第1話:神の手違いで死んだ?示談交渉ですね2
ガイアが必死に食い下がる。
「代わりに異世界で、より輝かしい人生を送ってもらおうと思ってます」
――現状回復及び、蘇生不可能。
ミントの視線は氷のように冷たかった。
「『お詫びのチート能力』? 貴方はそう呼んでいるけど、それはプレゼントじゃない。
管理ミスを隠蔽するための損害賠償、あるいは口止め用の示談金でしょ?
奇跡の転生というパッケージにしてね。
……示談の条件としての、チート能力を提示する。解決策はシンプル」
ミントは指を立て、決定的な条件を口にした。
「一つ、境界移動能力。異世界と現世を自由に行き来する。
二つ、時間遡行能力。ワタシを死ぬ直前まで巻き戻す。
これさえあれば、ワタシは自力で現世へのルートを構築して帰るわ。
そうすれば貴方の管理ミスも、消えて無くなる。……ワタシの記憶以外からはね」
ガイアは口ごもった。
「それは世界の理が……」
ーー自力救済、拒否。
その煮え切らない態度に、ミントの追及はさらに加速する。
「……それも拒否? なんでそんなに異世界へ転生させたがるのかな?
もしかして、異世界に魂を送り込む『派遣ノルマ』でもあるの?」
「ノ、ノルマだなんて、そんな事務的なものでは……!」
「じゃあ統計的な話をしましょうか。現世では一日に数万人が死んでいるはずよ。
その全員に貴方がこうして個別面接をしているの?
確率は数万分の一……。ワタシがこうして対面しているのは、幸運じゃなくて、
何らかの意図を持って『抽出』された結果じゃない?」
ーー統計的違和感。
ガイアの笑顔の仮面にヒビが入ったのを、ミントは見逃さず畳み掛ける。
「……貴方は一神教の神様じゃないよね?
名前や風景からして、ギリシャ神話系だし。それとも、認めたくないの?
『自分ができないことは、権限として他人に与えることもできない』っていう当たり前の事実を」
「な、なんですって……?」
ガイアの顔に朱が差し、背後で揺らめいていた光の輪が、不規則なノイズのように激しく明滅した。
「もし貴方に、ワタシが求めた『二つの権限』を授ける力がないのなら、
貴方がこれからワタシに与えようとしている『特別な力』とやらも、結局はその程度のガラクタ(欠陥品)よ。
貴方じゃ話にならないわ。
仕様外のトラブルに対応できる、権限を持った『上司』を出しなさい。
それとも、名刺交換でもしようか?」
ーー担当者交代、希望。
ミントの言葉は、鋭利なナイフとなって女神を切り裂いた。
ロジックで追い詰められ、女神ガイアは沈黙した。
だが次の瞬間。ガイアは顔を上げ、作り物ではない笑みでパチパチと拍手を送り始めたのだ。
「――合格よ、ミント。おめでとう!」
神殿の四方から、どこからともなく祝福のピンクの花びらが舞い散った。
それはミントの最も嫌う、非論理的で情緒的な演出だった。
「……は?」
ミントは理解不能な事態に、立ち尽くした。
「何がおめでとうで、何に合格したのよ?ワタシは示談の条件を提示しただけ。
『地獄』行きの面接に『合格』なんてオチじゃないわよね?」
ミントの声が、花びらの舞う甘ったるい空気を切り裂く。
お約束とミントの感想
神様の手違いで死んでしまった:過失致死
転生させるのは男神でなく女神で若い美女:ナビ音声が女性であるのと同様、心理的抵抗を減らすため
神に対して態度がでかくても許される:何かしらのトラップの可能性あり
チートをもらい、異世界へ行く:示談金、現物支給




