第7話:スタンピード編(はじめての誤算と膝の上の居候)3
「魔物があふれ出さない、安全に処理されるだけの場所……か。
『適度な死地』という名の緊張感のある訓練環境が必要なんだ」
「論点がズレているわよ、ギルドマスター」
ミントは、育成環境の悪化を説くギルドマスターの言葉を遮った。
「ワタシは、冒険者のダンジョン探索を禁止するなんて一言も言っていない。
今話しているのは、30年周期で発生する致命的な『スタンピード』に対する対策の話。
で、三十年後も同じように慌てるの?
技術的な負債(負の遺産)を未修正のまま次世代に押し付けるのは、
管理職(システム管理者)として最低の仕事だよ」
「……っ!」
「問題を次世代に押し付ける、「技術的負債」の放置をしないように」
ミントは机を指先でトントンと叩き、相手を真っ直ぐに見据えた。
「……いい、ギルドマスター。批判する以上、必ず代案は用意する。それがワタシのプロとしての矜持。
キルゾーン案を却下するのも採用するのも、運用の責任者であるそちらの自由よ。
……ただ、現状維持で次のスタンピードで致命的な街の崩壊を招くつもりなら――」
ミントは、冷徹な瞳で見つめた。
「その時は、この改善提案書、アイリス王女に直接申し入れさせてもらう」
ギルドマスターの背筋に冷たいものが走る。
これは単なる脅しではない。ミントには、王女に直接アクセスできることを、彼は嫌というほど理解していた。
膝の上のラムが愉快そうに足を揺らした。
「ミントって性格──何というか」
「性格が悪いのは、職業病。性格の悪いワタシは、あなたのオヤツの安全が保障できないな」
「いい性格してると思う。悪いとは言ってないよ?」
とラムが愉快そうに笑った。
ギルドマスターが続ける。
「新人のクエストはどうなる?」
「キルゾーンが出来るまではその建築労働。それが完成したら監視員ね。
それに魔王がいるのだから、そちらに集中すべき。
雑魚の処理にリソースを割いている場合じゃないの、全体最適を考えなさい」
と言うと、膝の上のラムがキラキラとした瞳で見上げてきた。
「ミント、面白い!」
お約束とミントの感想
・スタンピード:30年後のモンスター大量発生の布石は打ったよ、キルゾーン
・ダンジョン:モンスターが無限に湧くならアイテム工場にしましょう。
モンスターの素のアイテムが無限に生成される場所を押さえたいけど
・強力なモンスターは、味方になると女体化:呪いの鎧に操られた女性剣士もバリエーションかな
・下着が現代並み:武門の矜持も性別が変わるとサービスシーンに見える
・ドラゴンは幼女になりがち:常時巨体だと維持するためのカロリーが膨大。
だから戦闘時以外は省エネモードなんだろうね。
あとは愛らしい容姿で庇護欲をくすぐり、守ってもらうためかな。
デバッグ・チャットログ
ミント:ダンジョンの管理体制、ここへのリソース配分は最低限に抑えるべきね。
あんな不確定要素の強い場所に、貴重な人的資源を突っ込ませ続けるのは、国家レベルの「管理ミス」よ。
ガイア:ええーっ、それはちょっと味気なさすぎない?ダンジョン探索ってこの世界の醍醐味じゃない?
未踏の地を切り拓き、未知の魔物と戦う……一攫千金の夢……いわゆる「冒険者のロマン」ってやつよ!
ミント:……ロマン? やりがい?
そんな実体のない言葉、シン・新宿じゃ一番価値のないゴミよ。
ロマンを餌に若者をデスマーチへ送り込むなんて、搾取の極みね。
そんなの、ブラック企業の経営者が社員を洗脳する時の常套句(定型文)でしょ?
ガイア:(あ、これ地雷踏んだやつだ……)
ミント:ギルドマスターも「適度な死地が必要だ」なんて、教育コストをケチった前時代的なマネジメント論を振りかざしてたわ。育成環境なんて、安全なシミュレーターか訓練場で構築すればいい。実戦を訓練代わりにするのは、ただの「コストカット」でしょ。
ガイア:……じゃあ、魔王軍の方はどうするつもり?
ミント:最短ルートで終わらせる。ねえ、今からでも「神の杖」作れない?魔王城に飽和攻撃を仕掛けて、物理的に地図から消去してあげるから。
ガイア:だーかーらー。私の権限では無理ですって。破壊神じゃないんだって。




