表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テンプレ異世界はバグばかり?ポンコツ女神と示談から始まるデバッグ無双  作者: ニャルC


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/15

第6話:スタンピード編(負の遺産の清算)1

「モンスターの大量発生スタンピードだ! 森から溢れ出したぞ!」

ギルドの扉を壊さんばかりの勢いで飛び込んできた男の絶叫が、場を凍りつかせた。

ジョッキを傾けていた冒険者たちの顔から血の気が引き、酒場特有の喧騒が、重苦しい沈黙に変わる。

だが、その静寂を切り裂いたのは、ミントの乾いた声だった。


「モンスターの大量発生、ね。つまり生物の個体数爆発。

……考えられる理由はリソース不足による集団移動(レミングス現象)、

あるいは環境激変に伴う個体数急増(蝗害)。

それとも上位種が原因でテリトリーを追い出されたか」

ミントはミラーグラスを指で押し上げ、淡々と分析を継続する。


「何にせよ、これは突発的な事故アクシデントじゃなくて、

システムの容量超過バッファオーバーフローによる必然的な挙動」

ミントは狼狽し、パニック一歩手前のギルドマスターに尋ねた。


「この規模のスタンピード、過去のログ(記録)はある?」

「き、記録だと……? 待て、いま調べる!」

ギルドマスターが2階の書庫へ全力で走り、埃の舞う紙束を抱えて戻ってきた。


「記録によると……三十年前にも一度あった。

その時は隣町のギルドと協力し、多大な犠牲を払いながらも、なんとか鎮圧したと記されている……」

「三十年前、ね。

……じゃあ、その時に策定された再発防止策は何? アーカイブして満足したわけじゃないよね?」


「再発防止……? いや、あの時は街を守るだけで精一杯だった。

平和が戻れば、人は明日を生きるために今日を耕さねばならん……」

ミントは深く、力なく首を横に振った。

彼女の目には、このギルドがアップデートを怠り、セキュリティホールを放置し続けた末にウイルス感染を許した、救いようのない旧式OSレガシーシステムのように映っていた。


ミントは事務的にギルドマスターに問いを重ねた。

「スタンピードでの討伐数は、ランクアップのスコアとして合算されるよね?」

「もちろんだ、特例として倍率もつく。ギルドへの貢献度クレジットも大幅に加算されるぞ」


「あと報酬の出処ソースはどこ? ワタシの弾薬は有限で、タダじゃないんだよ。

ワタシの弾薬は『やりがい』や『正義感』では買えない。

これは慈善事業じゃなくて、必要経費の話をしてるの」


ギルドマスターは、まるで宇宙人を見るような顔で答えた。

「……賞金首の大型個体以外は、基本的にドロップアイテムを換金してくれ。それが常識だ」

「……待って。その話、論理的に破綻している」

ミントの動きが止まった。ミラーグラスの奥で計算回路がショートしたかのような沈黙が流れる。


「普通の動物を倒せば、そこには『死体(肉や皮)』が残る。

それは当然の結果。

なのに、なぜモンスターは倒された瞬間に消滅し、代わりにドロップアイテムになるの?

質量保存の法則はどこへ行ったの。

じゃあそのドロップアイテムを逆変換(加工)すれば、元の魔物に戻るの?」


ミントは両手で頭を抱えた。

この世界の「バグ」は、彼女の理解を遥かに超えている。

だが数秒後、彼女はシステムを再起動したように顔を上げた。


「……不条理な仕様だと思って呑み込む。

今すべきことは、付近の街や村へのスタンピード警告と兵站の支援依頼。

警告すれば対処の時間は稼げるし、兵站がないと現場は維持できない」


酔っ払いを一撃で沈め、高ランク冒険者を威圧し、さらには王城の通門証まで所持しているミントは、Fランクという最低評価でありながら、完全に場の主導権(権限)を掌握していた。


話は終わった、あとは迎撃戦だという空気が流れる。

「よし、迎撃戦だ! 街の外で魔物を食い止めるぞ!」

先ほどのBランク冒険者が、名誉挽回とばかりに拳を突き上げる。


だが、ミントの声がそこに冷水を浴びせた。

「待って、まさか街の外(平原)で戦うつもり?」

「当然だ! 街に被害を出さないのが冒険者の誇りだ!」


先ほどのBランク冒険者が返事をするが、ミントは呆れたように吐き捨てた。

「敵の総数も、目的も判明していないのに? 索敵もせずに平地で乱戦なんて自殺行為」

「街に近づけるわけにはいかないだろうが!門を破られたらどうする!」

「何のために、冗談みたいに高い城壁があると思っているの? その上から一方的に攻撃すればよくない?」


ミントは続ける。

「モンスターも食料がなくなればどこかへ行くでしょう。

付近の街には警告を出しているから不意打ちにはならない。

もし限界を超えてこの街に留まり続ける個体がいるなら、それは本能ではなく、

外部から命令や操作をされている。

遠距離攻撃で数を減らし、食料切れで弱るまで決戦は保留すべき。

リソースの消耗を最小限に抑えるのが戦術の基本でしょ」

ミントは冷徹な演算結果を突きつけ、反論の余地を奪う。


「だが……それでは卑怯だと……」

Bランク冒険者が、誇りを引きずりながら食い下がる。


ミントは肩をすくめ、出口へと歩き出した。

「卑怯と言いたいならご勝手に。Fランクのワタシは最適解を選び、

安全圏から一方的に討伐数を稼がせてもらうから」

言うべきことは言ったと、ミントはギルドを後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ