
名称は『ポーカー』、そして『ブラックジャック』。……ルールはいたってシンプルですよ」
ミントの目論見はこうだ。
カードそのものの著作権は主張しない。
むしろ、ルールブックとセットで安価にライセンス(販売)し、世界中にばら撒く。
カードの互換品が出るのは織り込み済みだ。
重要なのは、全大陸で「同じルール、同じ構成」のOSが走ること。
他国の有力者が集まるこの学園で流行れば、それは一気に諸国へ伝わる。
船が各地の港に停まった時、誰もがこのゲームをしていれば、情報の交換速度は格段に上がる。
話のきっかけに確実になるからだ。
それにミントはどこへ行っても「電脳カードカウンティング」という特権アクセスが可能になる。
「……イカサマ? 心外ね。ワタシが広めたシステムよ。ソースを熟知しているのは当然でしょ?」
配られた札、捨てられた札、山札に残ったカードの確率。
全てを脳内アーカイブでリアルタイム・トラッキングすれば、接待プレイ(負け)も、一攫千金(勝ち)も、自由自在に制御できる。
特に、北前船の建造を妨害してきた陸運系貴族の子弟たち。
彼らが「サロンの社交」という名目で、ミントの手の平の上で熱心に「造船予算の追加出資(大負け)」をしてくれたことは「臨時ボーナス」として記録しておこう。
お約束とミントの感想
・闘技大会に出場しよう:実質一勝しかしてないけど、賞金は北前船の建造費の一部になりました
・ゲームを開発し著作権のない世界なのに、なぜかアイデア料を貰う:現実的にはコーチや必勝法、イカサマの方が稼げるかも
デバッグ・チャットログ
ミント:学園という名の「特権階級の揺り籠」を査察中。
結論から言うと、この世界の停滞、魔王のせいだけじゃないね。
古い騎士道や家柄に固執する既得権益層の嫌がらせが、
新しいリソースの活用を全力でブロックしている。
ガイア:あら、物騒ね。……というかミントさん、それどころじゃないでしょ! 暗殺者に狙われたり、騎士崩れの執事と決闘したりして、無事なの?
ミント:シン・新宿の「路地裏の挨拶」と比べたらカワイイものよ。……貴方、カワイイの好きでしょ? 詳しい内容、聞きます?
ガイア:(食い気味に)遠慮します! 貴方の「カワイイ」の定義、バグってるんだから。
ミント:冗談はさておき。この世界の「参入障壁」は高すぎる。
優秀な暗殺技術や、食い詰めた実力派の騎士が、古い掟や貧困のせいで「バグ」としてしか機能していない。
これを「建設的なプロセス」に組み込まないと、イノベーションなんて無理ね。
ガイア:うーん、確かに。みんな自分の居場所を守るのに必死で、システム全体をアップデートしようって発想がないのよね。
ミント:だからこそ、ワタシが「北前船プロジェクト」で物理的に風穴を開けるのよ。
古い権益が届かない海路から、新しい価値観と物資を流し込んで、強制的にバージョンアップさせる。




